豪州SC:フォード、2019年にマスタング投入。ワークス活動継続を電撃表明

2018年4月19日(木)10時8分 AUTOSPORT web

 オーストラリアの人気ツーリングカー・シリーズ、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーに参戦するフォードが、2019年に向け新たに『フォード・マスタング』を投入すると発表。事実上、シリーズへの公式な関与を継続することをアナウンスしたことになり、ホールデン、フォードの対決構図が維持される見通しとなった。


 フォード・オーストラリアのCEOを務めるグレイム・ウィックマンは、発表会の席上で「フォード・パフォーマンスのグローバルチームとフォード・オーストラリアは、2019年のVASCシーズンに向けマスタングのホモロゲーション認定作業を行うにあたり、DJRチーム・ペンスキーやティックフォード・レーシングといった名門とともに働けることを光栄に思う」とコメントした。


 オーストラリア大陸でも同ブランドを代表するスポーツカーとして人気を博すマスタングだが、その投入に際しては、V8スーパーカー時代から26シーズンにわたり“フォードの顔”としてトラック上で戦ってきたフォード・ファルコンを置き換えるという歴史的な決断が下されたことになる。


 すでに市販車部門では2016年に現行の『フォード・ファルコンFG-X』は生産を中止しており、その代替モデルを探っていたフォードだが、近年のVASCパドックでは「フォードはワークス活動から撤退し、シリーズから全面的に手を引くのでは」といった憶測が根強くささやかれていた。


 その撤退説から一転、新たにGen2規定により門戸が開かれた2ドアモデル参戦可能の規定を活用しマスタング投入を決めたフォードだが、同時にホールデンが開発を続けてきたV6直噴ターボのような新型エンジンには着手せず(規定上は4気筒ターボも可)、既存のV8エンジンを継続使用することも決めている。  


 北米でもNASCARでフォードのファクトリープログラムを担っているチーム・ペンスキーも、この決定に対し「諸手を上げて賛同する」と歓迎の意を示した。


「我々は過去数年間にわたり、フォード・モーター・カンパニーと緊密な距離感で仕事を続けてきた。(マスタング導入の)決断はVASCのシリーズに大きな勢いを与えるだろう」と語るのは、DJRチーム・ペンスキーの共同オーナーでもあるロジャー・ペンスキー。


「この新プログラムの技術的側面に対するフォード・パフォーマンスのサポートと献身は、DJRチーム・ペンスキーやその他のフォード系チームにとって、レベルを引き上げる決断となるだろう。『マスタング』の名称は、モータースポーツの世界でも象徴的な歴史を持ち、(同時に導入が発表されたNASCARと合わせて)世界的に複数のシリーズでレースができるのは本当に素晴らしいことだ」

2019年からの『マスタング』投入により、正式にシリーズへの関与継続を発表したフォード
すでに2018年からGen2規定マシンとして、ホールデンが『コモドアZB』を投入している
フォード系チームとして活動するDJRチーム・ペンスキー、ティックフォード・レーシングの面々も発表会に参席した
GM由来のV6直噴ターボの開発を推進してきたホールデンは、先週「開発凍結と投入の延期」を発表したばかり


 この決断に至るまで、あらゆる紆余曲折とディテールでの検討が繰り返されたと語った前出のウィックマンCEOは、マスタング導入以前には『モンデオ』の採用も議題に挙がったことを明かしつつ、とくにV8エンジン継続の決断は2019年の競争力維持に大きく貢献するだろう、との見通しを語った。


「パワートレインについては長い議論があり、もちろん我々のV6“エコブースト”のバナーで戦うことも検討した。市販モデルの『マスタング』には直噴4気筒ターボの搭載例もあるからね」


「しかし、その先の未来……例えば電動化なども視野に入れた場合、まだリソースをエンジン開発に割くのではなく、新型車種投入の分野に注力するのが望ましいと判断したんだ」


 この言葉に対し、VASCでフォードの開発部門を任されるティックフォード・レーシング代表のティム・エドワーズと、DJRのマネジングディレクター、ライアン・ストーリーも賛同のコメントを述べている。


「ドライバーの視点から言えば、何もかもが一気に変わってしまうよりボディの変更だけに集中できる方が、よりイージーで望ましいだろう」とエドワーズ。


 同様にストーリーも「2019年はマスタングの空力パッケージの開発に焦点を当てて、そこに集中することが可能となる。我々にはフォードV8という性能と信頼性に優れた非常に優秀なパッケージがすでに手元にあるわけだからね」と続ける。


 これで2019年のグリッドにはGen2規定の2車種、5ドアハッチバックの『ホールデン・コモドアZB』と、2ドアクーペの『フォード・マスタング』が並ぶことが決まったが、残るもうひとつのマニュファクチャラー、ニッサンへの期待値も高まっている。


 現行のL33型『ニッサン・アルティマ』は、すでにオーストラリアでも2013年には販売が終了となっており、噂ではフォードと同様に2ドアの規定を活用して同社のフラッグシップスポーツカーであり、V6直噴ターボ搭載の『GT-R』を投入するのではとささやかれているが、先日のニューヨーク・ショーで公開された世界初の量産可変圧縮比エンジンとされるVCターボ搭載の新型『アルティマ』の可能性も残されているだけに、その決断と動向にも注目が集まっている。

実力派の若手、スコット・マクローリンを擁してタイトル争いを展開するDJRチーム・ペンスキー
『マスタング』投入決定までの紆余曲折を明かしたフォード・オーストラリアのCEOを務めるグレイム・ウィックマン(左)
昨季までプロドライブ・オーストラリアとして活動し、現在も『ファルコンFG-X』の開発を担い、シリーズに4台を投入するティックフォード・レーシング
VASC同様に、NASCARにも投入されることが決まった『マスタング』。ニッサン陣営の決断にも注目が集まる


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