リチャードが巨人初弾 電撃トレード翌日に阿部監督が熱望 即スタメンに応えた豪快な一発
2025年5月14日(水)5時30分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 巨人4—5広島(2025年5月13日 マツダ)
ソフトバンクから巨人へトレード移籍したリチャード内野手(25)が13日、広島戦で「7番・三塁」で即スタメン起用され、自慢の長打力をいきなり発揮した。3点を追う5回、移籍初アーチとなる1号ソロを左中間席へ運んだ。岡本和真内野手(28)が負傷で長期離脱し、請われて移った新天地で名刺代わりの一発。ここから反撃したチームは一度は追いついたが、延長12回の末にサヨナラ負けし、2連敗で3位に後退した。
打った瞬間確信した。高々とバットを掲げながら白球が左中間席へ吸い込まれるのを見届け、リチャードはゆっくりと走り出した。先頭の5回、森の143キロ直球を完璧に打ち砕いた。巨人のユニホームでの初めてのダイヤモンド一周は、覚悟と決意を胸に駆けた。
「不安があったんですけど、ユニホーム着て鏡見て、新しいチームでしっかりやらないとという思いで試合に入れた。それを明日もできるようにしたい」
秋広、大江との交換トレードの発表翌日、野球人生の分岐点を全力で駆け抜けた。朝、福岡から広島へ移動するとチーム宿舎で阿部監督、コーチ、選手らにあいさつへ回った。「何が起きているか正直分かりません」。入団会見では思わず本音が漏れたが、これも首脳陣の期待の表れだ。本来は東京で入団会見を行った後に1軍合流となるが、阿部監督の「一日でも早く来てくれ」との強い要望もあり先発に名を連ねた。
17年育成ドラフト3位で指名され、ここまで育ててくれたソフトバンクへの感謝の気持ちも忘れない。王貞治球団会長へは電話し「君にとっては大きなチャンスだから頑張ってきなさい」と言葉を贈られた。2回2死一塁の移籍初打席は空振り三振だったが、第2打席は持ち前のパワーを見せつけ、2打席連発した22年7月13日のオリックス戦以来、1035日ぶりとなる1軍での一発を運んだ。入団会見から約5時間後には球場を沸かせ、「行ってくれーと思いながら走ってました」と笑み。6回にも左前打し、四球を選んだ延長10回に代走が送られた。「6、7回ぐらいで久しぶりに足つりそうになって…。試合前からバタバタして、昨日、今日と、結構激動だったと思います」と実感を込めた。
4番・岡本の左肘じん帯損傷による長期離脱で巡ってきた、リーグを越えてのチャンス。「岡本さんが帰ってくるまでとは言わず、チームが勝てるように自分の力を出せるように頑張ります」。劇的デビュー弾で打線が勢いづき一度は追いついたが、最後は延長12回に競り負け。マツダスタジアムで開幕4戦4敗は18年以来の屈辱となった。坂本は不振、丸も開幕から不在が続く。救世主として期待される未完の「ロマン砲」がまず、大きなインパクトを残した。(村井 樹)
≪巨人移籍後初試合で本塁打は片岡治大以来≫リチャード(巨)がソフトバンク時代の22年7月13日オリックス戦以来、3年ぶりの一発。巨人移籍後初試合で本塁打は、FA移籍の片岡治大が14年開幕戦の3月28日阪神戦で打って以来。シーズン途中のトレード移籍選手となると、11年7月1日中日戦の大村三郎(サブロー)以来、14年ぶりとなった。
◇リチャード(本名・砂川=すながわ=リチャード)1999年(平11)6月18日生まれ、沖縄県出身の25歳。沖縄尚学では甲子園出場なしも高校通算25本塁打。17年育成ドラフト3位でソフトバンクに入団。20年3月に支配下選手登録された。2軍では通算94本塁打で昨季も18本塁打、54打点をマークし5年連続本塁打王、3年連続4度目の打点王。過去5年のうち4度2冠に輝いている。1メートル89、123キロ。右投げ右打ち。