ニュル24時間併催のWTCR開幕“ドライ決戦”は、ホンダのモンテイロが最終周で逆転勝利

2021年6月7日(月)14時45分 AUTOSPORT web

 2021年シーズンの開幕を迎えたWTCR世界ツーリングカー・カップは、6月3〜5日にドイツのニュルブルクリンクで開幕戦が争われ、レース1は“ワンチャンス”をモノにしたティアゴ・モンテイロ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.DE・ミュニッヒ・モータースポーツ)が、最終ラップの大逆転劇でイバン・ミューラー(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)を降し今季初優勝。レース2ではエングストラー・ヒュンダイN・リキモリ・レーシングチームの同門対決を制したジャン-カール・ベルネイが、新型ヒュンダイ・エラントラN TCRの世界戦初勝利をマークしている。


 第49回を迎えた伝統の24時間レース、ADAC・トタル24時間が霧と豪雨の悪天候による史上最長の赤旗中断に見舞われた同週末。併催となったTCR規定最高峰シリーズの開幕戦は、その24時間決勝より前倒しのタイムスケジュールで進行し、一部のセッションではダンプ・コンディションとなったものの、ほぼ大部分でドライ路面のなか競技が進められた。


 2回のプラクティスでは王者ヤン・エルラシェール(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)や、今季初参戦の2代目アウディRS3 LMSをドライブするフレデリック・バービッシュ(コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ)らセダン系モデルが最速タイムを記録するも、予選セッションで気を吐いたのはハッチバックのホンダ勢。


 ラストアタックでベルネイの新型セダンを上回ったネストール・ジロラミ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.COM・ミュニッヒ・モータースポーツ)が最速タイムを叩き出し、レース2に向けたポールポジションを確保すると、セットアップに苦しんできた僚友エステバン・グエリエリ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.COM・ミュニッヒ・モータースポーツ)もルカ・エングストラー(ヒュンダイ・エラントラN TCR/エングストラー・ヒュンダイN・リキモリ・レーシングチーム)を抑え込んでセカンドロウ3番手を奪取するなど、ホンダとヒュンダイの2チームが交互に上位グリッドを占拠する結果となった。


 このセッションでそれぞれ9番手、10番手を獲得していたヤン・エルラシェール、イバン・ミューラーの親族ペアが土曜午前9時スタートのレース1で最前列から発進すると、ポジションを守った2台に対して3番グリッドに着けていたノルベルト・ミケリス(ヒュンダイ・エラントラN TCR/BRC・ヒュンダイN・ルクオイル・スクアドラ・コルセ)が、他車との接触から1コーナーでアウトに弾き出され大きくドロップする展開に。

2021年のWTCRは、6名の世界タイトル獲得経験者を含む、全22台のエントリーが集った
WTCR史上初の女性フル参戦ドライバーとなったジェシカ・バックマン(左)は、強豪Target Competition(ターゲット・コンペティション)から兄のアンドレアスとともにステップアップ
2021年からシリーズデビューを飾る新型ヒュンダイ・エラントラN TCRは、都合6台が登場


■ライバルたちの直線スピードは「まるで別の惑星のマシンみたいだった」と語ったミューラー


 一方、6番手発進だったサンティアゴ・ウルティア(リンク&コー03 TCR/シアン・パフォーマンス・リンク&コー)は堅実なスタートを切り、グランプリコースを終えてノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)へ向かう前には4番グリッドのモンテイロを仕留めてみせる。


 コースの大部分はドライながら、レースコントロールからはウエット宣言も出されていたレースだが、グリッドにつく全車がスリックタイヤを装着して霧のグリーンヘルに突入していくと、首位を行くミューラーは「直線でのライバルたちは、まるで別の惑星のマシンみたいだった」と、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)によるビハインドに不満を漏らす状況に。


 2周目の名物ロングストレート“ドッティンガー・ホーエ(Döttinger-Höhe)”では、5番手発進でオープニングからジリジリと上がってきた59歳の鉄人、ガブリエル・タルキーニ(ヒュンダイ・エラントラN TCR/BRC・ヒュンダイN・ルクオイル・スクアドラ・コルセ)にパスされ、ついに首位を明け渡すことに。


 しかしGPコースに戻る最終コーナーでアウト側2輪をグラスエリアに落としたタルキーニが失速し、このミスに乗じてミューラーがポジションを奪い返すと、1コーナーに向けブレーキング競争となったタルキーニとウルティアはタイヤをロックアップさせてオーバーラン。老兵はあわやミューラーのリヤに追突か、という状況を回避したものの、ワイドになった2台のインを突いて後方からモンテイロが浮上してくる。


 全長約21kmの“グリーンヘル”を通してリンク&コー03 TCRとテール・トゥ・ノーズに持ち込んだモンテイロは、3周目のファイナルラップで勝負どころをドッティンガー・ホーエと定めて最後のストレートへ。


 この戦略が功を奏し、スリップストリームから前へ出たシビックは、2台のリンク&コーを従えて0.514秒差でトップチェッカー。モンテイロが見事にシーズン初戦を制する結果となった。

セダン系モデル優位に進んだ週末で、予選ポールポジションを獲得したネストール・ジロラミ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.COM Münnich Motorsport)
R1ではLynk&Co 03 TCR対ヒュンダイ・エラントラN TCRの勝負が繰り広げられるも、背後から勝機を伺う1台が迫る
「ホンダの方が明らかにパワーがあり、なす術はなかった」と、R1で2位に敗れたイバン・ミューラー


■エラントラN TCRの世界戦初優勝はワン・ツーで達成


「最初のラップからドキドキしていたが、3周もある“長い”レースだと思っていたから、とにかく『スマートであれ』と言い聞かせていたよ」と、レース後のインタビューで振り返ったモンテイロ。


「1コーナーでガブリエレのミスを見てチャンスだと思った。そこからはイバンに全力で喰らい付いたよ。チャンスはおそらくストレートだと感じていて、出来るだけ背後に近づいて準備しておく必要があった」


「計画を練り、そのすべてがうまくいったときの気持ち良さを知っている? それが今日の出来事さ(笑)。こんな形でシーズンをスタートできるなんて、本当にハッピーだよ」


 そのまま午前10時20分からスタートしたレース2は、予選結果によるポールシッターだったジロラミが背後のヒュンダイ勢に飲み込まれ、シビックをピットレーン出口まで寄せて抵抗を見せた策も虚しく、そこからはベルネイとエングストラーによるマッチレースの様相に。


 無線によるチームからの再三の“クールダウン要請”を黙殺した2番手の若きドイツ人は、地元での開幕勝利とエラントラN TCRの世界戦初優勝の栄冠を賭け、新加入のフランス人に執拗なアタックを続けるも、2017年TCRインターナショナル王者の牙城を崩すことはできず。


 ベルネイがチーム移籍後の初戦で初優勝を飾るとともに、エラントラN TCRがワン・ツー・フィニッシュを達成。最終的にこの2台から12秒遅れたジロラミが最後の表彰台を確保した。


 これでレース1でトップ10フィニッシュ、レース2の優勝と連続ポイントでベルネイが選手権リーダーに立った2021年WTCRシーズン。続く第2戦は同月25〜27日にスペイン・ヴィラレアル市街地の代替戦として追加された、ポルトガルのエストリル・サーキットを舞台に争われる。

レース後にお互いのクリーンな勝負を称え合ったミューラーとモンテイロ。R2でも8位に入ったポルトガルのベテランはランク2位に着ける
R2のスタートで出遅れたポールシッターのジロラミは、ルカ・エングストラー(ヒュンダイ・エラントラN TCR/Engstler Hyundai N Liqui Moly Racing Team)をピットレーン出口まで追いやる猛ディフェンスも届かず
CUPRA勢には散々な週末となり、R2のスタート直後にノルベルト・ミケリスらと絡んだミケル・アズコナは、僚友のロブ・ハフやバックマンともヒットしてリタイアに

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