「レースで競えるために何でもサポートするよ!」ありがたいけどなんだか悔しい。DTMチャンピオン3人のスーパーGTの印象

2019年10月5日(土)3時14分 AUTOSPORT web

 約7年の歳月を費やして昨年成立したスーパーGTとDTMの共通レギュレーション『クラス1テクニカルレギュレーション』。スーパーGTでは2020年からクラス1規定を順守したマシンが導入されるが、それに先駆けてスーパーGTとDTMの記念すべき最初のレースがDTMの今季最終戦第9戦、ドイツのホッケンハイム・サーキットで開催される。練習走行が行われた金曜日には、3名のDTMチャンピオン経験者がプレスカンファレンスに登場。GT500マシンのパフォーマンスなどについて語った。


 まずは前戦のDTM第8戦ニュルブルクリンクで今回の最終戦を残してチャンピオンを決めたレネ・ラスト(アウディRS5 DTM/アウディ・スポーツ・チーム・ロズベルグ)。ホッケンハイム金曜日の走りはじめのウエット走行は、慣れ親しんでいるDTMのトップドライバーでも難しいようだ。


「今年のF1(第11戦ドイツGPの決勝のウエット)を観ても分かるように、ここはレコードラインを外れるとすごく滑りやすいサーキットだから、ウエットだった午前中のフリープラクティスはスーパースリッピーなんだ。まるで氷の上を走っているようで、(滑り出したら)マシンのコントロールは不可能に近いよ。でも、レコードライン上にいる限りは問題ない」


「前戦のニュルブルクリンクで2度目のタイトルを決めることができたから、今週末は(DTMで)初めてプレッシャーのない状況でレースに出られる。チャンピオンシップを考えずにサイド・バイ・サイドのバトルを楽しんで、日本から来た『友人たち』といいレースをしたいね」と、レネ・ラスト


「まだスーパーGTのドライバーたちとは話せていないけど、必要なサポートは何でもしたいと思っている。(ハンコックの)レインタイヤはまったく経験がないわけだから、レースをコンペティティブなものにするためにも、タイヤの内圧など、情報はすべて提供したい。秘密は何もないよ」と、日本人プレスから見たら余裕が伺えるさすがのコメント。ありがたいコメントだけど、なんだか悔しい。


「ポールポジション争いは難しいだろうけど、明日はもっと上に来るだろう。少なくとも、今日よりもギャップは少なくなると思う。11月に僕たちが日本に行った時は、同じように彼らのサポートがあるとありがたいね。富士(スピードウェイ)では、DRSを使って300km/hのトップスピードで走りたい!(現実的にはスーパーGTの規定で開催されるため使用不可)。日本にも行ったことはないから、すごく楽しみにしているよ。できるだけ楽しんで、いい経験を積みたい」と、今年のチャンピオンは日本勢の巻き返しと11月の交流戦についても触れた。


 お次は2014年と2016年にDTMチャンピオンとなった、マルコ・ウイットマン(BMW M4 DTM/BMWチームRMG)。


「今回はスーパーGTから3台のマシン、5人のドライバーが来ているけど『クール!』だね。僕たち全員がずっと夢に見ていたことだからね。ついに、一緒にレースができる。富士でのレースも含め、ふたつのシリーズの将来に向けて、とてもいい方向に進んでいると思う」


「彼らにとっては、ドライでもウエットでもタイヤへの対応が一番の課題だろう。我々は同じコンパウンドのタイヤで3シーズンレースをしてきた。一方、スーパーGT勢はハンコックタイヤで初めてのウエットセッションだから、まずはタイヤを理解しているところだろう。彼らがどこまでタイヤに合わせてくるか。いいレースができることを望んでいるよ」と、大人のコメント。

金曜の2度のセッションでトップタイムをマークしたBMW勢。FP2はウイットマンが首位


■DTMチャンピオンたちが口を揃えて離す初めてのタイヤへの難しさ「シンプルではないから難しいだろうね」


「(ホッケンハイムで行われた)今年の開幕戦では優勝したから、最終戦も勝って終われればいいね。この週末はウエットコンディションになるだろうから、BMWにはチャンスがあると思う。今シーズン、特に後半に入ってから苦労したから、表彰台か、できれば優勝で締めくくりたいと思っている。僕たちのマシンはウエットで重要なマシンバランスが良いから、トリッキーなコンディションではチャンスがあるよ」と、その言葉どおりに、午後のセッションではトップタイムをマークして、今週末の本命の1台であることを印象づけた。


 最後はジェンソン・バトンとも親しく、F1フォース・インディアで日本のファンにも馴染みのなるポール・ディ・レスタ(アストンマーティン・バンテージDTM/Rモータースポーツ)。2010年にはDTMでもタイトルを獲得している。


「(デビューシーズンのアストンマーティンも)経験を積んでチームの戦略や動きがかなり改善された。各ラウンドの走り始めはアウディとBMWとの間に大きなタイム差があったが、シーズンが進むにつれて差を詰めている。この週末は生産的な仕事をして、来シーズンにつなげたいと思う」とディ・レスタ。日本に馴染みのあるディ・レスタだが、残念ながらアストンマーティンは11月の富士での交流戦を欠場することになった。


「日本のマニュファクチャラーとスーパーGTとのコラボにはずっと期待していた。何年もの話し合いの末に、やっと交流戦が実現したわけだから、アストンマーティンも日本で走ることを希望していた。でも、僕たちはアウディやBMWのように自動車メーカーが直接携わっているプロジェクトとは違うので、規模を考えるといろいろな制約があって……。まず我々がやるべきは、冬の間にマシンの開発を進めることだという判断を下した」と、苦しい事情を説明するディ・レスタ。


「今週末に走るスーパーGTのマシンは、主に空力面で数年前のDTMのように開発の幅が与えられている。我々が考えるべきことは、お客さんに喜ばれるエンターテイメント、ショーを見せることだから、この週末を通して(異なるマシンの)パフォーマンスをいかにバランスさせるかを全員が学ばなくてはならないと思う」


「カギとなるのはタイヤだろう。日本でハンコックタイヤのテストをしたそうだけど、短時間ですべてわかるほどシンプルではないから、温度や内圧の管理が難しいだろうね」と、現実的な問題点を指摘したディ・レスタ。


 実際、日本側のドライバ−、チームからも経験のないハンコックのドライ、そしてウエットタイヤに頭を悩ますコメントを聞いており、その習熟が今週末の大きな焦点となることは間違いないが、なんとかDTMのチャンピオンたちだけでなく、DTMドライバー、そしてチームを驚かすような活躍でスーパーGTの健在ぶりをアピールして、彼らを慌てさせるようなコメントをなんとか言わせてほしい。

金曜1回目のセッションでクラッシュしてしまったLEXUS TEAM KeePer TOM’S。2回目はカーボン地のボンネットで走行


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