インテルを封じた“モウリーニョ・ローマ”の鉄壁守備とは【セリエA試合分析】

2022年10月3日(月)20時0分 FOOTBALL TRIBE

フェデリコ・ディマルコ(左)パウロ・ディバラ(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第8節が10月2日(日本時間)に行われ、インテルとローマが対戦。


前半30分に、インテルのMFニコロ・バレッラのスルーパスに反応したフェデリコ・ディマルコが先制ゴールを挙げたものの、同39分にはローマのFWパウロ・ディバラがレオナルド・スピナッツォーラのクロスにボレーシュートで合わせ、同点に。後半30分にはロレンツォ・ペッレグリーニのフリーキックからクリス・スモーリングがヘディングで得点したことで、ローマが2-1で勝利した。


インテルを相手に、リーグ戦では2017年2月以来となる白星を飾ったローマ。いかにして勝機を見出したのか。ここでは、この点について分析する。




セリエA第8節、インテルVSローマのスターティングメンバー

インテルのビルドアップを封殺


ローマは[5-2-3]の守備隊形で、基本布陣[3-1-4-2]のインテルのビルドアップに対抗。フィールドを縦に5分割する5レーン理論における中央の3レーンを、ディバラ、ペッレグリーニ、ニコロ・ザニオーロの3トップ、及びブライアン・クリスタンテとネマニャ・マティッチの2ボランチがまめに埋めていた。


インテルの最終ラインからアンカーのクリスティアン・アスラニへのパスコースをペッレグリーニが塞いだほか、ミラン・シュクリニアルとアレッサンドロ・バストーニの攻め上がりも、ディバラやザニオーロの監視によって封じられる形に。特に前半はインテルのビルドアップのテンポが上がらなかった。


インテル DFフェデリコ・ディマルコ 写真:Getty Images

インテルの先制場面では、センターバックのジャンルカ・マンチーニとスモーリングがラウタロ・マルティネスやエディン・ジェコの動き出しに釣られ、これにより生まれたスペースをディマルコに突かれたものの、ローマは前述の守備を継続。前半39分のディバラの同点ゴールは、インテルのMFハカン・チャルハノールが右サイドのバレッラに送ったロングパスを、左ウイングバックのスピナッツォーラが奪ったことでもたらされた。ローマとしては狙い通りのカウンターだっただろう。


ローマ FWパウロ・ディバラ 写真:Getty Images

[5-2-3]の利点を活かしたローマ


[5-2-3]のメリットは、各選手の守るべきゾーンが明確なこと。大外のレーンを両ウイングバックがケアし、3トップと3センターバックで中央の3レーンを埋めれば、守備が安定しやすい。サイドの守備も受け持つ2ボランチは重労働を強いられるが、ローマの場合はスタミナが豊富で、対人守備に長けるマティッチとクリスタンテがコンビを組んだため、堅固な守備組織が完成した。


[5-2-3]とよく似た布陣に[3-4-2-1]があるが、後者は自陣撤退時に2シャドーの選手がサイドへ降りる[5-4-1]の状態に陥りやすく、ボールを奪えてもカウンターに移りづらい。今節のローマは時折ボールサイドに人が寄っていたものの、ディバラ、ペッレグリーニ、ザニオーロの3人をなるべく前線や中央の3レーンに残し、奪ったボールを素早く彼らに預けようという意図も窺えた。


ローマ アシスタントコーチのサルバトーレ・フォーティ氏 写真:Getty Images

前節のアタランタ戦で受けた退席処分により、インテル戦でのベンチ入りが禁じられたジョゼ・モウリーニョ監督。相手の3バックとアンカーを起点とするビルドアップを封殺し、奪ったボールを確実に前線に届けるためのプランを、今回のビッグマッチに向けて練れていた。欧州屈指の名将と、ベンチ入り禁止の同監督に代わり当日指揮を執ったアシスタントコーチのサルバトーレ・フォーティ氏の、緻密なプランニングによってもたらされた勝利とも言えるだろう。


ローマ ジョゼ・モウリーニョ監督 写真:Getty Images

堅守速攻だけではないモウリーニョの強み


モウリーニョ監督の真骨頂は、どんな攻め方や守り方もでき、あらゆる相手に対して接戦に持ち込めるチームを作ること。2004/05シーズン以降に率いたチェルシー、インテル、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムでは超守備的なアプローチで臨む試合も少なくなかったが、堅守速攻に特化したチーム作りをしているわけではない。


特に2003/04シーズンまで指揮を執ったFCポルトや、現在率いているローマでは自軍のボールポゼッションで試合を落ち着かせ、自陣後方からのパスワークで相手のプレスを丁寧に掻い潜ることにも注力している。今節のインテル戦でも、前線に上がってハイプレスに加わるインサイドハーフのバレッラの背後にペッレグリーニが降り、ここを起点にビルドアップを行おうとする場面もあった。


インテル MFハカン・チャルハノール 写真:Getty Images

ローマが自陣でパスを回した前半33分50秒以降の場面でも、ハイプレスに加わったチャルハノールの背後にディバラが侵入し、スモーリングからの縦パスをレシーブ。その後ボールはクリスタンテ、スピナッツォーラの順で繋がっている。インテルの右ウイングバック、デンゼル・ドゥンフリースとの1対1にスピナッツォーラが敗れてしまったが、相手のハイプレスを掻い潜ることはできており、ローマのビルドアップの質の高さが窺える場面だった。


昨季序盤に採用していた[4-2-3-1]、中盤戦以降に採り入れた[5-3-2]([3-1-4-2])や今節の[5-2-3]など、モウリーニョ監督のもとで布陣や戦い方の幅を広げているローマ。来季のUEFAチャンピオンズリーグの出場権獲得に向け、視界は良好だ。

FOOTBALL TRIBE

「インテル」をもっと詳しく

「インテル」のニュース

「インテル」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ