『ホンダNSXの背後についてはいけない』スーパーGT第5戦富士、酷暑&未知の500マイルを制するポイント

2018年8月3日(金)18時42分 AUTOSPORT web

 とにかく『暑い』&『アツイ』という言葉が聞こえてくる、スーパーGT第5戦の搬入日の富士スピードウェイ。土日は搬入日よりもやや暑さは収まる方向のようだが、手元の計測では金曜日の最高気温は32.8度、路面温度は56.6度という酷暑になった。今年から新たなレースフォーマットとなる、富士500マイルの決勝レース。その勝負のポイントはどのあたりになりそうか。


「実は前戦のタイの時、熱中症でコクピットから降りたらフラフラでした」と語る、ホンダ系にとあるドライバー。GT300クラスのマザーシャシー勢でも多くのドライバーが熱中症になったが、3メーカーを同条件で比較したわけではないが、ドライバーの声を聞く限り、エアコンが導入されているGT500のなかでも、特にホンダNSXはコクピット内の温度が格段に高いようだ。


 もちろん、NSXはMRでエンジンが後部にあるため、FRよりもクーリングが厳しいという面やドライバーが背中側で熱を感じやすいという面があり、室内気温は60度にも達すると言われている。今回の富士ではこれまでのマレーシアやタイでのレースに匹敵する、いや、それ以上の暑さになる可能性もあり、まずはドライバーの熱中症対策、レース中の体調管理が勝敗にも大きく関わってきそうだ。特にホンダNSXのドライバーたちの体調が懸念される。


 ドライバーだけでなく、その暑さと、富士での500マイル(800km)のレース距離でマシン側で懸念されるのがブレーキの摩耗だ。これまで鈴鹿1000kmで距離の実績があるとはいえ、富士の約1.5kmの直線距離、300km/h前後からのフルブレーキングによるブレーキの負担は、500マイル(800km)といえども鈴鹿1000km以上と言われる。


 3メーカーの中で、特にブレーキに厳しいと言われているのがレクサスLC500。ブレーキのローターやパッドなどのパーツは3メーカー共通部品で差はないが、LC500は空力を重視した作りのようで、ブレーキのクーリングがライバル2メーカーに比べて充分とは言えないようで、ブレーキが冷えづらい構造になっているようだ。


 当然、レクサス陣営もそのウイークポイントに手をこまねいているわけではない。今回の富士500マイルに向けて、ボンネット内のエアフローを改善してきたようで、外観からは分からないが、クーリング性能を増強してきているという。


ブレーキが厳しいレクサス陣営。今回はクーリング対策を施しているというが、その効果は果たして。

 それでもレクサス、そしてニッサンGT-R陣営も恐れているのが、ホンダNSXの排気熱だ。LC500、GT-Rはフロントタイヤ後方のサイドからの排気に対し、ホンダNSXはMRに搭載したエンジンでリヤから排気を行う。LC500、GT-RがNSXの背後に付いた場合、NSXの熱い排熱を冷え切らないままフロントのインテークから取り込むことになるため、エンジンパフォーマンスの低下だけでなく、フロントのブレーキのクーリングにも甚大な影響を及ぼすことが想像されるのだ。


「半車身だけでは片側しか冷えないでしょうから、完全に一車身分はNSXから横にマシンをズラして走らないといけないでしょうね」とは、とあるGT500関係者。富士の決勝の直線でドライバーたちは、スリップストリームに付いてオーバーテイクを狙う/車体をズラしてクーリングを優先する、というふたつの悩ましい選択を迫られることになりそうだ。NSXを抜きあぐねて、排熱を受けたまま走行を重ねるとブレーキの摩耗が極端に進んでレース終盤に勝負権を失ってしまう可能性も多いに考えられる。

リヤ右側から排気を行うホンダNSX。この排熱を吸気し続ければ後方のクルマのパフォーマンスは苦しくなる。


■スーパーGT初の富士500マイルレースの優勝候補たち


 もうひとつ、今回の富士のGT500クラスの戦いで注目されるのが、シーズン2基目のエンジンの投入状況とそのパフォーマンス。搬入日の段階ではまだ3メーカーすべての車両のエンジンが把握できてはいないが、どうやらレクサス陣営が2基目のエンジンを投入、ホンダ陣営は1基目と2基目がチームによって混在しているようで、ニッサン陣営は1基目のままのようだが、まだ定かな情報ではない。


 ただ、もしそれが事実ならば、3メーカーがそれぞれシーズンを見据えた戦略が異なっていることになる。プレチャンバー(エンジン副室での燃焼)の導入に湧いた今シーズンのエンジンウォーズのゆくえがどうのような結末になるのか、この富士戦が大きなターニングポイントになるのかもしれない。


 GT500クラスの決勝500マイル(800km)のレース戦略は、基本的には4ピット/5スティント。セーフティカーの導入などでイレギュラーとなった際のピットストップ戦略、そしてどちらのドライバーが3スティントを担当するのかなどなど、チームの判断、総合力も見どころになる。


 優勝争いは、普通に考えるならば本命は36号車のau TOM’S LC500。前回のタイ戦でも優勝候補に挙がっていながら、レースでは39号車DENSO KOBELCO SARD LC500とトップ争いをし、ファイナルラップでガス欠。10位完走扱いで1ポイントを稼いだだけで、ほとんタイ戦と同じウエイトハンデで今回の富士500マイルに臨めることから、大本命といってもいい存在だ。


 そのauに続くかたちで、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-R、12号車カルソニック IMPUL GT-Rが優勝候補の一角をうかがう。第2戦富士で23号車MOTUL AUTECH GT-Rが優勝したように、GT-Rと富士の相性はよく、3号車と12号車は大きなチャンスとなる。


 一方、第2戦で大きなトラブルに見舞われてしまったのが、ヨコハマタイヤ陣営。3台ともにタイヤトラブルが発生してしまい、緊急ピットを余技なくされるなど3台とも残念な結果に終わってしまった。また、第2戦は予選日が濃雨の悪天候で走行できなかった経緯も大きく影響して、走行データが少ないホンダ陣営が大苦戦する結果になってしまったが、この第5戦でどのように巻き返すことができるのか、ホンダ系のチーム力が試されることになる。


 ヨコハマタイヤ勢、NSX陣営にはウエイトハンデが軽いクルマが多く、そのアドバンテージを長いレース距離で活かすことができれば、昨年の鈴鹿1000kmのEpson Modulo NSX-GTのように、圧勝する可能性もある。酷暑のなかで行われる初めてのスーパーGT富士500マイルレースは、とにかく見どころの多い内容になりそうだ。

富士と相性が良いGT-Rとミシュランタイヤ。CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは優勝候補の一角


関連記事(外部サイト)

AUTOSPORT web

「NSX」をもっと詳しく

タグ

「NSX」のニュース

「NSX」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ