レッドブル&HRC密着:RB20の問題は判明も、改善策が見つからず。初日は「予想通り難しい1日」とフェルスタッペン
2024年9月21日(土)11時33分 AUTOSPORT web
「簡単な週末にはならないだろうということはわかっている。僕たちのマシンはバンピーな路面や縁石に弱点を抱えていて、シンガポールでは毎年苦しめられているからだ」
これはシンガポールGPの金曜日に行われた国際自動車連盟(FIA)の記者会見でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が語ったシンガポールGPへ向けた展望だった。
強気なフェルスタッペンにしては珍しくネガティブなコメントを行ったのには理由がある。じつは今年24戦あるグランプリのなかで、フェルスタッペンが唯一、優勝したことがないグランプリがシンガポールGPなのである。ただし、チャンスがなかったわけではない。2022年はポールポジションを獲れるはずだったが、1回目のアタックのセクター3で渋滞に引っかかりそうになったところで中止。同じタイヤで2回目のアタックを行ったものの、燃料が足りずに予選8番手に終わり、レースは7位でフィニッシュした。チームメイトのセルジオ・ペレスが予選2番手から優勝していたことを考えると、予選でまともにアタックできていれば、優勝していても不思議はない。
ただし、22戦21勝した昨年でさえ、シンガポールGPでレッドブルが勝てなかったことを考えると、マリーナベイ・ストリート・サーキットとレッドブルのマシンの相性がよくないことは確かだ。
なぜ、レッドブルのマシンがシンガポールで遅いのか? あるチーム関係者は「起きている現象はわかっているが、それを解決する方法が見つかっていない」と言う。起きている現象とは、車高を低く設定し、かつ足回りが硬いためにバンプや縁石で車体の底が路面に激しく打ち付けられ、ダウンフォースが不安定な状態になるとともに、メカニカルグリップも失うことだ。
ならば、車高を高くして足回りも軟らかくすればいいのではないかと思うところが、それではレッドブルが持っているアドバンテージも同時に失われ、タイムが出なくなってしまう。アドバンテージを保ちつつ、弱点を補うにはパフォーマンスが上がらなかった空力パーツをアップデートするしかないのだが、どうアップデートしていいかという答えが導き出せていないのである。
現在のレッドブルがいかに苦しい状況にあるのかは、今回シンガポールGPでお披露目するはずだったファンから公募された特別カラーリングが見送られたことでもわかる。
現在のF1マシンの特別カラーリングは塗装ではなく、特殊なフィルムを貼る方法で行われている。これは塗料よりもフィルムのほうが軽いからだが、それでも約1kgの増量となる。一般的にF1マシンの重量感度は10kgで1周コンマ3秒と言われているので、1kgだと1周あたり0.03秒程度となる。それでも、レッドブルはその0.03秒のために、チームのマーケティングキャンペーンを断念するという決断を下した。おそらく、技術陣たちはフィルム以外のパーツの軽量化も一斉に行うことで、マーケティング部門を納得させたに違いない。
それは裏を返せば、軽量化する以外に、いま特効薬となるような改善策が見つかっていないとも言える。
シンガポールGP初日のフリー走行で15番手に終わったフェルスタッペンは、こう語る。
「予想していたように今日は難しい1日だった。タイヤのグリップが思うように得られず、いつも以上に滑っているようだった。特に2回目のフリー走行はそれが顕著で、あまりいいセッションではなかった。路面の凹凸や縁石の問題というよりも、タイヤの使い方自体に問題があるように思う。データを分析し、マシンとタイヤのパフォーマンスを最適化して予選までに改善できるよう、何ができるかを見極める必要がある」
その言葉は、昨年のチャンピオンとしてはもちろん、今年ドライバーズ選手権でポイントリーダーとも思えないほど、力強さが感じられなかった。
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