苦労人・小西たかのりがツアー初V 一時ゴルフを離れアルバイト生活 悲願Vも涙なし「報われたかなと」
2025年4月28日(月)4時36分 スポーツニッポン
◇男子ゴルフツアー前澤杯最終日(2025年4月27日 千葉県 MZGC(6652ヤード、パー70))
小西たかのり(33=フリー)が17番で15メートルの超ロングパットを決めるなど67の通算17アンダーで回り、ツアー初Vで新規大会の初代王者に輝いた。松山英樹、石川遼と同学年で今季から登録名を本名の貴紀からひらがなに変更。プロ14年目の苦労人は今季の獲得賞金を約4063万円とし、ランキング1位に躍り出た。今平周吾(32=ロピア)が1打差の2位で続いた。
苦節14年、悲願の初Vを飾った小西だが、その目から喜びの涙は出てこなかった。「(優勝まで)長かったなと。でも、これで報われたかなという感じです。自分でも泣くのかなと思いましたが、優勝する気持ちでやっていたので、全然でした」。しみじみと振り返った苦労人には安堵(あんど)の表情が浮かんだ。
終盤にミラクルを起こした。1打差で迎えた17番。ピン奥から5メートル以上スライスする15メートルのバーディーパットをねじ込み、土壇場で首位の今平をとらえた。「寄せるつもりだったのが、あっ入っちゃったという感じでした」。その勢いにあおられた今平が、最終18番で1メートルのパットを外し、最後の最後に優勝賞金4000万円と前澤杯初代王者の称号をつかみ取った。
最近では珍しい経歴の持ち主。9歳でゴルフを始め、小学生時代には全国大会で同学年の石川と優勝を争った。だが家庭の事情で葛飾区の中川中に進んでからゴルフから離れた。中学卒業後は高校に行かず、引っ越しのアルバイトなどで生活費を稼ぐ毎日。転機になったのは、石川が07年のマンシングウェアKSBで史上最年少の15歳8カ月3日でツアーVを飾ったことだった。
その後もツアーで活躍する同学年の勇姿を見て「もう一度やってみよう」と気持ちを奮い立たせ、17歳で千葉県内のゴルフ場の研修生になり20歳でプロテストに合格した。「賞金は海外の試合に出たいのでその資金にしたいです」。松山や石川らと同世代の遅咲きが、2人の背中を追いかけるスタート台に立った。 (大渕 英輔)
◇小西 たかのり(こにし・たかのり)1992年(平4)1月16日生まれ、東京都葛飾区出身の33歳。9歳でゴルフを始め、中学進学後にゴルフから離れるが石川遼に刺激を受け、12年にプロ転向。19年にツアー外競技の近畿オープンで優勝。22年に初シードを獲得。昨季は11試合連続で予選落ちしたが、後半戦で盛り返しシード権を死守。1メートル75、81キロ。
【前澤氏来年以降も「続けていきたい」】
大会企画者の前澤友作氏が試合後に会見を開き「いろいろバタバタもしましたけど小西選手が優勝されて本当に終わって良かった」と胸をなでおろした。2週間のプロアマ戦に加えラウンドガールの起用やスーパーカー展示など賛否両論あったというが「皆さん喜んでくださった。これは来年につながるという感触を覚えています」と収穫を口にした。来年以降の開催にも「できる限りやれるだけ続けていきたい」と話した。