劇的Vへの1点は“他人事”だった!?…宇佐美貴史「誰か1点獲ってくれ!と(笑)」

2018年5月29日(火)7時30分 サッカーキング

復活、リーグVの裏で何があったのか? 代表戦を前に宇佐美自身が語ってくれた [写真]=小林浩一

写真を拡大

「2部とはいえタイトルなんでね。優勝の仕方も劇的でしたし、相当嬉しかった。本当に気持ちよくシーズンを終えることができました」。5月、宇佐美貴史は満足気な表情でシーズンを振り返った。プレーに変化をもたらした“意識改革”、リーグVを手繰り寄せた“まさかの一撃”……。確かな手応えと自信を胸に4年に一度の大舞台へ挑もうとしている。

心身を最高の状態に導いた“ある取り組み”「自分の中で相乗効果を作り出せた」

「最初は苦しかった」——、宇佐美は2017−18シーズンの前半戦をそう振り返った。アウクスブルクに所属していた昨年8月、出場機会を求めブンデスリーガ2部のデュッセルドルフへ期限付き移籍を決断。しかし、デビュー戦となった第5節のウニオン・ベルリン戦でいきなりゴールを決めるも、スタメンを勝ち取ることはできず、先発と途中出場を繰り返す日々が続いた。ウィンターブレイクに入り、「このままじゃアカン!」と感じた宇佐美は、ある行動に出る。

「『コンディションをもっと上げないと』ってスイッチが切り替わった。休暇での取り組みと、休暇を終えて合宿に入ってからの積み上げが大きかったですね」

 ウィンターブレイクの間、栄養学の講師から食生活に関する講義を受けた。そこで得た知識を基に、食生活を改善しコンディション整備を図ると、すぐに効果は表れた。

「体が軽くなりました。食事の量は変えていないんですけど体重は2,3kgくらい落ちて。でも、体のキレとかシュートのパンチ力は落ちなかった。無駄なものがそぎ落とされたて、パフォーマンスも上がってきた。パフォーマンスが上がるとメンタル的なマインドも上がっていくので。自分の中で作りだせる相乗効果がありました」

 心身ともに充実したイメージは結果に直結した。ウィンターブレイク明けすぐは途中出場が続いたが、第23節からは4試合連続ゴールをマーク。スタメンの座をつかむと、宇佐美のパフォーマンスに呼応するかのように、デュッセルドルフは勝ち点を積み重ねた。第32節には1部昇格を決め、チームはリーグ優勝へと狙いを定めた。

「イメージした通りに体もついてきたし、自分自身で勢いを作り出せました。チームも結果が出て、目標を達成できるかも!という期待感がある中で、集中力を切らさずにプレーできました。全ての要素が噛み合った中で継続して良いパフォーマンが出せました」

頂上決戦で生まれた“らしくない”ゴールは「俺かい!って思った(笑)」

 良いイメージと、それが導くハイパフォーマンスはリーグ終盤まで続いた。リーグ2位のデュッセルドルフは最終節、首位ニュルンベルクとのアウェイゲームに挑んだ。両チームは勝ち点で並んでいたため、勝てばリーグ優勝が決まる頂上決戦だった。しかしこの試合、デュッセルドルフは前半のうちに2失点を喫してしまう。ビハインドを背負ったとき、宇佐美はチームメイトに得点を求めたと話す。

「1点は絶対に必要だと思ったんですよ。前半のうちに『誰か1点獲ってくれ!』と思っていましたね。『どうやって1点獲ろうか?』と。元気くん(原口元気)のチャンスがあったけど、その後はなかなか得点の匂いがする状況ではなかった」

 苦しい展開が続く中、意外な形からその1点は生まれた。37分、左からのクロスに宇佐美がヘディングで合わせると、これがゴールに吸い込まれデュッセルドルフは1点を返した。宇佐美らしからぬ打点の高いヘディングでのゴールは本人も予想外だった。

「まさかでしたよね。俺かい!って(笑) あの瞬間は感じたというか、『あっ』と思った。見えたというか、ちょうど自分が入っていく先がDFの間で『ここに(ボール)来れば決めるよ!』って。そしたら来てしまったという感じで、あとは正確にコースにヘディングで流し込みました」

 それでも、“まさかの1点”はチームに勢いをもたらした。デュッセルドルフは59分に同点に追いつくと、アディショナルタイムには逆転ゴールを奪い、3−2で勝利。劇的すぎる展開でリーグ優勝を獲得した。

「0−2から逆転で3−2にして、試合の内容も嬉しかったし、ファンの方たちも街を上げて喜んでいる姿を見て『優勝して良かったな』と強く思いました」

 最終節の得点を含め、リーグ戦では8ゴールを記録。持ち前のドリブルとシュート力、そして、自分を変えるための取り組みも実を結び、多くのスーパーゴールを決めた。何よりも、躍動感あふれるプレーと楽しそうにプレーする姿こそが、その充実ぶりを物語っていた。

「スタートラインにやっと立った」“世界”への挑戦へあと一歩のところまで

 充実のシーズンを終え、良いイメージを胸に、日本代表としての戦いに挑もうとしている。18日に発表された27名の日本代表メンバー入りを果たした。30日のキリンチャレンジカップ2018(ガーナ戦)を経て、31日に発表される2018 FIFAワールドカップ ロシアの最終メンバーに入れば、いよいよ“世界”への挑戦権を手にする。幼少期から目標としてきた夢舞台へあと一歩——、それでも、宇佐美に油断や慢心は一切ない。

「驚くほど、嬉しさや喜びは感じないですね。むしろ『ここからだ』と。スタートラインにやっと立てた感じですよね。生き残りに向けて、4枠落とされるわけだから。そこの現実はしっかり見極めていますし、自分が落とされないように合宿でどういうプレーをするかが大事になるので、より気が引き締まっていますね」

インタビュー・文=加藤聡
写真=小林浩一、ゲッティイメージズ
取材協力=アディダスジャパン

サッカーキング

「宇佐美貴史」をもっと詳しく

「宇佐美貴史」のニュース

「宇佐美貴史」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ