南米SCB投入予定の新世代車両規定『Audace SNG01』発表。500PS級の4気筒2.1Lターボを搭載

2023年8月17日(木)19時12分 AUTOSPORT web

 南アメリカ大陸最高峰SCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”の将来に向け、同国の「モータースポーツにおける新たな章が進行中」と謳われた新車両規定『Audace SNG01』の概要が発表された。


 ラテンアメリカの歴史の中で「これまでに考えられたもっとも現代的なレーシングカーを構成する」という車体には多くのハイライトが盛り込まれるなか、情報通信を担うクアルコム社製の『スナップドラゴン』による5G対応の広範な接続性が備わるほか、世界最大級の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミッタル社製の鋼管パイプフレームシャシーに、新開発の直列4気筒2.1リットルのターボエンジンが搭載される。


 今季2023年の第6戦として8月4〜6日にサンパウロ内陸部のアウトドローモ・ヴェロチッタで開催されたイベント現地では、来季以降シリーズ王者のルーベンス・バリチェロを筆頭に、フェリペ・マッサ、リカルド・ゾンタ、カカ・ブエノやダニエル・セラ、そしてネルソン・ピケJr.やトニー・カナーンらがドライブする最新の車両規定概要がアナウンスされた。


 各セグメントの大手企業数社の最先端技術を結集し、専用に研究開発および製造が進められた『Audace SNG01』は「接続性とデータキャプチャや管理における前例のない革新性と、パフォーマンスや安全性への重点的な開発」など、その他の高度な技術的特性に加えて「次の目的を達成するために作成されたレーシングカー用の新プロジェクト」だと宣言する。


 これにより、今季のような各セッションで25台以上のクルマが定期的に0.5秒以内にひしめく激戦を維持しながら、はるかに「高速で、より安定し、より安全で、さらに低コスト」のストックカーが具現化されたという。


「このクルマは我々の歴史の分岐点だ。当社の歴史の中でもっとも安全で、もっともパフォーマンスが高く、かつ技術的な車両を実現するべく、多くの研究と最新の要素が採用された。これはドライバーだけでなく、我々のファンにとってもさらに大きな感動をもたらすだろう」と語るのは、ストックカーのプロモーターであるヴィカーのCEOを務めるフェルナンド・ジュリアネッリ。


「現在(23年仕様)のクルマは約14年前に考案された。近年、ボディワークは進化を遂げているが、テクノロジーの面では少し行き詰まっていた。我々がカテゴリーを変革するプロセスを開始したとき、クルマはドライバーやチームとともに明らかにスターの要素と位置付けられる」と続けたジュリアネッリ。


「切り札は競争力であり、ほぼすべての車両が同じ秒内で順位を争うという主要な資産を失うことはできない。したがって、すべてのドライバーとチームに同一の条件を与えることができるよう100パーセントの品質管理が求められる」

現在のSCBには、王者ルーベンス・バリチェロを筆頭に、フェリペ・マッサ、リカルド・ゾンタ、ネルソン・ピケJr.やトニー・カナーンらが顔を揃える
前面の4.3インチLCDスクリーンと、すべての操作ボタンにRGBバックライトを備えるGrid Engineering製ステアリングも5G通信に対応する
シボレー陣営向けの直列4気筒2.1リッターのターボや、ドライバー用映像パネルモジュール、製作用プロトタイピング機器なども公開された


■可動翼を持つ“DRS”の新規導入も計画


 その車両設計と製造を手掛けるアウダーステック社は、前述のアルセロール・ミッタル社と共同開発したDP980R高張力スチール製の鋼管構造スペースフレームに、アルミニウム板と耐熱コーティングを施した耐火壁、衝撃吸収とエネルギー散逸のためのカーボンケブラー&アラミド製のサイドインパクト構造を備えた車体を構築。脚元ではAPレーシング製の前6POT/後4POTブレーキキャリパーと、4輪独立懸架のプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンにペンスキー・レーシング製ダンパーを採用する。


 さらにXトラック製P1529の6速シーケンシャルトランスミッションには、最高出力500PS/7600rpm、最大トルク580Nm/4000-6800rpmを想定する専用開発の直列4気筒2.1リットル・ターボエンジンが組み合わされる。


「我々がこのビジネスで行っているイノベーションのもうひとつのポイントは、アウダーステックがすべての車両を製造し、それらをチームに販売するのではなく“Ready to Race”のソリューションでリースすることだ。チームは開発や改良に関与しない。各チームごとに実戦参加しようとする試みにおいて、クルマはより標準化され制御されている」と続けたジュリアネッリCEO。


 ホイールベースは2750mmで重量は1100kgと、パワーウエイトレシオで2kg/PS台を目指す車体には、現在シリーズに参戦するシボレーとトヨタのボディが架装され、空力性能とその特性は開幕前の各種計測で定義し、ホモロゲーション登録される予定に。さらにカーボンファイバー製可動翼を持つ“DRS”の新規導入も計画されている。


「目新しさとして、プッシュ・トゥ・パスに加えて『モバイル・ウイング』が追加される。ドライバーとチームの側から見ると、それはパフォーマンスを意味するのは明らかだ。プロモーターとファンの側にとって、それはレースの興奮がさらに高まることも意味する」


 そしてさまざまな車両システムに膨大なセンシング能力を提供するクアルコム製のスナップドラゴン5Gは、シャシー前面と背面に備えた統合ビューカメラによる映像をコクピット内に映し出すことでドライバーをサポートし、内部360°カメラはアプリ等でファンの観戦ツールとしてもリアルタイムで利用可能になるという。


 現代スマートフォンを支えるスナップドラゴンのシステムを供給するクアルコムのラテンアメリカ代表ルイス・トニスも「私たちは品質、パフォーマンス、経験を大切にしてきました。私たちのDNAにはパフォーマンスとテクノロジーをもたらすことが組み込まれています。この新しいクルマに5G接続とそのセンシングを導入し、高解像度の4Kと将来的には8Kに接続された“T-カメラ”を備えた最初のレーシングカーの1台となるでしょう」と期待を寄せる。


 こうした複数企業の参画に際し、前出のジュリアネッリCEOも以下のように新規定車両への手応えを口にする。


「彼らはストックカーに革命を起こすためにやって来て、それによってブラジルのモータースポーツの他の選手たちに新たな目標をもたらす。すでに誰もが模範としていたストックが、今度は基準を引き上げ、モータースポーツの未来を示すんだ。我々とアルセロール・ミッタルやクアルコムなどのパートナーは、全員がここまでに達成していることを非常に誇りに思っているよ」

2020年からはシボレーに加えてTOYOTYA GAZOO Racing Brasilが参入し、2メーカー対決となっている
空力性能とその特性は開幕前の各種計測で定義し、ホモロゲーション登録される予定に。さらにカーボンファイバー製可動翼を持つ”DRS”の導入も計画されている
旧来の鋼管フレームに5.7リッターのV8を搭載する現在も、SNSファン投票を反映したプッシュ・トゥ・パス機構”FAN PUSH”を実装するなど先進性を打ち出してきた

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