トップドライバーが「怖い」と口を揃える恐怖の“フェシュフェシュ”その正体【WRC Topic】

2022年7月2日(土)17時9分 AUTOSPORT web

 先日トヨタが歴史的な1-2-3-4フィニッシュを飾ったWRC世界ラリー選手権第6戦サファリ・ラリー・ケニアでは、多くのドライバーが「このステージはフェシュフェシュが酷くて大変だった」とコメントをしていた。何ともかわいらしい響きのワードだが、クルマと選手にとっては、恐ろしい「灰色の粉」なのだ。


 フェシュフェシュ(fesh-fesh)というのは、目の細かいパウダー状の砂が堆積した状態の路面を示す。ダカールラリーではお馴染だが、WRCではそれほど頻繁には出てこない路面だ。


 しかし、サファリ・ラリーはいたるところフェシュフェシュだらけ。我々メディアに対しても「あのステージの終盤はフェシュフェシュが酷いからくれぐれも注意してください」と、フェシュフェシュ警報が出されるくらいだ。

非常に目の細かい砂が厚く堆積したフェシュフェシュでは車両の通過によってふかい轍(わだち)が刻まれる


 ではフェシュフェシュの何がそんなにヤバいのかというと、クルマが前に進まずスタックしそうになること。フェシュフェシュは、砂というよりもパウダーに近く、小麦粉のような目の細かさ。それが30cm程度積もっていて超フカフカなうえ、深い轍(わだち)もある。


 実際にクルマで走ってみると、フェシュフェシュに差しかかった瞬間、スピードがガクンと落ちる感じがあり、駆動力が一気に伝わらなくなる。しかし、そこで絶対に止まるわけにはいかない。瞬時にスタックしてしまうからだ。実際、今回も数名のドライバーがフェシュフェシュでスタックしてしまった。


 また、今回優勝したトヨタのカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)も、昨年のこのラリーではフェシュフェシュの轍でスタックし、デイリタイアとなってしまった。


 昨年、彼はスタックから脱出しようと、車載ジャッキでクルマの位置を変えようとしたが、そのジャッキがズブズブとフェシュフェシュに沈んでしまい、まったく機能しなかった。まさに砂地獄、いや粉地獄だ。


 スタックしないためには、とにかくアクセルを開けて前に進み続けなければならないが、そう簡単にはいかない。フェシュフェシュに突入した瞬間、小麦粉の袋が破裂したかのように粉煙がドバッと上がり、前がまったく見えなくなってしまうからだ。
 
 しかも、粉煙はすぐには収まらず、しばらく前が見えなくなる。それでも、止まった瞬間にスタックするから、前が見えなくとも前に進み続けなければならない。コドライバーが読み上げるペースノートを信じ、ワイパーを全開で作動させ、フェシュフェシュの中に岩が隠れていないことを神に祈り、アクセルを踏み続けなければならないのだ。


 多くのトップドライバーが「フェシュフェシュは本当に怖い」と口を揃えて言う。超高速コーナーも、ビッグジャンプも涼しい顔でこなす彼らをも、恐怖に陥れる灰色の粉。それが、フェシュフェシュだ。

フェシュフェシュに足を踏み入れた次の瞬間にダストが視界を奪う



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