新体制の王者RXR、赤旗ファイナルを制して2年目も快勝発進。水素シリーズも始動へ/エクストリームE

2022年2月21日(月)19時23分 AUTOSPORT web

 FIA国際自動車連盟のインターナショナル・シリーズに昇格し、2022年の“シーズン2”を迎えた電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』が、2月19〜20日にサウジアラビアで開幕。サンド・サーフェースを舞台とする『Desert X Prix in NEOM』が開催された。


 今回からシングルカーの2ラップ計測に変更された予選ヒートでは、ルイス・ハミルトン創設のX44から参戦するセバスチャン・ローブ/クリスティーナ・グティエレス組が初年度から続く最速の座を維持し、シリーズでの“予選セッション100%制覇”記録を継続。


 そして新規参戦のマクラーレンXEが敗者復活の“クレイジーレース”ヒートを勝ち上がり、デビュー戦でファイナル進出を果たすも、赤旗掲出の引き金となる波乱を巻き起こす。そんな展開に乗じて逆転を決めたのが、ニコ・ ロズベルグ率いる初代王者ロズベルグ・Xレーシング(RXR)のヨハン・クリストファーソン/ミカエラ-アーリン・コチュリンスキー組で、新生スウェーデン・ペアのRXRが初年度に続く開幕戦連覇を決めた。


 また2022年開幕戦実施に先立ち、シリーズを率いるアレハンドロ・アガグCEOは2024年に向け、水素を動力源とするオフロード・シリーズ、その名も『Extreme H(エクストリームH)』の新プロジェクトを発表している。


 サウジアラビア政府が同国北西部の砂漠地帯で計画する新たな産業都市、スマートシティ構想『NEOM』プロジェクトが推進される地で、ワンメイクSUVによる電動オフロード選手権2年目のシーズンが開幕。そのイベントを前に、直近にもイギリスの『オートスポーツ・アワード2022』で“パイオニアリング&イノベーション・アワード”を受賞したシリーズCEOのアガグは、現状使用されているワンメイク車両『オデッセイ21』のパワートレインとシャシーを流用し、既存のバッテリーを代替し水素燃料電池を主要なエネルギー源としたエクストリームHの計画をアナウンスした。


「モビリティの革新と環境ソリューションのテストベッドとして設計されたエクストリームEは、今後に向け水素シリーズとして発展を遂げることが必然なんだ。それこそが気候変動問題と戦うモータースポーツで、新技術の可能性を紹介する我々の使命であり、自然な進化の帰結だ」と、新プロジェクトの狙いを語ったアガグCEO。


「現在の参戦チームとともに、水素を動力源とする車両をレース週末に統合するための最良の方法を、今後数カ月以内にも決定するつもりだ。水素への完全な移行か、またはジョイントレースによる別カテゴリーとして併催するか、すべての選択肢がテーブルの上にある」


 このエクストリームH車両は2022年を通じて開発作業が続けられ、2023年初頭にはラウンチを予定する。シェイクダウンから信頼性確認のテストを経て、2024年のシリーズ開始を目指している。

2024年に向け水素を動力源とするオフロード・シリーズ、その名も『エクストリームH』の新プロジェクトが発表された
「ここNEOMでExtreme Hのコンセプトを立ち上げるのはふさわしいこと」とシリーズCEOのアレハンドロ・アガグ
コンチネンタルは”Season 2″に向け、性能向上と持続可能性の高い原料の割合を増やし再設計した、改良型CrossContact Extreme Eタイヤを供給する
開幕戦限定ながらリザーブ兼ゲスト・アドバイザリー・ドライバーに、ノルウェー出身のラリークロス選手ヘッダ・ホサス(右)とロマン・デュマが起用された


■バトン率いるJBXEにアクシデント。ケビン・ハンセンが病院へ搬送


 そんななか始まった2022年電動オフロード戦のオープニング・ラウンドは、今季より土曜午前のクオリファイ1と、午後のクオリファイ2で各2ヒートを争い、それぞれ男女が1周ずつを走行する計2ラップのフォーマットに改められた。


 そのオープニングから速さを見せたのはやはりX44で、午前午後を通じて最速を記録。今季よりメインパートナーを迎えたジェネシス・アンドレッティ・ユナイテッド・エクストリームEのティミー・ハンセン/ケイティ・マニングス組や、電動ハマーで参戦のチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)らを抑え、セミファイナル1のポールポジションを確保した。


 明けた日曜午前のセミファイナル1からは、そのX44とRXRの宿敵同士が順当に勝ち上がり、一方のセミファイナル2ではWorldRX世界ラリークロス選手権タイトル経験者のティミーがまさかのロールオフを喫し、ここでアンドレッティ・ユナイテッドの敗退が決定。代わってCGRのカイル・ルデュック/サラ・プライス組と“帝王”カルロス・サインツ/ライア・サンズ組のアクシオナ・サインツXEチームがファイナル進出を決める結果に。


 そして敗者復活に回った4チームのうち、こちらも元F1王者ジェンソン・バトン率いるJBXEから参戦する“もうひとりのハンセン兄弟”こと弟のケビンにもアクシデントが襲い、このクレイジーレースでの競技中に負傷し病院へと搬送。大事を取り、ひと晩の入院で経過観察を強いられる状況となった。


 これにより、マクラーレンXEのタナー・ファウスト/エマ・ギルモア組が最後のスポットを獲得したファイナルでは、スライドコントロールの名手として世界的に名を馳せるファウストが、初戦の緊張からかまさかのコントロールミスを犯し、RXRのコチュリンスキーを追走する3番手走行中に激しく横転。1周目終了時点でレッドフラッグによりレース中断の起因となる。


 残り1周スプリントで再開された勝負は、4台が男女交代スイッチゾーン進入時の各タイムギャップでリスタートを切ると、前を行くアクシオナのサンズと、X44のグティエレスに対し、RXRのクリストファーソンが猛スパートを開始。ふたりのスペイン出身女性ドライバーにみるみる迫ったWorldRXの4冠チャンピオンは、まずグティエレスのインサイドに飛び込み華麗に仕留めると、最後から2番目のコーナーでワイドラインを選択し、サンズをオーバーテイク。見事な逆転劇で初年度に続くオープニングイベント制覇を成し遂げた。

「新予選フォーマットが不安要素だったけど、楽しめているし最速は気分が良い」と、X44のクリスティーナ・グティエレス
セミファイナル1では3位フィニッシュながら、XITE Energy Racingのペナルティでファイナル進出のRXR
セミファイナル2ではWorldRX世界ラリークロス選手権タイトル経験者のティミー・ハンセンがまさかのロールオフ
セミファイナル2を制した電動『HAMMER(ハマー)』で参戦のChip Ganassi Racing(チップ・ガナッシ・レーシング/CGR)は、ファイナル4位に


■「マクラーレンの加入により競争レベルが上がった」とクリストファーソン


「本当にこのカテゴリーは毎週、気持ちが良いね(笑)。当然レースのたびに勝利を目指しているけど、今季はとくにマクラーレンの加入により競争レベルが上がり、さらに厳しく、より努力を強いられる環境になった。それでも、最大のポイントでシーズンをスタートできることを本当にうれしく思うよ」と、喜びを語ったシリーズ通算4勝目を挙げたクリストファーソン。


「コースは少しトリッキーで、轍も深く刻まれていた。僕もミカエラ(-アーリン・コチュリンスキー)も砂漠での経験はあまりないが、ともに一生懸命に働き、チームはコースと他陣営の分析で素晴らしい仕事をした。順応するために努力し、良い週末を過ごせたね」


 そのスタートドライバーを担当したコチュリンスキーも、移籍初戦で得た初勝利に「全体を通じて、完全に自信があった」と振り返った。


「これは私の最初の勝利だし、もちろんチームに入ったばかりでそれを実現できたのは本当に素晴らしいし、良い気分ね。実際にかなりの数のアクシデントもあり、私たちはそれを避けてクルマをセーフティに保てた。良い週末だったわ」と、コンチネンタルの開発ドライバーも務めるコチュリンスキー。


「ヨハン(・クリストファーソン)が素晴らしいドライバーであることは周知の事実だし、今週末の戦術は、私が最初のターンでラインを外れなければ、ギャップがそれ以上大きくならないようにすることだけだった。彼はラップあたり10秒のマージンを持っているし、現実に決勝でキャッチアップする様を見れて興奮したわ。私はウェイポイントまで息を止めて頑張ったけど、最初から自信があったの」


 これでエクストリームEのシーズン2はRXRが30点を獲得して最初のリーダーに立ち、18点のアクシオナ・サインツXEチーム、15点のX44が続く展開に。ふたたびシリーズのパドックを兼ねる元貨客船セントヘレナ号での航海を経て、5月7〜8日にはイタリア・サルディニア島での第2戦が予定されている。

敗者復活”The Crazy Race(クレイジーレース)”を勝ち上がり、デビュー戦でファイナル進出を果たしたMcLaren XE(マクラーレンXE)だが、最後は思わぬ展開に
「今日は良い仕事をしたけど、(ヨハン・)クリストファーソンは速すぎた。でもカルロス(・サインツ)のような優秀な教師がいることは非常にうれしい」と2位表彰台のライア・サンズ
ファイナルのスタートで2番手を守り、最終的に3位のセバスチャン・ローブ「シーズンを考えれば、悪いスタートではなかったね」
新ペアのモリー・テイラーや兄のティミー、母のスーザンらも負傷したケビン・ハンセンを見舞い、無事を喜んだ

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