トヨタGR010ハイブリッド、ホイールサイズと空力を変更し開幕へ。「より信頼性の高いクルマに」と可夢偉新代表

2022年3月7日(月)19時13分 AUTOSPORT web

 トヨタGAZOO Racing(TGR)は来る3月18日(金)、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催されるセブリング1000マイルレースにて、WEC世界耐久選手権の2022年シーズンをスタートさせる。


 これに先立ちTGRは、2022年仕様の『GR010ハイブリッド』の変更点を明らかにしたほか、テストの様子やTGR-E副会長に就任した中嶋一貴氏の職務風景などの新たな画像を公開した。


 2021年シーズンに、新規定ル・マン・ハイパーカー(LMH)準拠した新型マシン『GR010ハイブリッド』を新設されたハイパーカークラスに投入したTGRは、ル・マン24時間レースを含む全6戦で勝利を挙げ、ドライバー、チームの両選手権タイトルを獲得。2022年もタイトル防衛を目指している。


 2022年仕様のGR010ハイブリッドは、昨年の仕様からタイヤとホイールのサイズが変更された。前輪は12.5×18インチホイールに29/71-18サイズのタイヤを装着。後輪は14×18インチホイールに34/71-18サイズのタイヤという組み合わせが採用される。


 タイヤ及びホイールを変更したことで、レギュレーションで定められた空力的な性能を維持するために、ボディワークにも若干の変更が必要となった。最も分かりやすい変更点は、大型化された車両後部のエンドプレートとエンジンカバーフィンだ。


 それ以外のボディワークついては大きな変更点はないが、3.5リッターエンジンはWECが2022年シーズンより新たに導入する100%再生可能燃料に対応すべく、調整されている。


 この燃料はワイン醸造時の絞りかすや農産物などから生成され、CO2排出量を65%以上削減するなど、モータースポーツにおけるサステナビリティ向上という継続的な取り組みに貢献するものだ。


 TGRはまた、チーム体制も変更して2022年シーズンに臨む。開幕戦セブリングは、小林可夢偉がチーム代表とドライバーというふたつの役割を兼務して臨む最初のレースとなる。可夢偉は昨年ル・マンを制し、世界タイトルを獲得したマイク・コンウェイとホセ・マリア・ロペスとともに、7号車GR010ハイブリッドをドライブする。


 昨年まで8号車のドライバーを務めていた中嶋一貴はレースドライバーを勇退し、WECチームの本拠地でもあるTGRヨーロッパの副会長という新たな職に、1月から就いている。

ドイツ・ケルンにて執務にあたる中嶋一貴TGR-E副会長


 この一貴に代わってWECデビューを飾る平川亮は、継続参戦となるセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレーとともに8号車のステアリングを握る。2016年、2017年とLMP2クラスからル・マン24時間に参戦した経験を持つ平川は、さまざまなテストやドライビングシミュレーターにより、最高峰クラスでのデビューシーズンに備えてきた。


 2022年シーズンは、3月12日(土)、13日(日)の2日間にわたってセブリングで行われる公式テスト“プロローグ”で幕を開ける。GR010ハイブリッドにとっては、このテストがセブリングでの初走行となる。


 セブリングでの公式テスト、および開幕戦を控えたTGRドライバー6人、および首脳陣のコメントは、以下のとおり。


■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)


「セブリングのような耐久レースの聖地とも言えるコースで、2022年シーズンのスタートを迎えることを、チームの全員が楽しみにしています」


「昨年我々はル・マンで勝利し世界チャンピオンを獲得しました。今年の目標もそれを再現することです。昨シーズン、我々はGR010ハイブリッドの改善点をいくつか発見し、それを解消すべく懸命に努力を重ねてきたので、今季はより信頼性の高いクルマになったと思っています」


「トヨタ、パートナー企業様、及びチームメンバーの全員によるハードワークとサポートのおかげで、2022年のWECシーズンを戦う準備は整いました。今年のハイパーカークラスは間違いなくエキサイティングなものになるでしょう。新たなライバルとなるプジョー、そしてグリッケンハウスとアルピーヌからの挑戦を心から歓迎します。これから始まるシーズンで、ファンの皆様の記憶に残るようなバトルをお見せできることを楽しみにしています。皆様、応援をよろしくお願いします」


■パスカル・バセロン(テクニカル・ディレクター)


「チーム全体がレースの現場に戻るのをとても楽しみにしており、シーズン前のテストプログラムも非常に順調だったので、良い状態だと感じている」


「ハイパーカークラスの開発は厳しいホモロゲーションルールで縛られているため、2022年仕様のGR010ハイブリッドにおける変更点は比較的少ない。今季、ハイパーカーのマニュファクチャラーは、前後31インチか、前29インチ&後34インチかのどちらかのタイヤサイズを選択しなくてはならないため、我々は29/34へと変更することを選んだ」


「この変更により影響を受ける、冷却や空力的パフォーマンスを維持するために、ホモロゲーションで許される範囲でボディワークの変更を行った。この決断により、我々が昨年直面した後輪のマネジメントに関する課題に対処できることを期待している」


「加えて、新たな再生可能燃料を使用することになったため、燃料性状の変化に合わせ、エンジンセッティングの最適化を行った。この新しい燃料への変更は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要なステップであり、我々はこのような革新的な技術導入を大いに支持する」


「これらすべての変更点については冬季のテストで検証を終えており、レースウイークを目前に控えた、セブリングでの今週末のプロローグテストで最終的な準備に入る。シーズンが待ちきれない」


■「新たな挑戦への準備は整った」と平川亮


フランス・ポールリカールにてテストを行う2022年仕様のGR010ハイブリッド

■マイク・コンウェイ(7号車)


「セブリングは素晴らしいサーキットで、皆楽しみにしている。多くのファンが応援してくれるのは最高の気分だし、IMSAの関係者と会うのも楽しい。スポーツカーレースのお祭りのようで、本当に良い雰囲気だ」


「GR010ハイブリッドにとっては初挑戦でかつ、非常にクルマに厳しいコースなので、シーズン開幕戦の舞台としては決して容易ではない。前もってプロローグテストで走りこんで、翌週のレースウイークへ向けた準備ができるので、それを活かしたい」


■ホセ・マリア・ロペス(7号車)


「ここ2年ほどセブリングでレースを走っていないので、行くのが楽しみだ。いつ行っても特別なイベントであり、昔ながらのコンクリート舗装で荒れた路面の特別なサーキットだ」


「GR010ハイブリッドにとっては初めてのサーキットということもあり、それも楽しみのひとつだ。また、何年戦ってきても、シーズンの開幕戦はエキサイティングな瞬間だ。期待はしているが、初めて走るコースで我々がどれだけやれるか、そしてライバルもどれだけ進化しているかは分からない」


■セバスチャン・ブエミ(8号車)


「新たなシーズンのスタートはいつもエキサイティングだし、セブリングでの開幕は本当に格別だ。最後にレースをした2019年以来のセブリングなので、本当に楽しみだ」


「ファンの皆様が素晴らしく、スポーツカーレースに対する彼らの熱意が独特の雰囲気を生み出している。しかしセブリングはまた非常に特殊なサーキットでもあり、路面は非常に荒れていてクルマに厳しいだけでなく、高温多湿にも苦しめられる。それだけに簡単なレースにはならないだろうが、勝利を争えるよう準備を進める」


■ブレンドン・ハートレー(8号車)


「2022年のWECシーズンが始まるのを本当に楽しみにしている。セブリングは耐久レースの歴史において重要な存在であり、多くの挑戦をもたらす独特なコースだ。ドライバーとしてここでレースをすること、そしてアメリカのファンと会うのは本当に楽しいことだ」


「我々8号車のクルーにとっては亮との初レースになるが、彼の参加は大歓迎だ。彼はテストで素晴らしい仕事をしてくれているし、セブと3人で協力し最高のシーズンスタートが切れると確信している」


■平川亮(8号車)


「ハイパーカーでの最初のレースであり、セブリングに行くのも初めてなのでとても興奮しています。セブリングは熱狂的なファンが多い、素晴らしいコースだと聞いています。それらを経験できるのと、TGRの一員としてWECレースに参戦することが楽しみです」


「昨年末以来、私はシミュレーターやテストで多くの準備を重ねて来ました。まだまだ学ぶことは多いですが、チームのサポートや、特に他のドライバーの皆さんのおかげで、新たな挑戦への準備は整ったと感じています」

TGR-Eのシミュレーター内で話し込む平川亮と中嶋一貴副会長

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