ヤマハ中須賀「怪我を利用して違う走りを」。もてぎ戦で逆境のなか見せた驚異の適応能力

2018年8月24日(金)22時38分 AUTOSPORT web

 鈴鹿8時間耐久ロードレースでの負傷の影響が残るなか、全日本ロードレース選手権第6戦に挑んだ中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)。万全とは言えない状況のなか、チームメイトの野左根航汰とTeam HRCの高橋巧との三つどもえ戦を制して優勝を飾った。


■右肩の痛みで3周のアタックが限界だった予選


 7月28日に行われた鈴鹿8耐のフリー走行中、中須賀はペースの遅いマシンに引っかり転倒。その際に右肩を負傷し、決勝レースへ出場することができなかった。鈴鹿8耐から約3週間のインターバルで行われた全日本ロードJSB1000クラスの第6戦も、中須賀は怪我の影響が残るなかでの戦いとなった。


 迎えた予選、中須賀は1分48秒724を記録して2番グリッドを獲得。1分48秒564でポールポジションを獲得した野左根航汰とはわずかコンマ2秒差だった。


 2番グリッドを獲得した中須賀だが、アタック中は右肩の負傷の影響が大きく、予選Q2では3周目以降はアタックすることが難しい状況にあったという。


「自分の状況を踏まえると、フロントロウに並べられたらいいな思っていたし、正直もっとダメだと考えていました」と中須賀。


「予選は3周集中して走りきった感じです。4周目もアタックしたかったけど、右肩が痛くて力が入らない状態だったので、残りの2、3分は流すしかありませんでした」


 そんな予選中、中須賀は力が入りずらいことで速くなったセクションもあったとも語る。


「(負傷の影響で)右コーナー全部が辛くなっていますが、怪我の功名か、いつもとは違う場所で速く走れたりしています。僕はブレーキングが得意なんですけど、ブレーキをかけすぎて遅かったコーナーがスムーズに走れていて、速いセクションがあります。特にファーストアンダーブリッジからS字カーブへの入りがうまく乗れているのかなと」


「決勝では、そこでしっかり体を休めて、他のセクションで攻めていくという形になってくると思います。残り5周か3周でスパートをかけていきたいですね。怪我を利用してまた違う走りを見つけられたらと思います」


■悪コンディションで見せた中須賀の適応能力


 迎えた決勝日。朝のウォームアップ走行ではライバルの高橋巧が1分48秒820でトップに。野左根が2番手で1分48秒900と上位2台が1分48秒台に入れていた。一方、中須賀は3番手につけるも、1分49秒176で48秒台に入れられず、決勝レースは高橋巧と野左根の一騎打ちになるのではないかとの見方が強かった。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)


 しかし、決勝レースで中須賀は、スタートこそ出遅れて4番手に後退するが、2周目には2番手に浮上し、高橋を追う。終盤に入ると高橋、野左根とバトルを展開。何度もポジションを入れ替えた後、最後は競り勝ってトップチェッカー。怪我が完治していないなか、逆転で今季7勝目を挙げるという驚きの結果を残した。


 決勝レースを終えた中須賀は「肩が痛いのは嘘じゃないですよ。結果だけ見たら嘘ついているんじゃないかって思ったりするでしょうけど、本当に痛いんです。だけどそこを見せたら負けなので」と話し、次のように戦いを振り返る。

もてぎ戦で三つ巴のバトルを制した中須賀克行


「前にいた巧選手や野左根選手を見ると、トップに立ってもペースが上げられていなかったかのでみんなきついんだなと感じました。自分の肩がどれだけもつか心配でしたが、こうなったら前に出てふたりを抑え、レースをかき回してやろうと思いました」


「乗りながらどこを基点に体をおさえれば肩が楽になるのか、いろいろ試していました」


「自分が無駄にブレーキをかけて(速く)乗れていないと思った部分が、巧選手が前を走っていることによってリズムが少しつかめましたね。自分が理想とするブレーキングをしないようにしたら、巧選手がペースを上げたときもなんとかついていくことができた」

高橋巧が前にいたことで走りのリズムがつかめたと中須賀は語る


「10周目以降、タイヤのグリップが少しずつ落ちてきて、肩に負担がかかってきて非常に辛かったです。自分は今回、(いつもよりも)早く仕掛けました。自分自身に余力がなかったので、前に出て通せんぼしてやろうと思ったら、思ったよりも(高橋巧と野左根が)仕掛けてこなかったのもラッキーでしたね」


 決勝日は日差しが強かったこともあり、レースが始まる12時15分には路面温度が40度近くまで上昇し、ウォームアップ走行の時よりもコンディションが大きく変化した。各ライダーも路面温度の上昇を予想していたが、コンディションの変化は想定以上だったようだ。


 中須賀もコンディションの変化については「条件的には日曜日が一番路面温度が上がった雰囲気があります。(タイヤの)エッジのグリップフィーリングも違いました」と語る。


「その時のコンディションにあった走り方ができたライダーが前に行けると思っていました。そういった状況のなかで自分が前にいけたことは嬉しかったです」

頭をマシンに埋めてチームの基へと戻る中須賀克行
ヘルメットのバイザーを上げて涙をぬぐう姿も


 次戦はオートポリスでの2レース制。もてぎ戦で肩を酷使したことにより、負傷の影響が長引く可能性もある。最後にオートポリスまでに右肩は回復するか聞くと中須賀はこう答えた。


「オートポリスは、右コーナーも多いレイアウトですし、曲がり込むコーナーが多いのでもう少し負担はかかると思います。だけど、まだ本戦まで2週間ありますし、右肩も回復していると思うので、万全な体制でオートポリスに挑みたいです」


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