【日本ダービー】ただ馬の無事を願う上村拡装蹄師 ミュージアム第一印象は「バランスがいい」
2025年5月29日(木)5時30分 スポーツニッポン
◇疾走ミュージアムマイル(4)
「第92回ダービー」で史上25頭目の2冠制覇に挑む皐月賞馬の陣営に迫る連載企画「疾走ミュージアムマイル」。4回目は皐月賞馬の装蹄を担当する上村拡史氏(39)を取り上げる。開業3年目の若き装蹄師が脚元をしっかりケアし、万全の状態で大一番へ送り出す。
最高時速70キロで走る競走馬の脚元を守る装蹄師は、まさに縁の下の力持ち。ミュージアムマイルを担当する上村装蹄師は開業3年目で初のクラシック制覇となった。皐月賞馬と初めて出合った時の印象について「バランスがいい。それが第一印象ですね。打ちやすい蹄をしていて、爪の形もバランスがいい。これまでたくさん装蹄をさせていただいたが、こういう馬が大きな舞台でも結果を残せるのかなと勉強になりました」と目を細める。
06年に栗東・福田晃寛装蹄所へ入門。師匠の下で研さんを積んだ。その師匠が担当していた安田隆行厩舎で当時、調教助手を務めていた高柳大師と出会った。「先生はクールな印象が強いですけど、気さくな方というのが第一印象ですね」。その出会いが大きな転機となり、22年に独立。「開業して装蹄師としてやってみたいと思う気持ちが強くなりました。独立するきっかけをつくってくださったのが高柳先生です。牧場で1歳馬の装蹄を勉強させてもらい、あの経験が大きかったですね」と振り返る。
開業後は昨年14番人気でヴィクトリアマイルを制した高柳大厩舎のテンハッピーローズ、2月の東京新聞杯を制したウォーターリヒト(3月に定年解散した河内厩舎から石橋厩舎に転厩)などの装蹄を担当している。「弟子の頃からG1級の馬の脚元に携わる機会を与えていただいたことが財産になっていますね」と豊富な経験が生きている。
父に憧れて飛び込んだ世界。地方・兵庫(西脇所属)で装蹄師だった父・勇次氏が担当したマッキーローレルは00年にセントライト記念(4着)から菊花賞(15着)に挑戦。「競馬場に応援に行ったことを覚えています。幼少の頃から父の背中を見ていたので装蹄師の仕事の凄さを感じていました」。現在は兄・剛氏が父の装蹄所を継いだ。「場所は違いますが、兄とは切磋琢磨(せっさたくま)して強い馬づくりを目指しています」と目を輝かせる。
ホースマンなら誰もが夢見るダービー。現在は弟子と2人で装蹄所を切り盛りしている。「親方になって一番大事にしていることは(担当馬が)無事に故障なく厩舎に戻ってくるように。日々、精進しながら弟子とともに大きな舞台で活躍する馬を手がけていきたい」と力強く結んだ。チーム一丸となって2冠制覇へ挑む。(新谷 尚太)
◇上村 拡史(うえむら・ひろし)1985年(昭60)12月16日生まれ、兵庫県出身の39歳。園田競馬場の近くで生まれた。父・勇次氏、兄・剛氏が地方・兵庫競馬で装蹄師として従事。22年に栗東・福田晃寛装蹄所から独立し、現在は弟子と2人で「上村装蹄所」を経営している。