CL決勝のレフェリーを務める超エリートたち。選出傾向と今大会候補は!?
2023年5月2日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE
欧州ナンバーワンにして、実質世界一のクラブを決める大会、UEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)は、選手だけではなくレフェリーにとっても至高の到達点だろう。CL決勝のレフェリーを務められるのは、UEFAレフェリーのエリートカテゴリーに属する超一流のみとなる。
今2022/23シーズンCL準決勝は、レアル・マドリードVSマンチェスター・シティ(第1戦5月9日、第2戦5月17日)、ミランVSインテル(第1戦5月10日、第2戦5月16日)となった。それぞれの勝者が日本時間6月11日に予定されている決勝に進む。スタジアムは、観客数7万5千人を収容するアタテュルク・オリンピヤト・スタドゥ(トルコ、イスタンブール)。視聴者数は5,000万人を超えると見込まれる。
そんなCL決勝という夢の舞台に辿り着けるレフェリーを務めるハードルは3つ。1つ目は、欧州自国リーグで優秀な成績を残すこと。2つ目は、国際審判員として推薦されFIFAの認証を受けること。3つ目は、国際試合で優秀な成績を残しUEFAのエリートカテゴリー(セカンド206人、ファースト52人、エリート30人)に昇格することだ。正確なジャッジ、マネジメント能力、毅然とした立ち振る舞いの他に、高いパーソナリティー、強いメンタリティ、強靭なタフネスがエリートの絶対条件。大きなミスは許されない。
ここでは、直近5大会のCL決勝のレフェリーを務めた5人のエリートたちをご紹介。また、その傾向から、2022/23シーズンCL決勝戦を担う4人の最新候補たちを導きたい。
ミロラド・マジッチ(セルビア)
ミロラド・マジッチ審判員は、2006年からセルビアの1部リーグであるスーペルリーガで主審を務めた。2009年に国際審判員としてFIFA登録され、2013年にはUEFAエリートへ昇格。スーペルリーガの他にUEFAスーパーカップ、CL、EL(ヨーロッパリーグ)など300試合のキャリアを積み、9年連続でセルビアの最高審判として選ばれている。2017/18シーズンのCLでは、グループステージ4戦を経て決勝戦のレフェリーを務めた。
CL2017/18レフェリー実績
CL2017/18 | 日程 | 対戦カード |
グループステージ | 2017年9月12日 | ローマ vs アトレティコ・マドリード |
グループステージ | 2017年10月17日 | モナコ vs ベシクタシュJK |
グループステージ | 2017年10月31日 | バーゼル vs CSKAモスクワ |
グループステージ | 2017年11月22日 | ユベントス vs バルセロナ |
決勝戦 | 2018年3月26日 | レアル・マドリード vs リバプール |
ダミル・スコミナ(スロベニア)
ダミル・スコミナ審判員は、2003年からFIFA登録され、その後順調にキャリアを積みUEFAエリートに昇格。セルビア・プルヴァ・リーガ(セルビア2部)の他、UEFAスーパーカップやワールドカップ予選など含め500試合以上の実績があったが、2021年に膝の怪我により現役を引退している。2018/19シーズンのCLでは、グループステージ2戦、ラウンド16を2戦後に決勝戦のレフェリーを務めた。
CL2018/19レフェリー実績
ステージ | 日程 | 対戦カード |
グループステージ | 2018年10月2日 | トッテナム vs マンチェスターC |
グループステージ | 2018年12月11日 | リバプール vs ナポリ |
ラウンド16 | 2019年2月13日 | アヤックス vs レアル・マドリード |
ラウンド16 | 2019年3月6日 | パリ・サンジェルマン vs マンチェスターU |
決勝戦 | 2019年6月1日 | トッテナム vs マンチェスターC |
ダニエレ・オルサート(イタリア)
ダニエレ・オルサート審判員は、セリエA以外にも直近のFIFAワールドカップカタール大会(カタールW杯)を含め、EL、CLなどこれまでに500試合以上のキャリアを積んでいる。またCL決勝を務めた2020年には、最高の審判としてIFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)から表彰されている。同CLでは、グループステージ4戦、ラウンド16を1戦後に決勝戦のレフェリーを務めた。
CL2019/20レフェリー実績
ステージ | 日程 | 対戦カード |
グループステージ | 2019年10月2日 | バレンシア vs アヤックス |
グループステージ | 2019年10月22日 | ガラタサライ vs レアル・マドリード |
グループステージ | 2019年11月27日 | ゼニト vs リヨン |
グループステージ | 2019年12月11日 | オリンピアコス vs レッドスター |
ラウンド16 | 2020年2月26日 | レアル・マドリード vs マンチェスターC |
決勝戦 | 2020年8月23日 | パリ・サンジェルマン vs バイエルン・ミュンヘン |
アントニオ・マテウ・ラオス(スペイン)
アントニオ・マテウ・ラオス審判員は、スペインリーグ4部から順調にキャリアを重ね、1部リーグまで昇格。2011年にFIFA登録後はUEFAエリート昇格し、エル・クラシコなどビックマッチを多く担当。グルセタ賞(スペインリーグで最優秀審判に与えられる賞)を2度受賞している。プリメーラ・ディビシオン(スペイン1部)の他にもCL、EL、カタールW杯など500試合以上の実績があり、メディア露出も多く、選手と多くコミュニケーションを取る異質なレフェリーとして有名だ。2020/21シーズンのCLでは、グループステージ4戦、ラウンド8を1戦後に決勝戦のレフェリーを務めた。
CL2020/21レフェリー実績
ステージ | 日程 | 対戦カード |
グループステージ | 2020年10月20日 | パリ・サンジェルマン vs マンチェスターC |
グループステージ | 2020年11月3日 | ポルト vs マルセイユ |
グループステージ | 2020年12月2日 | ドルトムント vs ラツィオ |
グループステージ | 2020年12月8日 | ライプツィヒ vs マンチェスターU |
ラウンド8(準々決勝) | 2021年4月7日 | バイエルン・ミュンヘン vs パリ・サンジェルマン |
決勝戦 | 2021年5月29日 | マンチェスターC vs チェルシー |
クレマン・トゥルパン(フランス)
クレマン・トゥルパン審判員は、リーグ・アン(フランス1部)の他にカタールW杯、CL、ELで500試合以上の実績があり、2016年5月にはフランスサッカー連盟から最高のフランス審判にも選出されている。2020/21シーズンのCLでは、グループステージ2戦、ラウンド16を1戦、ラウンド8を1戦後に決勝戦のレフェリーを務めた。また、今2022/23シーズンCLでも、グループステージ、ラウンド16、ラウンド8でレフェリーを担当している。
CL2021/22レフェリー実績
ステージ | 日程 | 対戦カード |
グループステージ | 2021年9月14日 | ビジャレアル vs アタランタ |
グループステージ | 2021年10月20日 | バルセロナ vs ディナモ・キエフ |
グループステージ | 2021年11月3日 | ミラン vs ポルト |
グループステージ | 2021年12月7日 | ポルト vs アトレティコ・マドリード |
ラウンド16 | 2022年3月8日 | トッテナム vs ミラン |
ラウンド8(準々決勝) | 2022年4月19日 | バイエルン・ミュンヘン vs マンチェスターC |
決勝戦 | 2022年5月28日 | リバプール vs レアル・マドリード |
CL決勝レフェリー選出トレンドは
以上、直近5大会でCL決勝レフェリーを務めた5人の傾向を考察すると、選出条件には以下の傾向が見られ、選出トレンドとなっていることがわかる。
- UEFAエリートカテゴリーからの選出である
- 同じレフェリーは連続で選出されない
- 同じ国籍のレフェリーは連続で選出されない
- 準決勝を担当したレフェリーは選出されない
- 予選リーグ・ラウンド16・ラウンド8を経たレフェリーが決勝戦を担当している
CL2022/23決勝レフェリー候補4人
上記を前提に、また、年々レフェリーに求められるレベルが上がっていることを考慮すると、今2022/23シーズンのCL決勝は、前年同様にラウンド16だけでなくラウンド8(準々決勝)の経験も積んだレフェリーが選考されると思われる。今CLで、グループステージからラウンド16、ラウンド8と担当し、高い評価を受けているのは以下の4人だ。
マイケル・オリヴァー審判員(イングランド)
今CLで、グループステージ4試合、ラウンド16で1試合、ラウンド8(準々決勝)で1試合を務めている。他にもEL、プレミアリーグ含め38試合の実績。プレミアリーグの史上最年少レフェリー登録のキャリアを持つ逸材。
ヘスス・ヒル・マンサーノ審判員(スペイン)
今CLで、グループステージで3試合、ラウンド16で1試合、ラウンド8(準々決勝)で1試合、ELやラ・リーガなど含め31試合の実績。ラ・リーガ屈指のレフェリーであり、実績・実力ともに申し分なし。
イシュトヴァーン・コヴァーチ審判員(ルーマニア)
今CLで、グループステージで3試合、ラウンド16で1試合、ラウンド8(準々決勝)で1試合、EL、スーペルなど含め31試合の実績。2010年にFIFAに国際審判員として登録された際には史上最年少の記録を持つ。
シモン・マルチニアク審判員(ポーランド)
今CLで、グループステージで4試合、ラウンド16で1試合、ラウンド8(準々決勝)1試合、EL、エクストラクラサ(ポーランド1部)などで32試合の実績。ポーランドで最も評価の高いレフェリーの1人とされている。
だれもがW杯を経験し、国内リーグでは準決勝・決勝などを経験している超一流のレフェリー4人。レフェリーもクラブチーム同様にトーナメント形式に選考され決勝の舞台に辿り着く。だれが2022/23シーズンのCL決勝で笛を吹くのか。UEFAエリートたちの熾烈な争いも楽しみにしたい。