ストックカーブラジルで元F1ドライバーのバリチェロが2位表彰台

2018年5月11日(金)20時58分 AUTOSPORT web

 ブラジル出身の元F1ドライバーらが数多く参戦するツーリングカー選手権、SCBストッカー・ブラジルの第4戦ロンドリーナが5月4〜6日に開催され、今季からフル参戦を開始した”ルーキー”のルーカス・ディ・グラッシが、早くもシリーズ2勝目を飾った。


 ブラジル・サンパウロの西部に位置するパラナ州にあって、日本とドイツ系の移民が開いた街と言われるロンドリーナ。その郊外にある”アイルトン・セナ・インターナショナル・サーキット”を舞台に開催されたSCBの第4戦は、大観衆を集めたグランドスタンドを前に予選が行なわれ、レース1に向け2014年王者でF1歴代最多出走記録保持者でもあるルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)がポールポジションを獲得した。


 しかしレース1のスタートでホールショットを奪ったのは、フロントロウ2番手に並んでいたマックス・ウィルソン(ユーロファーマRC)だった。そのままバリチェロを抑えてオープニングラップのコントロールラインを通過したウィルソンは、快調なレースペースでリードを拡大。


 2番手バリチェロの背後では、3番手のマルコス・ゴメスとフェリペ・フラーガの強豪シムド・レーシング勢がバトルを展開し、前を走るバリチェロも単独走行に。


 4周目には開幕戦を制しここまで2勝を挙げている2017年王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC)が、SNS投票上位者に贈られるオーバーテイクボタン”ヒーロープッシュ”を使用してフリオ・カンポス(プラティ・ドナドッツィ・レーシング)をパスし5番手へ。


 さらに好調さを披露する王者は、2016年チャンピオンであるフラーガも仕留めて4番手に浮上すると、16周目に早めのピットへ。


 そこから遅れて19周目にピットへと向かい、右側2本交換で王者セラの追撃に対応したバリチェロだったが、ここはセラとユーロファーマRCの戦略が当たりアンダーカットに成功。バリチェロは表彰台圏外の4番手にドロップすることとなった。


 レース終盤に向けても首位を走るウィルソンとの”チーム1-2″を狙い、2番手ゴメスに執拗なプレッシャーをかけ続けたセラだったが、惜しくも及ばず。ウイルソンが優勝、2位ゴメス、3位セラのポジションでフィニッシュ。勝利を飾ったウィルソンは、初めて息子のレースを観戦にサーキットを訪れたという母マリア・デ・リマに一足早い母の日のプレゼントを贈ることとなった。


 続けて同日日曜開催となったレース2に向けた予選でも、ポールポジションを獲得したのはバリチェロ。セナの名を冠したトラックで無類の強さを見せた元跳ね馬ドライバーは、レース1での借りを返すべく「スタートにすべてを賭ける」と意気込んでの出陣となった。


 そのレース2オープニングは、後方に並んでいたこちらも元F1ドライバーのリカルド・ゾンタ(シェルVパワー・レーシング)と数台のマシンがトラブルからグリッド上に立ち往生。フォーメーションラップが仕切り直しになるハプニングが起こり、チアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング)と5度のタイトル獲得経験者、カカ・ブエノ(シムド・レーシング)が先行。ディ・グラッシも序盤に3番手まで浮上し、リズムが乱れたバリチェロはまたもポジション挽回のレース展開を強いられることに。

2レースともにポールポジションを獲得したルーベンス・バリチェロ。間違いなく週末最速のドライバーだった
SCBではおなじみとなっている市街地デモランは、今回もロンドリーナの中心部で開催された
R1のスタートで飛び出し、そのまま勝利を挙げたユーロファーマRCのマックス・ウィルソン
初観戦の母を表彰台に招き「母が来るなんて想像もしていなかった。人生の大事な物語になった」と感激


 13周目を迎えたところで最初のピットウインドウとなり、16年王者フラーガが先陣を切ってルーティンピットへ。その直後、14周目にデニス・ナバーロ(シムド・レーシング)が、アントニオ・ピッツォニア(プラティ・ドナドッツィ・レーシング)にヒットされ、1コーナーのバリアにクラッシュ。このアクシデントで週末初のセーフティカー(SC)が導入され、F1経験者のピッツォニアはレースコントロールから即時失格の厳しい裁定を言い渡されることに。


 その後17周目にSCアウトでレースが再開されると、先頭集団は堰を切ったようにピットへ。ここでカミーロ、ディ・グラッシ、セラの順でトラックに復帰した隊列に対し、ピットタイミングを遅らせて”ヒーロープッシュ”を使用したアッティラ・アブレウ(シェルVパワー・レーシング)が首位浮上に成功。


 戦略が完璧に決まったアブレウは、カミーロ、ディ・グラッシ、そしてセラを従えて首位を快走し、ほぼ勝負ありの状況に。その背後で長らく2番手争いを展開したカミーロとディ・グラッシも、24周目にディ・グラッシがオーバーテイクを決め2位に浮上。そして、このパッシングが勝利の価値を持つ重要なキーとなる事件が発生する。


 レースが27周目に入ったところで、レースコントロールはシェルVパワー・レーシングにピット作業違反があったとしてアブレウにピットスルー・ペナルティを宣告。検証で給油時にタイヤ交換作業を行っていたことが発覚し、これでアブレウは大きくポジションダウン。


 代わって首位に立ったディ・グラッシがオーバーテイクの価値をさらに高める今季2勝目を獲得。そして29周目にはバリチェロがカミーロをオーバーテイクし2番手に浮上し大観衆を沸かせると、その動きにセラも続き連続表彰台を確保。これでセラは選手権リードを36ポイントにまで拡大することとなった。


 フォーミュラEの現役王者として今季も同シリーズに参戦中のディ・グラッシは、SCBと交互に開催される5連戦のスケジュールを消化中で、SCBクリティバ、FEローマ、SCBヴェロパーク、FEパリ、そしてこの週末のロンドリーナと続いた5戦目の週末を勝利で飾り、ルーキーとして見事なリザルトを残し続くFEベルリン戦に向け弾みがついたと喜びを語った。


「もちろん、今日の勝利はアブレウのペナルティに助けられた側面はある。今日の僕らは両レースでポイントを獲得することが目標だったけど、開幕戦や第3戦のようにマシントラブルがなければ全部勝っている、と考えると素晴らしい仕事だと言わざるをえないね」


 一方、両レースでポールを獲得しながら、惜しくも勝利を逃した2017年ランキング2位のバリチェロは「ポイント獲得が後々効いてくるはず」と、ポジティブに振り返った。


「レース1のスタートは、明らかにマックス(・ウィルソン)の蹴り出しが良く、ポジションを失った。でもピット戦略で取り返すことができた。レース2で、もし”ヒーロープッシュ”を持っていたら、ディ・グラッシを捕まえられたと思う。僕のクルマは彼のより速かったからね。いずれにせよ、4位と2位のリザルトは選手権での争いを助けてくれるはずだ」


 SCBストックカー・ブラジルの第5戦サンタクルス・デ・ソルは、5月18〜20日に開催される。

R2スタートで主導権を握ったチアゴ・カミーロは4位。後方、シェルVパワー陣営は2台とも不運の週末となる
S字コーナーとなる切り返しのバトルで接触したアントニオ・ピッツォニア(右)には失格裁定が下った
ディ・グラッシ同様、今季からフル参戦するネルソン・ピケJr.は両レースともトップ10に絡めず
この週末はなぜか”ヒーロープッシュ”を得られなかったバリチェロだが、ランキングは4位に浮上した


AUTOSPORT web

「ブラジル」をもっと詳しく

「ブラジル」のニュース

「ブラジル」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ