オーバーテイク増加を促す新規則の効果に懐疑的なエンジニアたち「F1は前のマシンを追うこと自体がそもそも困難」

2019年2月7日(木)7時10分 AUTOSPORT web

 F1において、1台のマシンが別のマシンを簡単にオーバーテイクできていたのは、もう何十年も前の話だ。それどころか近年では、その困難さがむしろ増している。2019年に施行される新たなテクニカルレギュレーションパッケージは、そうした追い抜きの可能性を高める意図も持って考えられたものだ。


「今は、別のマシンを追うような走りが非常にしづらい」と語るのは、走行中のオーバーテイク技術においては最高のドライバーのひとりとされる、マックス・フェルスタッペンだ。


「相手から2秒ないし1.5秒以内で後ろについた途端に、問題が生じるようになる。古いタイヤで走っているときはなおさらだ。その差が1秒以内になると、マシンのフロントやリヤのコントロールを失いそうになるし、とにかく前のマシンを追いかけることが本当に難しいんだ」


「新しいフロントウイングがそれを大きく改善する助けになることを願っているよ。本当に効果があるのかどうか今は確信が持てないけれど、もうじき分かることだからね」


 2019年の新しいフロントウイングは、これまでのものと比べて幅が20ミリ大きい。また使える部品も5種類までと制限されており、羽根やウイングレットが多く使われた2018年型と比べて、構造自体かなり単純化されている。ウイングの外側に付けられるエンドプレートも、これまでと比べるとかなりシンプルな構造に変わるだろう。


 エンドプレートは、空気をフロントタイヤの内側ではなく外側に流すことで『アウトウォッシュ』を防ぐように設計されている。新しいレギュレーションパッケージには、複数のバージボード、簡素化されてウイングレットの無くなったフロントブレーキダクト、縦横に広がったリヤウイングなども含まれる。


 2018年シーズン、前を走るマシンの後ろにつくと、ダウンフォースが30〜50パーセントほど失われていた。今回の改定にはこの数値を減らす目論みもある。また、2020年と2021年にも追加の規定が導入される予定だ。


■ウイリアムズのエンジニアはオーバーテイク増に疑問符


 ルノーF1のテクニカルディレクターを務めるニック・チェスターは「当然、最終的には2021年に向けた改定なのだから、今年1年ですべてを変えるのは無理だ」と語る。


「少しずつ変わっていくだろう。正しい方向には向かうはずだから、後続車にとっての追いかけも少しは改善されるだろう。ただし、改定がすべて完了する2021年まで待たないと、全体として何が変わったのかを見極めることは難しいだろうね」


 少なくとも2019年シーズンの初期は、各マシンが似通った作りにはならないはずだ。


「規定にどういう意図が含まれているのか、実際に読んでみなければわからない。10チームあれば、10の異なるソリューションが考えられるだろうし、そのうちのいくつかは我々が考えたこともないものかもしれない」と、フェラーリでエンジニアを務めるジョック・クリアは語った。


 だがそれでも、根本的なオーバーテイク問題の解決にはならないだろう。


 2018年までウイリアムズF1でパフォーマンス・エンジニアリング責任者を務めていたロブ・スメドレーは、「本質的に空力計算で成り立っているF1マシンが、ツーリングカーのように別のマシンを追うことには無理がある」と述べ、さらに以下のように続けた。


「物理学的にあり得ない。マシンというものは、特に現世代のマシンのように大きなダウンフォースを生じる作りになっていると、他のマシンを追うこと自体が困難だという事実を受け入れるべきなのだ。改定で多少は改善されるだろう。正しい方向には向かっている。だが6カ月もすれば、全員そろって元に戻るための解決策を必要としているに違いない」


 それでも、ルールをまったく改定せずに事態をさらに悪化させてしまうよりは良いのだろう。


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