開発凍結なのになぜコースレコード? タイムアップの背景と予選後のパドックの声【第1戦GT500予選の要点】

2025年4月12日(土)21時57分 AUTOSPORT web


 2025年のスーパーGT開幕戦の予選は前評判通り、トヨタ/TOYOTA GAZOO Racing (TGR)のGRスープラ勢が速さをみせ、1号車au TOM’S GR Supra、14号車ENEOS X PRIME GR Supraのフロントロウとなった。予選後にパドックで聞いた声、そしてGT500マシンのエアロ開発凍結下でのコースレコード更新の背景を探った。



︎トラック特性でトラフィックの影響受けたドライバーたち


 今年の予選は昨年までのQ1、Q2の予選タイム合算方式から、一昨年まで採用されていたノックダウン方式に戻る形となったが、かつてのQ1突破8台から10台に拡大されていた。この2台の差がどこまで影響したのかは分からないが、GT500の予選Q2ではトラフィックに合い、順位を下げてしまったドライバーもいた。


 その1台が、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTだった。予選Q1で2番手タイムをマークしていた16号車の大津弘樹から、Q2を担当した佐藤蓮だったが、アタックの際に前のクルマに詰まってしまった。


「アタックができませんでした。アタックの時に目の前のマシンが『そんなに!?』と思うほどバックオフ(アクセルを戻してスピードダウン)して現れて、そこでアタックを諦めて、次の周に合わせればよかったのですけど……。クルマの調子がよかっただけに、チームにも申し訳なかったです」と佐藤。


 Q2だけでなく、Q1でもトラフィックが起こっていたことが判明し、1周が短い岡山での予選の難しさが現れる形となった。


 ちなみに、ノックアウト方式に戻ったことについて、概ね現場の関係者は好意的に受け止めているが、『予選Q1通過は10台よりも以前の8台がいい。Q1の緊張感が薄まってしまうし、Q2で10台は多い』という声も聞こえた。一方、『合算方式の方がドライバー、チームの実力がわかっていい』という声もあり、さまざまな意見が聞かれた。


︎持ち込みタイヤ4セットでのノックアウト方式予選の難しさ


 また、一昨年のノックアウト方式の際と現在ではタイヤの持ち込みセット数が違い当時のドライタイヤ5セットから現在はドライ4セットと1セット持ち込みセット数が減っている。この1セットの違いもチーム、ドライバーには大きく影響している。


「タイヤがQ1と分かれて、硬い方のタイヤでQ2に臨んだので、温まりが分からなかったので最初にコースインしたのですが、思ったよりもタイヤの温まりが早くて、(他のウォームアップのマシンに)詰まってしまって余計なラップを2周くらい走ってしまいました」と予選後に話したのは、2年ぶりにGT500に戻った3号車Niterra MOTUL Zの佐々木大樹。


 佐々木は今回、その1セット減の影響をまともに受けることになってしまった。


「履いたことのないタイヤでいきなりQ2で履いてアタックすることになるので、僕もチームも何周目にアタックできるのかも分からなかった。特にテストを含めてここ最近は寒いコンディションが続いていたので、温まりにくいというイメージがあった。トップには全然及ばないですけど、(アタックのタイミングが良ければ)もう少しタイムは出せたかなと思いますけど、現在のタイヤの4セットでは、こうなってしまうパターンもあり得るのかなと。今シーズンに向けて、持ち込みタイヤ含めて、うまくいかなかった部分かなと思います」


 4セットのニュータイヤは、フリー走行、予選Q1、Q2、決勝の後半セットに投入することを考えると、2種類のタイヤを持ち込んだ場合、どこかでいわゆる『外れタイヤ』を投入しなければならない。3号車Niterraにとっては、そのセッションが今回のQ2になってしまい、佐々木は苦労することになってしまった。


 また、今回の予選のトピックのひとつに、昨年厳しい戦いが続いたヨコハマタイヤ勢の躍進が挙げられる。24号車リアライズコーポレーションADVAN Zが3番手、19号車WedsSport ADVAN GR Supraが5番手に入り、2台がシングルグリッドを獲得するラウンドは昨年は一度もなかっただけに今年のヨコハマ勢の躍進を予感させた。


 19号車WedsSportの坂東正敬監督も「横浜ゴムとシーズンオフに取り組んで来たことの答え合わせとして、非常に満足のいく結果になりました。正直、岡山、富士の公式テストは両方とも寒いコンディションでしたけど、今回の岡山は午前から温かくなってきて、路面ができてきたところで少し路温が下がった。このコンディションがちょうどよかったのだと思っています」と、笑顔を見せた。


︎GRスープラに敗れるかたちとなったニッサン、ホンダ陣営のリアクション


 メーカー陣営としては、GRスープラ陣営に破れてしまった2メーカーの反応が分かれた。ニッサン/日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)勢としては3番手に24号車リアライズは入り、陣営内4台のすべてがQ2に進出。23号車MOTUL AUTECH Zが7番手、3号車Niterraが10番手とニスモ陣営としては物足りない結果となったものの、木賀新一GT500クラス総監督は「4台Q2進出でちょっとホッとしています」と笑顔を見せた。


「下の方でしたけど、午前中からの方向修正がうまくいきましたけど、まだまだ、タイヤとセットアップを勉強している感じです。(24号車リアライズでQ2を担当した)次生選手は頑張りましたね。トムスさん(1号車/2番手)は本当に安定していますね。ちょっと頭ひとつ抜けている。去年からのタイムの向上シロが大きいですよね。少し爪の垢を煎じて飲みたいくらいですし、何か少しでもコツを掴めたらいいなと思っています」と、ライバルを称えた。


 同じく、ホンダ/HRC陣営としては予選最上位が100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTの4番手となった。予選Q2を担当した牧野任祐は「いやもう、ほぼ完璧なアタックでした。出し切ったアタックだったので、逆にきちんと(GRスープラ勢に)負けているんだなと思いました。分かってはいましたけど改めてスープラ勢は強いなと。それでも(決勝での逆転優勝には)ギリギリ射程圏内には入れているのかなと思います」と、この予選でのパフォーマンス差を認めた。


 ホンダ陣営を率いる佐伯昌浩スーパーGTプロジェクトリーダーにも、1号車、14号車のGRスープラ勢とのさを聞いた。


「使ったタイヤのコンパウンドがまったく同じではない部分もあるので、もう少し詰められたかもしれないですけど、(やはりちょっと差が大きいなと感じています。牧野選手からも『これ以上のタイムは出せない』と聞いているので、今の段階ではこのくらい(コンマ2秒)の差があるのかなと思っています」(佐伯氏)


︎エアロ開発凍結下でコースレコードが出るGT500マシンの進化の背景


 その佐伯氏に、エアロが開発凍結されている今年の状況でのタイムアップ(昨年の新品タイヤでの予選Q1と比較して約1秒アップ)、福住仁嶺が1分16秒441をマークして、2019年のMOTUL AUTECH GT-R、ロニー・クインタレッリが記録した1分16秒602を破るコースレコードが更新された背景を聞いた。


「コーナリングを含めて、走っているときの車両姿勢のコントロールがメインになると思いますね。今年は何か空力パーツをつけられるわけではないですし、走っている時の全体的なダウンフォースが発揮しやすい姿勢のコントロールができたクルマがやはり、上位に来ているのだろうなと思います。特にあの2台(1号車、14号車)はキレイに走っていますよね」と佐伯氏。


 もちろん、開発可能なエンジン細部、タイヤの進化やセットアップの熟成などがあるが、ブレーキング時の前後姿勢やピッチング制御、コーナリング時のロールや車高の変化への対応など、理想的なエアロパフォーマンスを発揮する姿勢コントロール、ドライバーのマシンコントロールがタイムアップの大きな要因となっているようだ。このタイムアップは第2戦以降も続くのか、今季のGT500の見どころとなりそうだ。



予選2番手ながら、安定した速さを見せた昨年王者1号車au TOM’S GR Supra、Q2担当の坪井翔をモリゾウが労う

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