リアル&塚越の2ストップ戦略は成功か、失敗か。多様性増したスーパーフォーミュラ開幕戦を検証

2018年4月25日(水)13時46分 AUTOSPORT web

 今季は通年でドライ用タイヤの2スペック制を実施することになったスーパーフォーミュラ。その開幕戦、上位では塚越広大を擁するREAL RACINGが2ストップ作戦を採り、結果的に見れば成功とは言い難いながらもレース展開におけるアクセントのひとつとなり、同時に陣営の今後への大きな可能性も感じさせている。


 51周、300kmと長いレース距離の開幕戦鈴鹿だったが、予選上位陣の基本戦略はミディアムでスタート→レース後半の20周前後をソフトで走るという1ストップ作戦に収斂した。ポール・トゥ・ウインの山本尚貴(TEAM MUGEN)をはじめ、予選3、6、4番手の位置から決勝3-4-5位となった野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)、伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING)らがそうで、シフト系トラブルでリタイアに終わった予選2番手の福住仁嶺(TEAM MUGEN)も戦略は山本らと同種のものだった。


 予選14番手だった関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がスタートからソフトで24周という、今回のソフト1セットあたりの最長周回数を走っての“逆1ストップ作戦”で決勝2位まで追い上げたが、開幕戦鈴鹿の決勝における「王道」は、前半ミディアム約30周→後半ソフト約20周という戦略だったことになる。


 そんななか、予選5番手の塚越広大(REAL RACING)がミディアム→ソフト→ソフトの2ストップ作戦で“魅せた”。他の予選トップ6と同じミディアムでのスタートながら、2ストップならではの前半(および中盤)の燃料搭載量の軽さを活かし、3周目には2番手まで上昇。さらにトップ山本の背後をしばらく攻め続けた。


 しかし、トップの山本のディフェンスを突破できなかったことで、塚越陣営の作戦は有効性を失っていく。19周で最初のピットインをする前になるべく早く先頭へと出て、山本以降に対するリードを広げることができた場合に初めて表彰台あるいは優勝という可能性も出てくる作戦だったわけで、これは勝負した結果として仕方のない部分だろう。


 それでも最終的に塚越は6位でゴールしており、予選ポジション対比では順位をひとつ下げただけなので、俯瞰的に見れば好内容の開幕戦だったと評してもいいように思う。


「狙ったのはもっと上の結果でしたから、完全な失敗です」。レース後、塚越担当の田坂泰啓エンジニアはこう答えた。外野から見れば、完全な失敗とは厳しすぎる自評のように思えるが、田坂エンジニアも塚越も金石勝智監督も皆、勝利を目指しているのだから、そういう実感になるのもわかるところではある。

塚越広大(REAL RACING)


 上位の戦略が同じ方向にいきそうななか、5番手スタートから逆転する活路を探るためのギャンブルだった。結果、失敗だったことは確かに事実だ。


 ソフトでスタートする2ストップという選択はなかったのだろうか。ソフトのダッシュ力と軽量の併せ技なら、最初のスティントでトップまでいけた可能性が高まったのでは? 田坂エンジニアは「もちろん、考えました」。ただ、各陣営が充分なテストをできているわけではないスタート前の状況下において、「ウチの場合はソフトへの信頼を確立しきれていなかったんです。ミディアムでスタートして、次にソフトを履いて、場合によっては10周くらいで2回目のタイヤ交換をして最後はミディアムに戻す、という2ストップを基本に考えていたくらいですから」。


 ところがレースになってみると、「意外とソフトがもったんです」。そこで塚越と田坂エンジニアはソフトで走った中間スティントを15周まで伸ばし、最終スティント(17周)でもソフトを履くというオプション方向に作戦をスイッチしていったのであった。


「ウチだけでないでしょうけど、いろんなことがレース前の予想とは違ったレースだったと思います。テストが(セット数的に)充分とはいえませんでしたし、温度条件も違いましたから当然なんですが、レースになったら意外とソフトがもってタイムも良くて、逆にミディアムでの走りがもうひとつになったりして……。これがセットに依るものなのかどうか、ちょっとモヤモヤした気持ちですね」。田坂エンジニアは開幕戦の戦いをそう総括する。


 今後の250km戦では一般的に考えた場合、速い方のタイヤ、つまりソフトでどれだけ長く走れるかが決勝のキーファクターになると予測される。その意味では今回ソフトで好感触を得たと思われる塚越、そして関口といった面々とその陣営には明るい材料といえるのはないだろうか。


 田坂エンジニアといえば、2000年代の一時期、当時はNAKAJIMA RACINGで小暮卓史とともに多回数ピット作戦を駆使し、レースを沸かせ、幾度となく結果も勝ち取ってきた知将である。


 当時のローラ・シャシーと違い、その後のスウィフト〜ダラーラでは燃料タンクの大きさや形状、高さ的な位置や燃費等々の諸条件の絡みから、燃料軽量のメリットを出しにくい状況であることを田坂エンジニアはしばしば訴えていたものだが、全戦タイヤ2スペック制の今季なら、250km戦であっても作戦バリエーションは増えてきそうだ。仮に2ストップが現実的でない場合でも、1ストップのアレンジの方向性は確実に増すだろう。


 REAL RACINGと塚越はスーパーGTも含めて今、流れがいい。今回も、ギャンブル策は成就せずともそこで大崩れしなかった点は(外野の視点からは)高く評価できる。スーパーフォーミュラ初優勝(塚越個人の2勝目)に向けて、機は熟しつつあるように思えるところだ。


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