惜敗のなでしこ。スウェーデンとの再戦から見えた成長と伸び代【女子W杯】

2023年8月12日(土)19時30分 FOOTBALL TRIBE

MF長谷川唯(左)MFエリン・ルベンソン(右)写真:Getty Images

なでしこジャパンことサッカー日本女子代表は8月11日、2023FIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会準々決勝でスウェーデン代表と対戦。最終スコア1-2で敗れ、準決勝進出を逃している。


2021年に行われた東京五輪と同じく、準々決勝でスウェーデン女子代表と相見えたなでしこジャパン。2年の時を経て成長した部分、そして来年のパリ五輪に向けて突き詰めるべき課題は何か。ここではスウェーデン代表との再戦を振り返りながら、この2点について解説したい。




日本女子代表vsスウェーデン女子代表、先発メンバー

日本女子代表vsスウェーデン女子代表:試合展開


前半32分、なでしこジャパンの陣地で得たフリーキックのこぼれ球をDFアマンダ・イレステットが押し込み、ゴールゲット。それまで膠着状態が続いていたが、スウェーデン代表がお得意のセットプレーで均衡を破った。


今大会で初めて相手に先制されたなでしこジャパンの池田太監督は、後半開始前にMF杉田妃和を下げ、MF遠藤純を投入。この交代を機に同代表は攻勢を強めたいところだったが、後半3分の相手コーナーキックからの混戦で、ペナルティエリア内にいたMF長野風花がハンドの反則をとられてしまう。これにより与えられたPKをスウェーデン代表MFフィリパ・アンイエルダールに物にされ、なでしこジャパンは苦境に陥った。


後半29分、途中出場のFW植木理子が敵陣ペナルティエリア内で相手FWマデレン・ヤノギーに倒される。この反則によって得たPKを植木自ら担当したが、シュートはクロスバーを直撃。同42分にMF清家貴子のクロスのこぼれ球をMF林穂之香が押し込んだものの、追撃のゴールが遅すぎた。




スウェーデン女子代表は、マイボール時に3バックを形成

2年前と同じだったスウェーデンの戦術


基本布陣[4-2-3-1]のスウェーデン代表は、マイボール時にDFヨンナ・アンデション(左サイドバック)が高い位置をとり、4バックの残り3人で3バックを形成していた。


両サイドバックのどちらかに高い位置をとらせ、4バックの残り3人で3バックを形成し直すこのスウェーデン代表の隊形変化は、2年前のなでしこジャパンとの対戦でも見られたもの。東京五輪準々決勝では、2トップのなでしこジャパン(基本布陣[4-4-2])に対し、スウェーデン代表が自陣で3対2の数的優位を作っていた。


2年前のなでしこジャパンは、この数的不利を解消しないまま無闇にハイプレスを仕掛けたため、スウェーデン代表の最終ラインからのパス回しを止めきれず。戦術面での準備不足が災いし、最終スコア1-3で敗れている。




日本女子代表 池田太監督 写真:Getty Images

同じ失敗を繰り返さなかったなでしこ


東京五輪での惨敗から一転、なでしこジャパンは今回のW杯で実現した再戦で、スウェーデン代表の変則的な3バックに惑わされなかった。


東京五輪後に就任した池田監督の指導により、守備戦術が磨かれたなでしこジャパンは闇雲なハイプレスを避け、[5-4-1]の布陣を基調とする自陣撤退でスウェーデン代表に応戦。自陣や中盤のスペースを埋め続けたことが、今回の善戦に繋がった。相手チームの隊形変化に即した守備をできるようになった点は、2年前からの成長として評価したい。


日本女子代表 MF長野風花 写真:Getty Images

なでしこの守備を支えたのは


この試合でなでしこジャパンの守備を支えたのは、MF長谷川唯と長野の2ボランチ。スウェーデン代表が最終ラインからパスを回そうとするやいなや、この2人が相手の2ボランチ(アンイエルダールとエリン・ルベンソンの両MF)を素早く捕捉。ボールを奪いきる場面こそ少なかったが、相手の2ボランチに前を向かせないための寄せは怠らなかった。


足下の技術やパスセンスの高さがクローズアップされがちな長谷川と長野だが、大会を通じてこの2人のカバーリングエリアは広く、守備面での貢献度も絶大。なでしこジャパンの2ボランチの両脇や背後を狙うMFコソバレ・アスラニ(トップ下)とMFフリドリナ・ロルフォ(左サイドハーフ)に手を焼く場面もあったが、この2人の奮闘により、スウェーデン代表のパスワークを外回りにすることは概ねできていた。


ボランチとしての先発機会もあった林とともに、長谷川と長野がなでしこジャパンのプレスの起点として機能していたと言って差し支えないだろう。




DF熊谷紗希(左)FWスティナ・ブラックステニウス(右)写真:Getty Images

スウェーデンに突かれた僅かな綻び


「スウェーデンはセットプレーが強みだと知っていたので、できるだけファウルをしないようにと思っていましたが、悔しいです」(日本サッカー協会公式ホームページより引用)


試合後に不必要なファウルを悔やんだのが、DF熊谷紗希。なでしこジャパンが喫した2失点はいずれもセットプレーからだったが、特に1失点目は防げたものだろう。


前半31分、熊谷が相手FWスティナ・ブラックステニウスを自陣で倒してしまい、この反則によるフリーキックを得点に結び付けられている。熊谷のファウルそのものよりも、同選手がそうせざるを得ない状況をチーム全体で作ってしまったのが問題だった。


前半31分のスウェーデン代表の攻撃シーンでは、なでしこジャパンの右サイドへ流れるロルフォに長谷川が釣り出され、中央ががら空きに。長野の帰陣も間に合わず、熊谷と2ボランチ(長谷川と長野)でブラックステニウスを挟み込む構図を作れなかった。


あの場面でこの構図を作れていれば、熊谷がブラックステニウスに対し、ファウルすれすれの接触を試みる必要性が無くなっただろう。もっと遡れば、タッチライン際でボールを受けたアンデションに対する、MF藤野あおばのプレスにももう少し鋭さが欲しかった。


来年のパリ五輪でメダルを獲得するためには、こうした僅かな守備の綻びをも改善しなければならない。東京五輪での惨敗から着実にレベルアップできているだけに、次はこの伸び代と向き合いたいところだ。

FOOTBALL TRIBE

「なでしこ」をもっと詳しく

「なでしこ」のニュース

「なでしこ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ