電動TCRによる選手権『ピュアETCR』が始動。独自フォーマット採用で2020年にプレシーズン開幕

2020年2月20日(木)14時24分 AUTOSPORT web

 電動版TCRとも呼べるフルエレクトリックマシン『ETCR』で争われるチャンピオンシップ、『PURE ETCR(ピュアETCR)』の開催概要が発表された。プレシーズンとなる2020年の戦いは7月にオーストリア・ザルツブルクリンクを皮切りに全4戦が予定されている。


 このピュアETCRは、こレース用ツーリングカー規定として主流のTCR規定をベースとした完全電動マシンのETCRによって争われる。シリーズの運営はTCR規定を統括するWSCグループと、WTCR世界ツーリングカー・カップを運営するユーロスポーツ・イベントが行う。


 2020年はお披露目とプロモーションを兼ねたプレシーズンに位置付けられ、メーカーとドライバーのタイトルが掛かる本格的なチャンピオンシップは2021年から行われる。ユーロスポーツ・イベントによれば、その2021年にはクプラ・レーシング(セアト)、ヒュンダイ、アルファロメオなどすでにETCR車両を発表しているメーカーや、参戦を計画中とされるMGブランドのほかにも参入の動きがあるといい、現時点で6つのマニュファクチャラーがグリッドに並ぶ予定だという。

シリーズパートナーにグッドイヤーが就任したことも発表され、初年度からワンメイクタイヤを供給する


 タイヤについては開催初年度はグッドイヤーがワンメイクタイヤサプライヤーとして供給を行う。


 シリーズは「世界でもっともパワフルな電動ツーリングカーで争われ、コース上ではピュアなバトルを展開する」と標榜。レースフォーマットについても一般的な予選、決勝を行わない独特なルールが採用された。


 レースウィークは、まずエントリーしたドライバーたちがくじ引きで組み分けされたあと、“バトル1〜2”と呼ばれる8〜10km程度のスプリントレース、ファイナルのグリッド順を決めるタイムアタックの“バトル3”、12〜15kmの“ファイナル”で構成される。

レースウイークの大まかな流れをまとめた図。ラリークロスのように大会中はつねに走行があるようなスケジュールだ


 今回発表されたスポーティングレギュレーションでは6つの自動車ブランド参戦が想定されており、1ブランドあたり最大3名までドライバーを登録可能。つまり最大18名がエントリーが想定されている。


 エントリーしたドライバーたちはファンの前で抽選くじを引き、A〜Fまでの“バトルグループ”に3名ずつ組み分けされる。この最初のグループ分けで同じブランドのドライバーが同じグループに入ることはない。


 A〜Fのバトルグループに組分けが完了した後は、“バトル1”と呼ばれるレースが各グループごとに1度、計6回行われる。レース距離は8〜10km程度に抑えられるため、電池切れによる車両乗り換えや“電費”を考えた低速走行を行う必要はないという。


 バトル1が終了した後は、A〜Cまでのバトルグループで優勝したドライバーたちをグループ1、同2位をグループ2、同3位をグループ3といった形で、グループ1〜6までに3名ずつ再度振り分ける。


 そして、今度はこのグループ1〜6ごとにふたたび8〜10km程度レース、“バトル2”が行われる。このバトル2の結果で決勝にあたるファイナルに向けた最後の組み分けが行われるので、このセッションは実質的な予選と言えるだろう。


 ファイナルに向けての組み分けは、バトル2のウイナー6名が集まるグループA、同2位のグループB、同3位のグループCの3つ。レースウイーク全体の表彰台を争うのはグループAに駒を進めた6名のドライバーとなる。


 ファイナルについてはバトル1〜2よりもレース距離が伸び、12〜15km程度で争われる。ただ、ここでも車両乗り換えや電費走行の必要はないという。


 グリッド順については、バトル1〜2は1グループあたりの台数が3台と少ないこともあり、全車が横一列に並ぶ形が採られる。3台のなかでどのスタート位置を選択するかは、最初の抽選会で一番最初にくじを引いたドライバーに優先権がある。


 1グループあたりの台数が6台となるファイナルについては、通常のレースと同じ形式を採用。そのグリッド順はファイナルへの組み分け後に行われる1周のタイムアタック“バトル3”で決められる。


 見事ファイナルのグループAを制したドライバーが大会の“王者”もしくは“女王”となり、週末最多のチャンピオンシップポイントが与えられる。バトル1〜2のリザルトでもポイントが付与されるという。


 レース中、各ドライバーは“プッシュ・トゥ・パス”機能を1回だけ使用可能できるほか、それよりわずかに出力を抑えた“ファイトバック”モードも用意される。これらの機能を使ってオーバテイクや逆転劇を演出するという。


 そして各バトルでのレース後、マシンは観戦するファンの前で車両を充電できる中央の“エネルギー・ステーション”に戻り、バッテリーを充電。次のレースに向けて順を整える。


 このユニークなフォーマットを採用したピュアETCRの初年度はプロモーション・イベントで幕を開け、最大500kWを誇るETCRマシンは7月9〜12日に開催のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)に集結。世界的に有名なタイムトライアルでパフォーマンスを披露する。


 2020年プレシーズンは全4戦が予定され、7月のオーストリア・ザルツブルクリンク(WTCR併催)を皮切りに、8月の第2戦デンマークでは首都コペンハーゲン市街地を使用した“ヒストリック・グランプリ・ストリートレース”の一部として開催。10月はふたたびWTCR併催となるの韓国インジェ戦を経て、11月の中国・広東国際サーキットまで続いていく。


 そして2021年に入ると1月のデイトナ24時間で2度目のプロモーション・イベントが開催され、本格なチャンピオンシップ初年度となる2021年には全8戦を予定。2022年にはさらに2戦が追加される見込みとなっている。


 WTCRと同様、シリーズのプロモーターを務めるユーロスポーツ・イベントのフランソワ・リベイロ代表は、概要発表の席上で次のように挨拶した。


「我々は“ピュアなモーターレーシング”を標榜した、新たなシリーズの立ち上げを宣言する。このピュアETCRはハイパフォーマンス車両に最高のツーリングカードライバーたち、そしてトラック上の迫力や興奮のすべての要素を兼ね備えている」


 ピュアETCRのシリーズ代表に就任したシャビエル・ガヴォリは「私たちの目標は、電動モビリティの未来を非常にスペクタクルな方法で促進すること。現時点で、最初のシーズンには6つのマニュファクチャラーが集うことを期待している」と語っている。


「私たちは非常に先鋭的な方法でレースフォーマットをまとめた。通常のサーキットレースで採用されているすべてのことについて、知っていることは忘れてもらったほうが良いだろうね」

WSC代表のマルチェロ・ロッティ(中央)や、フロンソワ・リベイロ、シャビエル・ガヴォリなどシリーズの主要ボードメンバーが列席した


会場にはロメオ・フェラーリのディレクター、ミケーラ・セルッティ(右)やエステバン・グエリエリらも姿を見せた

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