「強い自分に会いに行きたい」 木戸愛が語る結婚、父のこと、ジャンボ尾崎との出会い【特別インタビュー】

2024年3月14日(木)8時0分 ALBA Net

木戸愛がツアー2勝目に向かう(撮影:上山敬太)

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木戸愛がシード復帰、そして12年ぶりのツアー2勝目を目標に戦うシーズンが始まった。今週はスポンサー契約を結ぶホステス大会の「Vポイント×ENEOS ゴルフトーナメント」。鹿児島での1戦を前に、家族のことや、“師匠”のこと、そして今季への並々ならぬ意気込みを語った。


■結婚、そして愛する人との別れ

170センチを超える身長にスタイリッシュに決めたファッション。女子ゴルフ界で人気を集めてきた木戸は、昨年12月で34歳の誕生日を迎えた。若手が台頭するツアーにおいてはベテランの域に入っている。自身は2019年以降、シード入りを逃しながらも懸命に戦ってきた。そんな時間に転機が訪れたのが、昨年のことだった。

「昨年は悔しいシーズンになってしまって、そのなかでQTはいい形で今年につながるように終わることができました」。今季出場権を懸けた戦いを6位で通過し、前半戦の出場権は確保した。「QTが終わった次の日から今年(24年)に向けて頑張りたいという気持ちがすごく強くて、練習にも向かっていたところ、そうですね…」と遠くを見つめる。12月、最愛の父・修氏が亡くなった。そのときのことが思い出された。

もう一度晴れ舞台に立つ。そんな目標を持って苦しい時期を乗り越えようとプレーをしてきた木戸にとって、心の支えだったのが修氏の存在。プロレスラーとして一時代を築いた修氏は、プロゴルファーとなった娘の活躍を観に幾度となく会場に足を運んでいた。そんな父にもう会えない。「頑張ろうと思っていたところで父のことがあって…。誰よりも私のことを信じてくれて、誰よりも応援してくれていたので、いまは父のために頑張ろうという気持ちがものすごく強いです」。目に涙を浮かべながら、声を振り絞る。

悲しみに暮れる日が続いた。それでも、一緒に戦う気持ちは変わらない。「聞こえてくる父の声とともに、母からも『父の魂は生きているから』と言われて、私の中で“寂しい”“悲しい”という思いがいっぱいだったなかで、また頑張ろうと思えました」。キャディを務めツアーに帯同する妹の侑来(ゆきな)さんも支えの一人。「侑来がサポートをしてくれて、それを父も応援してくれていたので、二人で頑張りたい気持ちです」。まさに家族全員でのリスタートを切っている。

新しい家族も心のよりどころだ。7年間の付き合いを経て昨年8月にプロゴルファーの神農洋平さんと結婚した。「お付き合いを始めたときに将来(結婚)も見える方でした」と二人の生活を自然と意識するようになっていた。愛を育み、ついに8月8日に夫婦となった。「父も含めてみんなで食事に行けた回数も多くて、夫も私も二人ともゴルファーで、前向きに一生懸命に頑張ることが大事と父は言い続けてくれていました。それを守って、夫とも力を合わせて支え合いながら生きたい」。結婚、愛する人との別れ。家族愛が深まるなかで、ゴルフ環境にも変化がやってくる。



ジャンボ尾崎の教え

昨年はシーズン途中で下部のステップ・アップ・ツアーにも参戦。“魅力的”なプレーを目にすることになる。「同組で回った選手たちのパワフルなゴルフに魅了されたというか、その選手たちの師匠がジャンボさんと聞いて、ジャンボさんに指導を仰げば、私ももっとできることがあるんじゃないかと思って、ジャンボさんのところに行かせていただきました」。必然の流れ、意を決して、ジャンボ尾崎の門を叩いた。

「強い自分に会いに行きたいという、そういう自分がいた」

34歳の新弟子が誕生した。「面識はなかったです。(ジャンボの息子の)智春さんとは面識はあったので、最初は一緒に行っていただきました」。なかば押しかけ状態。「強くなりたい」の一心だったという。「自分は若くないのですが、でもまだまだ頑張りたい、諦められない、当たり前じゃないこの時間を悔いなく、と考えたときに、ジャンボさんのところにと考えました。“覚悟”だったのだと思います」。

強いゴルフ、スケールの大きいゴルフ。そんな理想が頭の中で描かれ、それがジャンボにつながった。「多いときで週5回。週3回は行っていました」と今年のオフはジャンボ邸に通いつめた。「毎朝『よろしくお願いします!』と挨拶をさせていただいて」。新たな師匠の顔をみるだけでも楽しい。そんな新弟子に、ジャンボは多くを語らない。「とにかく振れと言われるんです」。

「最初は『打ってみろ』ではないですけど、やはり振れていないというところから、とにかく振るということを、大きなテーマとして言われました」。これはジャンボが多くの弟子たちにかける言葉。「私なんかがお話しできるような方ではないんです。ただ『振れ』ということを言われたら、がむしゃらに振る自分がいて、一言一言が重くて、それに一生懸命になりたい自分がいるので、練習はすごく良いものができているなということを感じながらしています」。

言葉は少なくとも、重みが違う。「声をかけていただけることがうれしい。ジャンボさんから言われた一言で黙々と練習しているのが今年のオフでした。いままでいただいた言葉を胸に、常にやっています」。今季初戦の「ダイキンオーキッドレディス」は予選落ちに終わった。早めに沖縄から帰宅すると、「なんでいるんだ? あれ? 沖縄だろ?」。ジャンボ流の檄(ゲキ)でさらに鼓舞された。



■掲げる目標はただひとつ“優勝”

悲嘆に暮れた年末から立ち上がった。新しい師匠との出会いも木戸が前に進む原動力。その“前”には何が待つのか。「出られる試合はぜんぶ出ます。やはり一番の目標は優勝です。12年ぶりですよね。干支が一周回ってしまいました」。

22歳で初優勝をつかんでから早12年。「大変なことというのは分かっているので、そこがつかめるように一つ一つやれることをクリアしていって、積み重ねて行けたらという思いです」。いつもそばで応援してくれた天国の父に朗報を届けるため。常に横にいる妹のために、勇気づけられる言葉をかけてくれる母へ。そして夫へ最高の報告をするために。

始まったばかりのシーズン。ここまで2週続けて予選落ちと悔しさは募る。「ジャンボさんの言葉を思って強い気持ちでプレーしたいです。ワクワクしている自分もいる。前向きに頑張るのみです」。家族へ、そしてジャンボへ、優勝報告を実現させるため、強い木戸が立ち上がる。

木戸愛(きど・めぐみ)
1989年12月26日生まれ、神奈川県出身。10歳でゴルフを始め、高校は名門の東北高に進学。卒業後、2008年のプロテストに一発合格を果たす。12年の「サマンサタバサレディース」でツアー初優勝を遂げて初シード入り。18年までシード権を守った。今季はファイナルQT6位の成績で前半戦出場権を獲得。父は昨年12月に亡くなった元プロレスラーの木戸修氏。


<ゴルフ情報ALBA Net>

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