トヨタ所属ドライバーを検討も採用せず。プジョー首脳が明かすLMHドライバー選定の理由

2021年2月10日(水)10時45分 AUTOSPORT web

 2022年のWEC世界耐久選手権ハイパーカークラスに参戦するドライバーを2月8日に発表したプジョー。そのファクトリー・ハイブリッドプログラムの責任者によれば、ドライバー編成にあたっては「経験と若さの調和」を重視したという。


 発表されたラインアップは、6名のフルタイム・レースドライバーと、1名のリザーブ&シミュレータードライバーから成る


『7ドライバー、ワン・チーム』と銘打たれたこのグループには、ケビン・マグヌッセン、ジャン・エリック・ベルニュ、ポール・ディ・レスタといった元F1ドライバーが含まれているが、彼らはすでにプロトタイプレースの経験を持っているか、今年の終わりまでにその経験を積むことになっている。


 ベルニュはまた、プジョーと同じ(旧PSAと旧FCAが統合した)ステランティス・グループに属するDSオートモビルズ・ブランドで2回のフォーミュラEチャンピオンに輝くなど、エレクトリック・パワートレーンにおける経験をチームにもたらす。


 スポーツカーにおけるルーキーであるマグヌッセンは、2021年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権DPiクラスにチップ・ガナッシから出場しており、ディ・レスタは昨年のル・マン24時間LMP2クラスを制している。


 元アウディのLMP1ドライバーでル・マン優勝経験を持つロイック・デュバル、レベリオンからLMP1に参戦し今年はグリッケンハウスLMHのドライバーとなるグスタボ・メネゼス、そしてミケル・イェンセンも、近年のプロトタイプカーでのレース経験を持つ。


 発表後の記者会見で、ステランティス・モータースポーツの責任者であるジャン・マルク・フィノーは、プジョーのチーム編成の背後にある理論的な根拠を説明した。


「我々は、経験と若さの良い調和を手にすることができたと思う」とフィノーは言う。


「我々は、エネルギー・マネジメントの経験、ハイブリッドの経験など、すべての経験を手にしている。また、自動車メーカーの経験と協力する方法も手にしている」


「早い段階での勝利ではなく、極めて高い競争力を持つために、うまくマシンを開発していけることを確信している」


「我々は最高のチームを選んだと信じている。彼らドライバーはすべて、チームメイトとして期待される資質を備えている。つまり彼らは速く、信頼でき、安定性があり、そしてまた家族でもある。これはチームを作る上での基礎だった。すべてのドライバーとともにこのプロジェクトを構築していく」


 テクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは、プジョーがWECやIMSA、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズなどのスポーツカーシリーズにおける「経験を調べ、経験とエナジーの適切な融合を見つけた」と付け加える。


 今回のプジョーのラインアップでは、トップレベルのフォーミュラ・ドライバーを耐久レースに適合させるのではなく、スポーツカーレースのバックグラウンドを持つドライバーを採用することに重点が置かれている。


 この哲学における例外はマグヌッセンとなるが、彼は2022年にプジョーからWECにデビューする前に、2021年はDPiでのIMSAフル参戦で経験を積むことになる。


「ケビンを除き、我々はスポーツカーレースにおいて非常に協力な経験を持っているドライバーを選んだ」とジャンソニーは語る。


「近年は、ハイレベルなレーシングドライバーは同時に複数のチャンピオンシップに出場していると思う。ケビンはF1での経験があり、それは明らかに非常に良い参考にもなるだろう」


「若手については、経験者と若手ドライバーを組み合わせることが重要だった」


「我々はすべてのベストミックスを実現するために、何人かのフレッシュなドライバーとそのエナジーを組み入れることが重要だと考えた。経験者とエナジーのミックス、ということだ」


■「たくさんのことを学ぶつもり」とケビン・マグヌッセン


 来年のWECデビューが確定したマグヌッセンは、シリーズおよびル・マンへの適合を促進させるため、周囲にいるスポーツカーのレギュラードライバーたちから学ぶことの重要性を強調した。


「チームには多くの経験者がいる」とマグヌッセン。


「ル・マンは初めてのことだし、僕は確かにたくさんのことを学ぶつもりでいる。初めての場所に行くときは、急激な学習曲線を描くことになる」


「でも、それを楽しみにしているよ。チームとチームメイトは、僕にとって有益なすべての専門知識を持っている。いまはまだ、プロジェクトは始まったばかりの段階だと思う」


「チームメイトたちについてもっとよく知ることを、楽しみにしている。彼らのうち何人かは、レースをしたこともある。会ったことがある人もいれば、会ったことがない人もいる。プログラムをスタートさせるときを、楽しみにしているよ」

2021年はIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のDPiクラスに、チップ・ガナッシのキャデラックDPi-V.Rでフル参戦するマグヌッセン


 フィノーはまた、現在トヨタLMHをドライブすることが確定している複数のドライバーの採用をプジョーが検討したものの、最終的にはLMP1ハイブリッドの経験が少ないラインアップに落ち着いたことを示唆した。


 2011年を最後にプジョーは耐久レースに参戦しておらず、彼らはラインアップをゼロから構築する必要があった。


 これは今季新たなLMHカーであるGR010ハイブリッドで新時代へとデビューするトヨタが、LMP1時代からの6人全員のドライバーを維持する選択をしたのとは対照的だ。


 トヨタのドライバーとの交渉について聞かれたフィノーは、「そのようなドライバーたちとはいくつかの機会があったが、彼らの期待と我々の期待は一致しなかった」と答えた。


「現状のラインアップが、我々にとってベストであると判断した」


 フィノーはまた、最終的なクルーを決定する際に、DSテチーターのフォーミュラEドライバーを受け入れる枠は1つしかなく、そこにベルニュが加わったため、もうひとりのFEドライバーであるアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは今回のラインアップの発表において言及されていない、と付け加えた。


 DSのふたりのFEドライバーはいずれも近年、 LMP2の経験を持つ。FEチャンピオンのダ・コスタは昨シーズンのWECでJOTAをドライブし、ベルニュはELMSでGドライブ・レーシングのラインアップに加わっている。


「フォーミュラE、そしてプジョー・スポールのWECプログラムは、同じプライオリティだ」とフィノー。


「一部のドライバーは、すでに異なるマニュファクチャラーから両方のカテゴリーに参戦している。したがって、それは実現可能だ」


「(WECのドライバーラインアップに)ひとりのFEドライバーを入れることは合理的だ。ふたり入れるのはマネージメントが難しいだろう」

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