“インザーギ・インテル”に差し込んだ光明。バルサ封殺の要因は【CL試合分析】

2022年10月5日(水)21時0分 FOOTBALL TRIBE

フェデリコ・ディマルコ(左)ロベルト・レバンドフスキ(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第3節が10月5日(日本時間)に行われ、シモーネ・インザーギ監督率いるインテルと、シャビ・エルナンデス監督下のバルセロナが対戦。


前半アディショナルタイムにインテルが自陣後方からのパスワークでバルセロナのハイプレスをいなすと、ラウタロ・マルティネスのシュートのこぼれ球をフェデリコ・ディマルコが拾う。同選手のパスを受けたハカン・チャルハノールがペナルティアークの後方から右足でシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。これが決勝点となり、インテルが1-0で勝利している。


バルセロナにボールを保持される時間が長かったなか、数少ない決定機を物にし、勝ち点3を得たインテル。バルセロナの攻撃をいかに封じたのか。まずはこの点から分析する。




インテルVSバルセロナのスターティングメンバー

バルセロナ封じに貢献したのは


基本布陣[4-1-2-3]のバルセロナは、マイボール時に左サイドバックのマルコス・アロンソが敵陣に上がり、最終ラインが右からセルジ・ロベルト、アンドレアス・クリステンセン、エリック・ガルシアの3バックに変形。中盤はセルヒオ ・ブスケッツとペドリの2ボランチで、前線は右からウスマン・デンベレ、ガビ、ロベルト・レバンドフスキ、ハフィーニャ、アロンソの5人に。[3-2-5]([3-2-4-1])への隊形変化を行っていた。


バルセロナのマイボール時の隊形変化

対するインテルは、ディマルコとマッテオ・ダルミアンの両ウイングバックが最終ラインに降り、[5-3-2]の守備隊形で応戦。自陣への撤退守備でバルセロナの攻撃を受け止めた。


インテルの守備が安定した要因は、左右のインサイドハーフ、ニコロ・バレッラとヘンリク・ムヒタリアンの巧みなチェイシング。特にバレッラは対面のガルシアやペドリにボールが渡るやいなや、自身の背後にポジションをとるハフィーニャへのパスコースを塞ぎながらチェイシング。猪突猛進なアプローチではなく、バルセロナにハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、ペナルティエリアの両脇を含む左右の内側のレーン)を使わせないような守備で自軍に貢献していた。


バレッラと同じく、ムヒタリアンも自身の背後に立っているガビへのパスコースを塞ぎながら、主にS・ロベルトへアプローチ。こちらもハーフスペースを守り続けた。


3センターバックの両脇を務めたミラン・シュクリニアルとアレッサンドロ・バストーニも、左右のハーフスペースをケア。自身の前に立っているバレッラやムヒタリアンとのマークの受け渡しのタイミングも良好で、ハフィーニャやガビに付け入る隙を与えなかった。


インテル DFフェデリコ・ディマルコ 写真:Getty Images

バルセロナが[4-1-2-3]の布陣のままボールを保持し始めた後半以降も、インテルは[5-3-2]の守備隊形を崩さずに、大外のレーンや左右のハーフスペース、及び中央のレーンを満遍なく封鎖。途中出場のFWエディン・ジェコを中盤に組み込んだ[5-4-1]の布陣に最終的にシフトし、逃げ切りに成功している。相手の基本布陣やプレスのかけ方に応じて陣形を変え、マークのずれを作りながらビルドアップを行うバルセロナに対し、闇雲にハイプレスをかけなかったことが今回の勝利に繋がったと言えるだろう。今季のセリエAで既に4敗。苦境に陥っているシモーネ・インザーギ監督のゲームプランが、この試合では功を奏した。


インテル シモーネ・インザーギ監督 写真:Getty Images

“インザーギ・インテル”らしさが表れた決勝ゴール


自陣後方でのパスワークで相手選手を釣り出し、これにより生まれる中盤のスペースを使うことに長けているインテル。これはインザーギ監督のもとで同クラブが磨き上げてきたもので、今回のバルセロナ戦でも実を結んだ。


前述のチャルハノールのゴールは、インテルのビルドアップが起点となっている。前半アディショナルタイムにバストーニが自陣ペナルティエリア左角でボールを受けると、同選手にムヒタリアンがブスケッツを引き連れたうえで接近。ブスケッツはムヒタリアンからのボール奪取を目論み、猛然とアプローチしたものの、ここにバストーニからのパスは来なかった。


バストーニはムヒタリアンを囮にし、その奥にいたホアキン・コレアに浮き球を送る。その後左サイドでボールを受けたディマルコからダルミアンへのサイドチェンジのパスが繋がったことで、インテルの速攻が始まっている。バルセロナのハイプレスを逆手に取った良いビルドアップだった。


インテル MFハカン・チャルハノール 写真:Getty Images

通常、カウンターの起点は相手からボールを奪った瞬間だが、自陣後方でパスを回しながら相手選手を誘い出し、この瞬間に前線へロングパスやスルーパスを送ることで速攻を成立させるチームが増えている。“擬似カウンター”と呼ばれるこの戦法は今やサッカー界のトレンドとなっており、インザーギ監督擁するインテルがまさに典型例だ。


今節の勝利により、インテルは同大会グループCの2位に浮上。決勝ラウンド進出に向け光明が差し込んでいる。バルセロナの猛攻を凌いだだけでなく、十八番の擬似カウンターで得点を奪えたことは、不振に喘いでいた同クラブの面々にとって自信に繋がるだろう。“インザーギ・インテル”の復調に期待したい。

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