実を結んだ浦和のリスクヘッジ。ACL決勝第2戦の勝因は【現地取材】

2023年5月7日(日)18時0分 FOOTBALL TRIBE

2022ACL優勝 浦和レッズ 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022の決勝第2戦が5月6日に行われ、浦和レッズが本拠地の埼玉スタジアム2002でアル・ヒラル(サウジアラビア)と対戦。1-0で勝利した。これにより2戦合計スコアが2-1となり、浦和が3度目のアジア王者に輝いている。


2試合ともアル・ヒラルに攻め込まれる時間帯が長かったものの、したたかな戦いぶりで勝利を手繰り寄せた浦和。ここでは激闘となった第2戦を振り返るとともに、浦和の勝因を考察。また、マチェイ・スコルジャ監督とDF酒井宏樹の試合後会見のコメントを紹介する。




浦和レッズvsアル・ヒラル、先発メンバー

浦和vsアル・ヒラル:試合展開


[4-1-2-3]の布陣でこの試合に臨んだアル・ヒラルが、キックオフ直後からボールを支配。浦和は[4-4-2]の守備隊形を敷き、FW興梠慎三とMF小泉佳穂の2トップを起点に時折ハイプレスを仕掛けたものの、隊形変化を駆使するアル・ヒラルのパスワークを止めきれない。攻撃面ではGK西川周作のロングキックが上空に舞った強風の影響で軌道が乱れるなど、浦和は苦戦を強いられた。


GK西川の好セーブなどでアル・ヒラルの猛攻を凌いだ浦和は、後半のワンチャンスを物にする。同3分のセンターサークル付近からのフリーキックでMF岩尾憲が浮き球を繰り出すと、ペナルティエリア左隅に立っていたDFマリウス・ホイブラーテンがヘディングでゴール方向にボールを送る。これが相手MFアンドレ・カリージョのオウンゴールを誘発した。


失点後にアル・ヒラルは布陣を[4-4-2]に変え、サイドからのクロスに活路を見出そうとしたが、攻撃が単調になり浦和の守備を崩せず。両サイドのゴール裏を赤く染めたサポーターから、試合終盤に「We are REDS」の大合唱を受けた浦和の選手たちが、虎の子の1点を守りきった。




アル・ヒラルの選手たち 写真:Getty Images

功を奏した浦和の自陣撤退守備


[4-1-2-3]の中盤の底アブドゥラー・オタイフが適宜2センターバック間に降りたほか、インサイドハーフのカリージョがセンターバックとサイドバックの間へ移動するなど、攻撃時の隊形変化で浦和を惑わせたアル・ヒラル。このポジションチェンジでサイドと中央どちらにもパスを出せる状況を作り、浦和に守備の的を絞らせなかった。


これに対し浦和は第1戦と同じく、[4-4-2]の隊形を軸とする自陣撤退守備へと移行。前半9分には、自軍のセンターバックとサイドバックの間でボールを受けたカリージョの前進を許し、このプレーからアル・ヒラルのサイド攻撃を浴びたものの、ペナルティエリア左隅に侵入したFWアブドゥラー・アルハムダンを浦和のDFアレクサンダー・ショルツが阻止。この場面を皮切りに浦和の4バック(DF酒井宏樹、ショルツ、ホイブラーテン、MF明本考浩)、及びMF伊藤敦樹と岩尾の2ボランチで自陣ペナルティエリア内やその手前を埋め続け、ぎりぎりのところで守備の決壊を免れた。


攻撃時の隊形変化が激しいアル・ヒラルに対し、闇雲にハイプレスをかけた挙げ句パスワークでいなされるという状況を多く作らなかったことが、今回の浦和の勝因だ。4バックと2ボランチの個々の守備力、GK西川のファインセーブで何とか凌ぎきった感のある試合だったが、チーム全体として選択した戦い方は賢明だった。浦和のリスクヘッジが実を結んだ試合と言えるだろう。


浦和レッズ マチェイ・スコルジャ監督 写真:Getty Images

「リスクを冒さないことも戦略の一部」


アル・ヒラルに対し最適な戦い方を選べたことについて安堵したのが、浦和のマチェイ・スコルジャ監督とDF酒井宏樹である。第2戦終了後の公式会見に出席したこの2人が、質疑応答のなかで同試合の率直な感想を語ってくれた。


ー監督はアル・ヒラルを相当分析したと思います。彼らのどういうところに攻略ポイントを見出そうとしましたか?


スコルジャ監督:レッズには相手チームの分析をする担当が複数人いて、全員で戦術的なところのディテールまで見ています。アル・ヒラルにはスペースを与えてはいけないというのは分かっていました。1対1のチャレンジにも強力なものがありますので、コンパクトに守備(隊形)を整えながら守らないといけないことも分かっていました。ただ、もっと攻撃的にプレーできたのではないかと思いますし、もう少しボールをキープできても良かったと思います。


アウェイゲーム(日本時間4月30日に行われた第1戦)で1-1という結果でしたので、今日は余分なリスクを冒さないことも戦略の一部でした。最終的にトロフィーを獲ることが狙いでしたので、少しそのような形になったところもあると思います。もちろん3点4点5点取って勝つことができれば良かったのかもしれませんが、アル・ヒラルという経験豊富な素晴らしいチームに対して勝つことは、いつもできることではありません。レッズの選手たちに、私は大きなリスペクトを感じています。


2022ACL優勝 浦和レッズ 写真:Getty Images

ー中盤の選手を中心に流動的にポジションを変えてくるアル・ヒラルに対し、ハイプレスに行きたくても行けない、行っても剥がされてしまう場面もありました。そこで[4-4-2]のコンパクトな布陣を敷いて戦えたことがこの結果につながったと思います。その点に対する手応えと、これをJリーグにつなげていくために、守備面でどういうところをブラッシュアップしていきたいですか?


酒井:リーグに関してつなげることは、今日(の試合)からは無いかなと思います。監督も言った通り、僕らがしたいサッカーではなかったと思いますし、ただプロとして勝つことが第一優先で、そのためにどういうサッカーをするかが非常に大事でした。試合中は常に、監督から提示された試合のコンセプトに加え、自分たちで判断して形を変えていく。今日もそういうところはできたと思います。つなげるとしたら、そこだけかなと思います。相手によって変える必要がありますし、(今日は)勝ったことが全てですね。


理想通りの展開にならなくとも、当意即妙に戦い方を変え勝利を手繰り寄せる。これがスコルジャ体制の浦和の強みであり、この特長が2023シーズンのJリーグでも発揮されるかもしれない。

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