前半戦は完璧なレース運びだったが......ARTAの3度のドライブスルーの混乱と2つのペナルティ【第5戦GT500決勝】

2021年9月12日(日)20時30分 AUTOSPORT web

 気温30度に迫る灼熱のコンディションでの開催となった2021年のスーパーGT第5戦。スポーツランドSUGOでは2年ぶりの開催となったのだが、決勝レースは大荒れの展開に。なかでも、GT500のポールポジションからスタートしたARTA NSX-GTにとっては、まさに魔物に取り憑かれたようなレース展開となってしまった。


 8号車ARTA NSX-GTは野尻智紀がスタートドライバーを担当し、序盤は順調に後続との差を広げ、一時は20秒以上のギャップを築いた。しかし、その辺りからタイヤのピックアップに悩まされるようになり、一番良い時と比べるとペースが伸び悩む形となったが、2番手以下に対して10秒以上のマージンをキープして31周目にピットイン。福住仁嶺に交代した。


 この時のピットインで外された左フロントタイヤが、マシンのフリックボックス部分に立てかかる状態になったまま、新しいタイヤを装着してしまった。レギュレーションでは外したタイヤは平置きしなければならないため、これがピット作業違反の対象となった。


 ただ、この件についてモニター上で通達されるまでは、チームも状況を理解できていなかったという。


「左のフロントタイヤが、ちゃんと平置きされずに次のタイヤをつけてしまったことが作業違反だったのですが、ピット側にいたオフィシャルからは何も指摘が入りませんでした。そうしたら急にドライブスルー・ペナルティがモニターに出たので、オフィシャルに確認をしました」


「本来なら最初にオフィシャルからの指摘があるのですが、(作業違反の瞬間が)テレビで映っていて、みんな見ていた状態でした。あれは確かにダメなので、あのペナルティはしょうがないと思います」


 そう語るのは8号車担当のライアン・ディングルエンジニア。8号車はすぐにはドライブスルーを行わずに、オフィシャルに確認をとっている最中にWedsSport ADVAN GR Supraのマシンが炎上し、セーフティカー(SC)が導入された。


 セーフティカー導入中は、たとえピットレーン入り口がオープンになった状態であってもペナルティの消化はできないため、レース再開後にピットインすることになるのだが、そのドライブスルーを行うタイミングで、混乱が始まってしまった。


「SCが入った時、レースディレクターから『SC中のピットインはペナルティ消化にカウントされない』と言われていましたが、ピットレーンがオープンになった時に『これで入っていいんじゃないか?』という……チームサイドの判断ミスがありました」


「このピットインはペナルティとしてカウントされないことが分かったので、SC明けでもう1回入りました」


 これにより、福住はセーフティカーが明けたタイミング(2回目のドライブスルー)と、さらにチーム内のコミュニケーションミスが重なって翌周にも続けてピットレーンをスルーした(3回目)。ライアンエンジニアによると、レースディレクターからの無線を誤って理解してしまったことで、混乱が生じていたようだ。


「僕がレースディレクターからの無線を理解できていなくて、余計に1回ドライブスルーしていました。細かい部分は、もう一度確認します」


 一方、マシンをドライブしていた福住は、このように状況を語った。


「最初にドライブスルー・ペナルティが出たのを聞いた時は『もったいないな』と思ったんですけど、後ろとのギャップもまだまだあると思っていたので、すぐにドライブスルーを消化すれば、なんとかポイント圏内で終わるチャンスはあると、けっこう前向きに考えていました」


「ただ、そのタイミングで『ちょっと待って』という無線が来ました。僕自身もドライブスルーは数周以内に入らないと失格になるということは分かっていたので、それも無線で聞いたのですけど『まだステイアウト』と言われました。そのタイミングでセーフティカーが入りました」


「あの時点で、ドライブスルーは確定していたので、それを消化しなきゃいけないんですけど、SC中に『ピットに入って!』と急に言われて『本当にいいの?』と思いました」


 そういった混乱が生じていたなかで、チームの指示に従ってピットに入った福住だったが、そこで1回目のドライブスルーの際、ピット出口の赤信号を無視してしまっていた。そのため、3回目のドライブスルーを終えた残り15周を切ったところでペナルティストップ10秒が課されてしまった。


「基本的に、ドライブスルー・ペナルティを消化するのは普通にレースをしている状態中なので、信号を見ることってあまりないんです。僕もそこはちゃんと見ていなかったです。その後に『ごめん、今のタイミングで入っちゃダメだから、もう1回入って!』と言われました。ちょうどSC明けのタイミングで入って、そこではちゃんと信号を見て止まりましたね」


 この10秒ストップのペナルティを消化した時には、8号車は周回遅れとなってしまっていた。


「その後も諦めないで最後まで走りましたが、周回遅れなので他のマシンに譲らないといけなかった。そうするとピックアップがついてペースが上がらなくなってしまうなど、辛い状況のなかでレースをしていました」


 結果的に、他車のリタイア等もあり10位で1ポイントは獲得できたものの、レース後のARTAピットに当然笑顔はなく、前半スティントを担当した野尻智紀も険しい表情をみせていた。


「恥ずかしい話ですけど、これが今の僕たちだと思います。本当の意味でチャンピオンまで争えるようなところまで持っていく必要があるなと強く感じました」


「何をしたら、このチームが本当に良くなるのか、僕だけの考え方だけじゃなくて、チームに合ったやり方もあると思います。そういったところも考えながら、やれればと思います」


「レースで辛い思いをしているスタッフがいるでしょうから、そこは僕がケアをしないといけないし、今日のレースに対しては僕しかケアできないと思うので、そこはやっていきたいなと思います」


「応援してくださるみなさんに申し訳ない気持ちです。僕自身も乗るだけじゃないところでもっともっと頑張っていきたいなと思います」


 福住もレースを終えて、ピットに戻ってきた直後は憤りをあらわにしている様子だったが、もう一度チーム全体で立て直していかなければいけないと、前を向こうとしていた。


「後半スティントでは後ろのペースの方が良かったので、勝てたかどうか分からなかったですけど、ちゃんとやっていれば貴重なポイントはとれたと思います」


「今回の失敗というか、問題に対して、みんなが自信を失わないようにしないといけません。また次もレースがやってくるので、その中でみんながきちんとしたパフォーマンスを出せるように、僕たちドライバーも努力していかないといけないと思います」


「その事が起きた時は腹立たしい気持ちもありますけど、レースというのはチーム全員でやっていることです。みんなで気持ちを強く持って、オートポリスに行きたいです」

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