【アジア杯コラム】新戦力発掘のオーストラリア代表、多士済々の面々で奪還に挑む! エースは充実一途の町田FWデューク

2024年1月10日(水)8時0分 サッカーキング

[写真]=Getty Images

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 カタールワールドカップで決勝トーナメント進出を果たしたことによりグラハム・アーノルド監督の契約延長が濃厚になると、「これでアーニーが続投か…」とオーストラリア人記者たちからため息が漏れてきたのをよく覚えている。

 そして、予想通り2023年1月末に契約延長が発表され、アーノルド監督は2026年夏に予定されている北中米ワールドカップまでオーストラリア代表の指揮を執ることとなった。だが、今のオーストラリアに現指揮官以上の実績と実力を兼ね備えた指導者はいない。多少の不安こそあれど、アーノルド体制の継続はベストな選択だったと言っていいだろう。

 3年後のワールドカップに向けた準備はすでに始まっている。オーストラリア代表は日本代表と同様、欧米の強豪国と多くの国際親善試合をこなしてきた。カタールワールドカップを制したアルゼンチン代表に0-2、アウェイでのイングランド代表戦は0-1で敗れるなど結果こそ芳しくないが、強豪国を相手に貴重な経験を積んでいる。

 アーノルド監督は2023年以降の試合で11人をA代表デビューさせ、若手の新戦力発掘も進めている。カタールワールドカップに出場したメンバーは、今回のアジアカップ出場メンバーの中に13人しか残っていない。

 スタンダール・リエージュでMF川辺駿と同僚のMFエイデン・オニールや、ウェステルローの左サイドでFW松尾佑介を後ろから支えるDFジョーダン・ボスは、この1年でオーストラリア代表にとって重要な戦力へと成長を遂げた。

 他国に先駆けてアジアカップに臨む26人の代表メンバーを発表したアーノルド監督は「我々のチームの中心には、長年かけて強固なカルチャーを作り上げてきた、非常に結びつきの強いグループがある。そこに私は補強となりうる新たな戦力を数人迎え入れた」と述べた。

 現在のオーストラリア代表にはGKマシュー・ライアン、DFハリー・ソウター、MFジャクソン・アーヴァイン、FWクレイグ・グッドウィン、FWミッチェル・デュークと各ポジションに軸となる経験豊富な選手がいる。彼らを中心に据えつつ、次のワールドカップまでの3年間でさらなる成長が見込める有望選手たちを組み込んだのがアジアカップの26人ということだろう。

 攻撃時は4-3-3、守備時に4-4-2となる可変システムを採用した戦術も浸透している。ビルドアップ時にはサイドバックが内側に絞って組み立てに関わる、両ウイングがサイドの幅をいっぱいに使う、アンダーラップを積極的に活用するなど現代サッカーの基本とも言える戦術的なアクションも標準装備。そして、現地1月6日に行われたバーレーン代表とのテストマッチは2-0で完勝を収めた。

 初招集のDFゲシン・ジョーンズが通算639人目のA代表デビューを飾り、負傷を抱えていたDFナサニエル・アトキンソンやMFライリー・マッグリーも復帰を果たすなど多くのテストをしながらの完封勝利にアーノルド監督も自信を深めている様子だ。あとは頬骨骨折の手術をしたばかりの状態でチームに合流したGKライアンの復帰を待つのみである。

 オーストラリアサッカー連盟が公開しているバーレーン戦後のインタビューで指揮官は「アジアカップに臨む前のテストとして完璧な試合だったと思う。間違いなく、かなり多くのチームがバーレーン代表と同じような戦い方で立ち向かってくるだろう」と語った。6日の試合はまもなく始まる戦いに向けてイメージを膨らませる絶好の機会となった。

「我々がバーレーン代表のようなチームと対戦する時、相手は黙ってこちらが攻めてくるのを待っている。ここ1年で対戦したほとんどの国々は、彼らのように(引いて守って)戦ってこなかった。とはいえ、バーレーン代表は着実に力をつけているチーム。他の多くの中長諸国と同様、フィジカル的には我々が想定していたよりも強かった。ああいう相手がどんなものかは実際にやってみないとわからないし、簡単に練習できるものでもない。我々の攻撃は試合が進むごとによくなっていき、相手の守備を打ち砕くだけでなく、彼らの得意とするカウンター攻撃を受けないようにすることもうまくできていたと思う」

 アーノルド監督率いるオーストラリア代表は1月8日にドーハ入りし、インド代表、シリア代表、ウズベキスタン代表と対戦するアジアカップのグループステージに向けた最終準備を進めていく。

【KEY PLAYER】 FW15 ミッチェル・デューク

 2023年のJ2リーグ戦で10得点6アシストを挙げてFC町田ゼルビアのJ1昇格に大きく貢献したパワフルなストライカーは、オーストラリア代表でもチームの不沈を握る存在だ。今大会は右足首の状態が思わしくなく調子を落としていたジェイミー・マクラーレンが選外となっており、デュークにはFWの1番手として大きな期待がかかる。

 技術的には粗い部分もあるが、筋骨隆々の体格を生かした競り合いの強さや運動量の多さは目を見張る。ソウターからのロングボールを収める、グッドウィンが放つ鋭いクロスに合わせる、ポストプレーでアーヴァインら中盤の選手を活かす、そして守備では時に自陣ゴール前まで戻るほどしつこくボールを追い回す。チームリーダーの一人としても見られており、多彩な役割をこなせるストライカーだ。

 大会直前のテストマッチとなったバーレーン代表戦でもゴールを挙げるなど、オフ明けながらコンディションは上々。カタールワールドカップではチュニジア代表からゴールを奪い、2023年以降は9試合中8試合で先発起用されるなどアーノルド監督からの信頼も厚い。充実一途のJリーガーはオーストラリア代表を2大会ぶりのアジア制覇に導けるだろうか。

文=舩木渉

サッカーキング

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