スーパーGTとDTMの交流戦は「モンテカルロがいいね(笑)」ベルガー会長が語るドイツ側の狙い

2018年6月26日(火)11時52分 AUTOSPORT web

 スーパーGTとDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)が『クラス1』規定の合意を発表し、2019年の交流戦の実現に向けて、大きな一歩を踏み出した。DTM第7戦の開催地での発表とはいえ、会見にはドイツのメディアも多数集まり、大きな注目を浴びることとなったが、DTMを統括するITRのゲルハルト・ベルガー会長にこれまでの成果と、交流戦への期待について聞いた。


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──まずは『クラス1』規定の完成、おめでとうございます。スーパーGTとDTMにはタイヤなど多くの違いがあり、それをまとめるにあたって、いろいろなご苦労があったと思います。


「ありがとう。難しい点はたくさんありましたが、細かい部分よりも、それぞれが違うフィロソフィー(考え方)に基づいたレースであるところを充分に理解し尊重する必要がありました。スプリントレースのDTMに対してスーパーGTは耐久レースの色合いが濃く、『タイヤウォーズ』もある。我々DTMはコストに関するプレッシャーもスーパーGTより大きく、マシン開発も限られた範囲でのみ許されています」


「シリーズそのものの置かれている環境がかなり違っていたので、『クラス1』規定の結論に至るまでには紆余曲折ありましたが、今回、共通の合意に至る事ができました」


──一番苦労したのはどのような点でしょうか。


「じっくりと時間をかけて話を聞き、スーパーGTに関わるみなさんの考え、真意をきちんと理解する事に気をつけました。パートナーシップには信頼関係がとても大切です。そうした関係は、簡単には築けません。相手がどんな意見を持っているのか、どのくらい協力的なのか、それとも懐疑的なのか、それはなぜか。プロジェクトの初期には、相手を理解する事に注意しました」


「とはいえ、F1時代から日本のカルチャーに触れる機会はたくさんあったので、ある程度は理解していたつもりです。個人的に、日本のファンのみなさんやホンダには昔から親近感を感じています。そして、このプロジェクトを通して坂東(正明GTA代表)さんや彼のグループ、日本の自動車メーカーなど、スーパーGT関係者のみなさんとも、とても良い関係を築く事ができました」


──タフな話し合いを通して良い関係が出来上がったんですね?


「そうですね……たくさん議論はしましたが、『タフ』なものではなかったですね。我々は常にお互いを理解しようと意識していたし、いつも実りのある良い議論ができたと思っています」


──ところで、メルセデスが今シーズンでDTMでの活動を休止します。今後DTMの魅力をさらに高めるには何が必要でしょうか?


「もっとインターナショナルにしなくてはなりません。ドイツのシリーズであるというアイデンティティを保ちながら、ドイツ以外の自動車メーカーが参戦する国際的なシリーズに発展させる必要性を感じています。ですから、日本のマニュファクチャラーと一緒にレースができる『クラス1』レギュレーションができたのは本当にファンタスティック! 今回の事は、DTMとスーパーGT両者にとってとても大きな一歩です。ヨーロッパのメーカーと日本のメーカーが同じサーキットで競う合う。ワクワクしますね」


ノリスリンクで行われたDTMとスーパーGTの共同記者会見で、クラス1技術規則書を交わす坂東代表とベルガー代表

──交流戦を行うサーキットですが、記者会見ではこれから検討することが明かになりました。日本は最高速の高い富士スピードウェイが候補だと坂東代表は話していましたが、ITR会長としてではなく、レーシングドライバーとして見た場合、交流戦に向いているのはどこのサーキットだと思いますか?


「物流の手配やタイミングなど、本当にいろいろな事を配慮して考えなければならないので、現状ではどのサーキットも100%オープンな状況です。ドライバーとしては…じゃあ、私は坂東さんの逆を考えましょう。一番の候補はモンテカルロ!(笑) 低速コーナーのレースはどうかな? でも、おそらくドイツ国内のサーキットになるでしょうね」


──改めまして、スーパーGTの印象を教えてください。


「(2017年最終戦)ツインリンクもてぎに行きました。サーキット全体の雰囲気が最高ですね。ファンの熱心な様子や、何とかクイーンの女性たちとか(笑)。昔、F1で感じた空気と同じでした。とにかくスーパーGTはとても成功しているシリーズなので、『クラス1』レギュレーションでDTMとの交流戦が実現すれば素晴らしい発展が成し遂げられるはずです」


──F1時代、あなたは日本では特に人気がありました。


「日本のファンはとても情熱的であると同時に行儀がよく、勝っても負けても、いつでも温かく応援してもらえたのがとても良い思い出です。世界中のどこの国のファンともまったく違います。ドライバーをもっとも熱心に応援してくれるのが日本のファン。F1時代の、本当に良い思い出なんです」


──最後に少し意地悪な質問ですが、今後、DTMとスーパーGTのシリーズ戦は可能だと思いますか?


「DTM、スーパーGT双方の意図するところは、まずヨーロッパと日本もしくはアジアで、同じレギュレーションに基づいて製作されたレーシングカーによるシリーズを実現するところにあります。その上で、1戦なのか数戦なのかはまだ分かりませんが、上位のチームによる交流戦が行えればもっと良いですね」


「私たちが一番に考えているのは、ヨーロッパでDTMを、日本でスーパーGTをより『ストロングな』(=安定的に運営され、多くのファンが楽しめる)シリーズにする事です。自動車メーカーの投資が長期にわたって効率よく有効活用できるようにすることで、いろいろなことが可能になると信じています」


「1種類のマシンを開発するだけでDTMとスーパーGTどちらにも参戦する事が可能になる。共通パーツの採用によって、エキサイティングなコンペティションが実現できる。そして、そのマシンは安全性に最大限の配慮がなされている。これが『クラス1』規定です」


──キーワードは、「コストエフィシエント(費用対効果)」、「コンペティティブ」、「安全」ですね。この3つが高い次元でバランスされているのが『クラス1』という理解で正しいでしょうか?


「そのとおり! もちろん、安全性ばかりを追求してレースの醍醐味を失くしてしまっては意味がありません。だから、そのバランスを私たちはとても大切にして、このレギュレーションを作成しました」

ノリスリンクで行われたDTMとスーパーGTの共同記者会見で、クラス1技術規則の合意にサインしたベルガー代表


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