【パラグアイ戦検証】5発快勝を手繰り寄せた”左高右低”の妙 「最も得意な形」での圧勝劇はマリ戦にどう影響するか【パリ五輪】
2024年7月25日(木)12時25分 ココカラネクスト

斉藤(写真)や三戸、大畑が絡む左サイドの攻撃でパラグアイに脅威を与えた(C)Getty Images
パリ五輪・サッカー男子、日本の初陣となるパラグアイ戦は、前半のうちに相手にレッドカードが出たこともあり、5−0で日本が快勝を収めた。
日本の1点リードで迎えた25分、パラグアイは10番MFワイルダー・ビエラが平河悠の足首を踏みつける危険なタックルを行い、オンフィールドレビューで映像をチェックした結果、一発退場。このシーンが、5−0の衝撃的なスコアへ導く要素になったのは間違いない。
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とはいえ、それ以前から試合のペースは日本が握っていた。パラグアイは高い位置から激しいプレッシングを浴びせてきたが、日本は丁寧にビルドアップを行い、相手のボール狩りを外して敵陣へ攻め込んだ。レッドカード云々だけでなく、日本が試合のクオリティで勝っていたのは明らかだ。
特に攻略の糸口としたのは、左サイドだった。左ウイングの斉藤光毅がタッチライン際から中盤へ下りて、ボールを奪おうと矢印が前へ向くパラグアイのボランチの背後に潜む。この斉藤の中落ちに合わせ、左SBの大畑歩夢が高い位置を取ることで、相手SBやサイドハーフに睨みを利かせる。そこに立つことで相手を留め、斉藤を追撃させない。結果、斉藤はフリーで前を向きやすかった。
内側では三戸舜介が斉藤をサポートしたり、入れ替わって追い越したりと、左サイドで作ったスペースを糸口に敵陣へ攻め込んで行く。日本は小久保玲央ブライアン、木村誠二、高井幸大が後ろから丁寧にボールをつなぎつつ、斉藤を出口としてビルドアップを完結させる場面を、まるでリプレイを見るかのように再現し続けた。
19分の先制点も、左サイドから生まれている。
日本は相手のクリアボールを高井が相手FWの前に出て回収し、下りてきた斉藤へパス。このとき、「フリー!」「フリー!」と声が飛んだ。そうだ、五輪は中立的なファンが多く、試合によっては空席も多いのでコーチングの声がよく通る。斉藤はすぐにターンし、前方を窺うと、高い位置を取っていた大畑が鋭くスタート。斉藤のスルーパスで大畑が背後を取ると、折り返しを三戸がねらう。細谷真大のDFブロックで時間を与えられた三戸は、精度の高いシュートをニア隅へ決めた。
このように左サイドで大畑が高い位置を取って攻撃にモビリティを生み出す一方で、反対側のサイドバックである関根大輝は低い位置を保ち、日本は左高右低で攻守のバランスを維持した。各人の個性がよく生きる形だった。
ただ、日本は1人多い状況で概ね優勢ではあったが、後半序盤から60分くらいまでは、非常に危ない時間帯だった。49分に高井がボールキープの失敗から相手を倒し、イエローカードを受けた場面以後、日本のマインドが少し下がった。1−1に追いつかれても不思議ではない決定機をいくつか作られた。
そんなこんなで、2点目の必要性をひしひしと感じ始めた時間帯。日本はこの試合を決定付けるゴールを挙げることになる。
63分、スローインの流れから山本理仁のスルーパスに反応し、細谷が折り返す。これはつながらなかったが、2次攻撃から斉藤がドリブルで仕掛ける。得意の足裏引き技で相手を食いつかせると、素早く浮かせて縦へ突破。南米勢のDFを、南米の香りがするテクニックで抜いた。そして、左足の丁寧なクロスから、三戸も丁寧にヘディングシュート。
2−0。パラグアイは反撃実らず、ここで心が折れた。日本は山本、藤尾翔太が次々と加点し、終わってみれば5−0。完勝だった。1点目も2点目も、厚みある2次攻撃、3次攻撃から生まれた点が良かった。チームが機能している。
ただ、このメンバーの最も得意な形、左高右低のアシンメトリーをこれでもかと発揮したことで、次はどうするか。
当然、相手は分析して来るし、右サイドで独立してプレーできる平河が負傷したことも、2戦目以降の戦い方に影響するかもしれない。大畑や関根に比べると、特徴が中間的な万能のサイドバック・半田陸を直前で欠いたことも含めて。
戦い方の幅を出しづらければ、良かった形を一層貫くか。次戦のマリは強敵だが、日本は勝てば3戦目を待たず、決勝ラウンド進出を決められる。この過密日程でメダルを目指すなら、1試合を消化試合にできるのは大きなボーナス。勝負だ。
[文:清水英斗]
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