【内田雅也の追球】2月の新球と「白いうそ」

2025年2月8日(土)8時0分 スポーツニッポン

 「白いうそ」という表現がある。英語で「ホワイト・ライ」、スペイン語で「メンティラ・ブランカ」という。イスラム圏にもあるらしい。

 相手に良かれと思ってつく、悪気のないうそである。日本語でいう「うそも方便」に近い。

 阪神監督・藤川球児は現役時代、この「白いうそ」をついていた。今回の沖縄・宜野座キャンプが始まって間もなく、自身で明かした。

 セットアッパーやクローザーで期待されるハビー・ゲラが2日、ブルペンでフォークを2球だけ投げた。新球である。昨季59試合で投げた全818球の内訳はカットボール431球(52・7%)、直球346球(42・3%)、ツーシーム41球(5%)だった=NPB統計分析サイト『翼』=。

 ゲラのフォークについて報道陣に感想を問われた藤川は「(フォークが)あれば、相手チームには大きいでしょうね。相手に脅威になる球種を見つけてくれたらいい」と言った。

 ただし、続けてこんな風に話した。「僕も現役の時は、この時期にうそをついていましたから。『ナックルを投げます』とか。新聞に書いていただくと、まるで投げるかのようになりますから。そういう意味で、本当に投げるかどうか楽しみですよね」。

 確かに藤川は2012年2月、この宜野座で「新しい変化球を投げたい。ナックルも投げますよ」と話していた。これは「白いうそ」だった。新聞報道で惑わせる陽動作戦で、実際にはナックルなど投げなかった。

 プロはマスコミをうまく使う。田淵幸一は阪神時代、本塁打を放つと必ず打った球を「シュート」と言った。苦手な内角シュートを打ったと相手に思わせたかったのだ。

 昨年、ほとんど直球とカットボールだけのゲラの投球に、テレビ解説の藤川が「フォークをおぼえればいい」と話していた。投球の幅が広がり、三振奪取率も高まる。

 あの2日に2球投げた後、フォークを投げていない。藤川がけむに巻いたように、ゲラの新球は「白いうそ」なのか。

 いや、違う。他球団の偵察スコアラーの前では隠しているのだろうか。ゲラはキャッチボールでは連日、フォークを投げている。この日もホセ・ベタンセス相手に指の握りを見せたうえ、5球投げた。着々と習得を進めている。 =敬称略= (編集委員)

スポーツニッポン

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