“ジョーカー”からレギュラーへ。58歳のユタ・クラインシュミット、エクストリームE参戦決定

2021年6月25日(金)17時33分 AUTOSPORT web

 2021年に初年度開催を迎えた電動ワンメイクSUVによるオフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』シリーズで、レースコースの設計にも貢献しつつ、欠員が出た際にリザーブとして代役参戦するという“Joker Drivers(ジョーカー・ドライバー)”の役割を担っていたユタ・クラインシュミットが、アプト・クプラXEに正式加入することが発表された。


 史上唯一の女性ダカールラリー総合優勝経験者で、現在58歳の“砂漠の女王”は、これにより第3戦『Arctic X Prix』よりマティアス・エクストロームと強力なペアを結成し、最大出力400kW(約544PS)を発生するフルエレクトリックSUV『e-CUPRA ABT XE1』をドライブすることとなった。


 地球環境保全活動とその啓蒙、さらに男女平等の理念を採用するまったく新しいEVオフロード選手権として幕を開けたエクストリームEだが、その新選手権でティモ・シャイダーとともにコースダイレクター的な役職を務めて来たクラインシュミットは、チームの要求に備えて「バックアップ要員としてステアリングを握る可能性もある」とした条件に従い、「私はこの新しい挑戦、アプトチームとの協業、そしてもちろんマティアスとの本格的タッグ結成を本当に楽しみにしている」とレギュラー参戦への意欲を語った。


 言わずと知れた2001年のダカール覇者であるクラインシュミットは、アプト・クプラXEのレギュラーに抜擢されながら第2戦『Ocean X Prix』を欠場したクラウディア・ヒュルトゲンに代わって、自らが設定に関与したダカール近郊ラックローズの特設コースですでに実戦参加を果たしている。


「このようなオフロードイベントで最高のパフォーマンスを発揮するには、テストやラリーへの参加など集中的な準備が必要ね。でも残念ながらBMWとの契約により、プロとして仕事を両立し、高い時間のコミットメントが果たせないことが分かった」と語ったのは、2005年VLNニュルブルクリンク耐久シリーズでの優勝経験を持ち、今回正式にチーム離脱を表明したヒュルトゲン。


「エクストリームEファミリーでの経験にとても感謝しているし、アプト、クプラ、そしてユタ(・クラインシュミット)がこの先のシーズンで最高のパフォーマンスを発揮できることを祈っている」

セネガル・ラックローズでの第2戦『Ocean X Prix』に急きょ参戦していたユタ・クラインシュミット
現在、FIAやFIMでの要職も担っている58歳のクラインシュミット。「ふたたび最高レベルで戦うチャンスに、とても満足しているわ」


■「チームは今季後半にもトロフィーを競い始めるだろう」とアプト代表


 そのバトンを受け取ったクラインシュミットは、すでに“アドバイザー兼チャンピオンシップドライバー”として開幕からふたつのイベントを経験し、17回のダカール出走から得た深い知識を活用し、シリーズ主催者をサポートしてきた。


「最初は主催者の視点からシリーズをフォローしたけれど、その後はエントラントとして自発的にドライブする立場になった。こうしてマティアス(・エクストローム)と一緒にレギュラーとしてふたたび最高レベルで戦うチャンスに、とても満足しているわ」と続けたクラインシュミット。


 その彼女はこの週明けにもクプラのイベントに登壇し、正式にチームの一員としての活動をスタートさせる計画だというが、アプトのCEO兼スポーティングディレクターを務めるトーマス・ビアマイヤーは「この冒険と波乱に満ちた船出を切り抜け、うまくいけば今季後半にも落ち着きを取り戻し、チームはトロフィーを競い始めるだろう」との期待感を示した。


「まず我々の共同プロジェクトに初日からすべてを提供してくれたクラウディア(・ヒュルトゲン)に心から感謝したい。トラック外では良き友人として変わらぬ関係性のままだし、新たにコクピットでの仕事を引き継いでくれたユタ(・クラインシュミット)が、ここからチームの一員でいてくれることを誇りに思っている」


 そしてドイツ・ケルン出身の“レジェンド”と組むことになったエクストロームも、8月の最終週に向け「(開幕戦)サウジアラビアでの事故、(第2戦)セネガルでのドライバーの自発的な変化……今こそスムーズな週末を過ごす時だ」として、レースウイークへの完全集中の必要性を説いた。


「ここまでのシーズンを徹底的に見直し、これまで以上に集中的に準備をし、グリーンランドで新たなスタートを切るよう努めるべきだ」と、2022年のダカールラリーではアウディの新型モデルをドライブする予定のエクストローム。


「ユタは誰もが認める“ダカールの女王”であり、その点で僕はまだほとんど新人のようなものだ。彼女をチームに迎え入れることは、クロスカントリーでのドライビングを学ぶ意味で僕にとっても特別なことだ。彼女の蓄積された経験と、電動SUVでのコラボレーションを楽しみにしている」


 そのグリーンランド・カンゲルルススアークで争われる第3戦の北極圏『Arctic X Prix』は、8月28日〜29日の週末に開催される。

開幕以降、Rosberg X Racing(ロズベルグ・Xレーシング/RXR)のヨハン・クリストファーソン/モリー・テイラー組が連勝を飾っている
グリーンランド・カンゲルルススアークで争われる第3戦の北極圏『Arctic X Prix』は、8月28日〜29日の週末に開催される

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