プレミアリーグ、ロンドン拠点の7クラブで最強なのはどこ?
2025年4月10日(木)18時0分 FOOTBALL TRIBE

今2024/25シーズンのプレミアリーグでは、第31節終了時点で首位に立つリバプールが2位のアーセナルに勝ち点差9を付け、優勝争いの面ではほぼ大勢が決した感がある。
一方で、欧州カップ戦出場権争いは、熾烈を極めている。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏上位4クラブ、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場圏上位5クラブ、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)出場圏上位6クラブとなる中、現在3位の古豪のノッティンガム・フォレストの頑張りが目立ち、9位につける日本代表MF三笘薫を擁するブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンまでが勝ち点10の中にひしめき合っている。同時キックオフで行われる最終節(5月26日)の試合終了のホイッスルを聞くまでこの混戦は続きそうだ。
そんな今シーズンのプレミアリーグに所属する20クラブで、ロンドンを本拠地としているクラブは7クラブ。全体の3分の1以上を占め、当然ながら毎週のように「ロンドンダービー」が行われている。ここではロンドンを本拠地とするクラブのみにフォーカスし、そのライバル関係や対戦成績を踏まえ、ロンドン最強クラブを示していきたい。

ロンドンを本拠地とするクラブ
何しろイングランドでは、5部まで入れると15ものクラブがロンドンを本拠地とし、それぞれが特定のクラブに対し因縁がある。ロンドンを本拠地とするクラブの一覧は以下の通り。
- アーセナル:プレミアリーグ(1部)
- トッテナム・ホットスパー:プレミアリーグ(1部)
- チェルシー:プレミアリーグ(1部)
- フラム:プレミアリーグ(1部)
- ブレントフォード:プレミアリーグ(1部)
- クリスタル・パレス:プレミアリーグ(1部)
- ウェストハム・ユナイテッド:プレミアリーグ(1部)
- ミルウォール:EFLチャンピオンシップ(2部)
- クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR):EFLチャンピオンシップ(2部)
- ワトフォード:EFLチャンピオンシップ(2部)
- チャールトン・アスレティック:EFLリーグ(3部)
- レイトン・オリエント:EFLリーグ(3部)
- MKドンズ:EFLリーグ(4部)
- ウィールドストーンFC:ナショナルリーグ(5部)
- バーネットFC:ナショナルリーグ(5部)
現在プレミアリーグに属している7クラブでは、北ロンドンにアーセナル、トッテナム・ホットスパー、西ロンドンにチェルシー、フラム、ブレントフォード、東ロンドンにウェストハム・ユナイテッド、南ロンドンにクリスタル・パレスがある。
これらのクラブ全てにライバル関係があるわけではないのだが、世界最大のフットボールタウンでもあるロンドンのクラブ同士の一戦はサポーターも行き来しやすく盛り上がる。一方、クラブ間の得手不得手があり、それがリーグの順位にも影響してくるのだ。
例えば、2023シーズンに元横浜F・マリノス監督(2018-2021)のアンジェ・ポステコグルー氏を指揮官として招聘したトッテナムは、以降、チェルシーを相手にすると引き分けすらない5戦全敗。今シーズンは現時点14位と下位に沈んでいるトッテナムだが、5位でヨーロッパリーグ(EL)出場権を得た昨2023/24シーズンにおいても勝ち点を奪うことすら叶わなかった現実を見ると、「相性が悪い」という言葉しか浮かばない。

主要なロンドンダービー
ロンドンダービーで主要なものを挙げるとすれば、ノース・ロンドン・ダービーと呼ばれるアーセナルとトッテナムの対戦や、ビッグロンドン・ダービーと呼ばれるチェルシーとアーセナルの対戦が有名だ。
ノース・ロンドン・ダービーは、共に北ロンドンを本拠地とする両チームのライバル関係は100年以上の因縁の歴史があり、ロンドンに留まらずイングランド中でも最も熱いダービーマッチの1つ。それぞれのサポーターはお互いを憎んでおり、アーセナルファンの家に産まれた子どもは、父からの「トッテナムといえば?」の問いに対し、「クソだ!」と答える“英才教育”が施されるという。
ビッグロンドン・ダービーも有名だが、アーセナルとチェルシーのライバル関係は意外とそうでもない。21世紀以降、優勝争いを繰り広げてきたビッグクラブ同士ではあるが、フロントレベルでは友好関係にあるといってもいいほどだ。
実際、両クラブ間での選手の移籍も多く、元フランス代表FWオリビエ・ジルー、元チェコ代表GKペトル・チェフ、元イングランド代表DFアシュリー・コール、元ブラジル代表DFダビド・ルイスなどが両クラブでプレーしている。現在アーセナルで活躍するイタリア代表MFジョルジーニョも、2022/23シーズンの冬の移籍期間にチェルシーから移籍してきた。

ロンドン勢、2024/25シーズン対戦成績順位
ではここで、ロンドン勢のみの今シーズンの対戦成績に基づいた順位表を見てみよう(プレミアリーグ第31節終了時点)。
- 1位:アーセナル(勝ち点28)/プレミアリーグ2位
- 2位:チェルシー(勝ち点23)/プレミアリーグ4位
- 3位:フラム(勝ち点20)/プレミアリーグ8位
- 4位:ブレントフォード(勝ち点17)/プレミアリーグ12位
- 5位:トッテナム・ホットスパー(勝ち点14)/プレミアリーグ14位
- 6位:ウェストハム・ユナイテッド(勝ち点12)/プレミアリーグ16位
- 7位:クリスタル・パレス(勝ち点8)/プレミアリーグ11位
上位2クラブのアーセナルとチェルシーは実力通りの数字を残し、ほぼプレミアリーグの順位表通りの序列となっているが、3位のフラムはロンドン勢との戦いで健闘していることがわかる。
フラムはリーグ首位のリバプールに対しても1勝1分けの好成績を残している。まだチェルシー戦とブレントフォード戦を残しているとあって、そこで勝ち点3を拾えれば、欧州カップ戦出場もグッと近付いてくるだろう。
今シーズン苦戦しているトッテナムとウェストハムは、ロンドンの他クラブから勝ち点を拾えていないことが、順位にそのまま表れている。ロンドン勢との対戦では、トッテナムが2試合(ウェストハム戦、クリスタル・パレス戦)、ウェストハムが1試合(トッテナム戦)を残しているが、ここを落とせば「降格」もチラついてくる。
ロンドン勢との戦いを苦手としている日本代表MF鎌田大地を擁するパレスは“安全圏”にいるものの、アーセナル戦とトッテナム戦を残しており、上位争いと残留争いを引っ搔き回す存在となり得る状況だ。
特にトッテナムは2019年開場のトッテナム・ホットスパー・スタジアム(62,850人収容)を、ウェストハムはロンドン五輪メイン会場として建設され2011年に開場したロンドン・スタジアム(62,500人収容)といった巨大スタジアムをホームにしているとあって、2部降格など許されない。

ロンドン勢の監督人事にも注目
現状、ロンドン最強クラブは、3シーズン連続リーグ2位が濃厚となっているアーセナルということになるが、3シーズンぶりに欧州カップ戦出場権を得られそうなチェルシーが、来シーズンその立場を逆転させる可能性もあるだろう。そこで鍵を握りそうなのが監督人事だ。
既にアーセナルで2019/20シーズンからの長期政権を敷いているミケル・アルテタ監督に対し、来シーズンのチェルシーを占う上で重要なファクターとなるのが、45歳の青年エンツォ・マレスカ監督をフロントが信頼し続けられるかどうか。同監督は今シーズンまで、2部(EFLチャンピオンシップ)に降格していたレスター・シティの監督として1年でのプレミアリーグ復帰とリーグ優勝に導いた経験しかなかった。
さらに、更迭の噂も囁かれているポステコグルー監督をトッテナムが続投させるのかにも注目だ。
欧州のサッカーリーグを見渡しても、1つの都市のクラブだけで全体の3分の1を占める例など見当たらず、その都市だけで順位表が作れることなどロンドンならではだ。さらに言えば、それだけクラブがありながらも、優勝クラブとなると2016/17シーズンのチェルシー以来出ていない(同シーズンの2位はトッテナム)。プレミアリーグの奥深さを示しており、面白いところだ。