ひと足早く、仁義なき戦い勃発か……スーパーGT第7戦タイの見どころ厳選2点

2017年10月6日(金)20時23分 AUTOSPORT web

 今シーズンのスーパーGTも、いよいよあと2戦。この週末にタイのブリーラムで開催される今回のタイ戦はさまざまな意味で、いつもと環境が異なる開催になる。


 タイの国内では昨年10月13日に死去したプミポン前国王の服喪期間が今月10月27日までとなっており、10月25日〜29日には葬儀が行われるため、国全体が追悼モード。


 10月13日からは政府機関、国営企業などが半期を掲げる予定で、テレビやラジオ、新聞などのメディアや娯楽施設ではPRを自粛し、インターネットではサイトのデザインをモノクロにしたち、テレビはドラマなどの娯楽番組は放送を控えたり、他の番組でも色彩を40%落として放送すると伝えられている。


 そのようなタイの国内情勢を受けて、スーパーGT第7戦タイでもマシンは喪章を付けて走行となり、追悼の雰囲気を尊重し、グランドスタンド裏などでのイベント開催や、表彰台でのシャンパンファイトなどを自粛することになる。


 タイの街中は追悼ムードだが、スーパーGTのレースはタイの気温と同じくらいホットな展開になりそうだ。金曜の搬入日でも炎天下の中、ドライバーたちがコースの下見に向かい、先日、妻の狩野恵里アナの妊娠を発表した山本尚貴(RAYBRIG NSX-GT)はチームメイトの伊沢拓也とともにランニングでコースを周回。山本はピットに戻るやいなや全身に水を浴び、全身をクールダウンしていた。


 ホンダ陣営としては山本のRAYBRIG NSX-GTとARTA NSX-GTが35ポイントで並んでホンダ陣営のトップのランキングになるが、それでも全体ではランキング8位と9位。タイトルの可能性を残すには、このタイで大量得点が必須になる。ホンダ陣営としては、チャンピオン争いに関しては苦しい立場にあることは間違いない。


 このタイでのGT500クラスの見どころは、2つに絞ることができる。ひとつめは優勝争いのポイントとなるタイヤメーカーバトル、そしてふたつめはシリーズランキング争いのゆくえ、トップのMOTUL AUTECH GT-RとレクサスLC500陣営内の戦いだ。


 昨年のタイ戦のGT500はWedsSport ADVAN LC500がチーム初となるポール・トゥ・ウインを飾ったように、ヨコハマタイヤとこのタイ、ブリラム・サーキットの相性はすこぶる良い。今年もWedsSportだけでなく、ヨコハマタイヤを装着するフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、MOTUL MUGEN NSX-GTもウエイトハンデが軽く、このタイ戦に懸ける意気込みには相当なものがある。


 フォーラムエンジニアリングの佐々木大樹も、そのチャンスを虎視眈々と狙う。


「タイはこの3年、ずっと調子は良いいのですが、去年は予選Q1で落ちてしまったり、一昨年はエンジントラブルで走れなかったり悔しい思いをしていますけど、それまでの練習走行などでは常にトップ3に入る速さがありました。自分も得意としているコースなので、すごく自信を持って臨むことができます」と、佐々木。


「J-P(デ・オリベイラ)さんもこのコースですごく速いですし、タイヤもこのタイを得意にしている。いろいろな要素がそろっていますので、今年は自分たちにチャンスはあると思っています。ライバルは19号車(WedsSport)、そしてレクサス陣営もウエイトハンデが軽くなるので(第7戦のタイはウエイトハンデ係数がこれまでのポイント×2kgから、今回は×1kgと半減)、何台かは上位に来ると思いますが、トップを争える速さはあると思います。まずは予選で5番手以内に入ることができればチャンスがあると思います」と続ける。


 ヨコハマタイヤだけでなく、ミシュランタイヤもこのタイでは実績がよく、ランキングトップのMOTUL GT-R(ウエイトハンデ59kg)、そしてS Road CRAFTSPORTS GT-Rがどのようなパフォーマンスを見せるのか。特にS Road GT-Rはウエイトハンデも23kgと軽く、優勝候補のひとつ。先日、スーパーフォーミュラでSUGOテストを終えたばかりの本山哲に聞いた。


「(スーパーフォーミュラのテストでは1分6秒544のタイムをマーク)予選みたいにプッシュはしていないけど、セットアップを詰めれば1分5秒台に行けそうな手応えがありました(直前のSUGO戦の予選Q1トップタイムは1分5秒891)。まだまだイケるのかなと思った。2時間のセッションを走って首だけはさすがにきつかったけど(苦笑)、体はそれ以外は大丈夫だった。機会があったらもう一回テストにも乗りたいし、来年のレギュラー参戦にも興味が出てきました」と、復帰への意気込みを語るほど手応えを感じた本山。フォーミュラからハコへとマシンは変わるが、今週末へも強い自信を持つ。


「タイのサーキットは1年目に走った時から自分の感覚と合うサーキットだった。去年はタイヤのセレクトを外して路面コンディションと合わなかったけど、今年はそんなに大きく外すこともないだろうし、雨とかアクシデントとかがなければ、2位以上は狙えるベースのパフォーマンスはあると思っています」


 ヨコハマ、そしてミシュラン、タイを得意とするタイヤバトルの次に見どころとなるのが、シリーズランキングトップ争い。特にレクサス陣営内の戦いは複雑だ。ランキングトップのMOTUL GT-Rよりは最低でも上の順位で終えなければタイトル争いは苦しくなり、その中で同じレクサス陣営内の戦いにも勝たなければ最終戦で優位な戦いをすることができない。まさに外にも内にも敵がいる状態で、最終戦を待たずにひと足早く、仁義なきメーカー内バトルが勃発する可能性がある。


 KeePer TOM’S LC500と同じく、48ポイントでレクサス陣営トップのWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也が語る。


「ニスモ(MOTUL GT-R)とは結構、ポイント差も開いているので(11点差)、ただニスモより上に行くだけでなく、優勝を狙っていかないといけないと思っています。ヨコハマとかミシュランのタイヤがとんでもないポテンシャルがあったら手が付けられないですけど、同じレクサス&ブリヂストン勢には負けないと思っていますし、今回はまわりとのウエイト差も少ないのでチャンスがあると思っています」

チームルマンは過去2年、タイでは連続表彰台を獲得。レクサス陣営内バトルはどのような結果になるのか

 
 大嶋自身も、このタイのサーキットとの相性の良さを感じている。


「このタイは去年も一昨日も表彰台に乗っていて、すごく得意としているサーキット。このタイではなぜかいつもクルマのセットアップに不満がない(苦笑)。エンジニアがいろいろ考えてくれて、はじめからセットアップが決まっている。僕自身も86のレースなどで他のドライバーよりもこのコースをよく走っていることもあって、好きなコースのひとつです」


 一方のGT300クラスは、さまざまなチーム関係者に予想を聞いたものの、「読めない」という意見が多かった。ただ、GT3のなかでこのコースが得意とされているのは、ニッサンGT-RニスモGT3、BMW M6 GT3といったところ。また、昨年はポルシェ911 GT3 RやJAF-GT勢も速さをみせており、特に昨年圧巻だったのは、1周をまとめたときの速さで図抜けていたVivaC 86 MC。今年も予選で前にいた場合、VivaC 86 MCが速い可能性は高い。


 ただ、多くの関係者が気にしていたのは天候だ。今年は天気予報で雨の予報も出ているのだ(とはいえ金曜搬入日時点でも雨の予報が出ていたが、結局一滴も降らなかった)。もし雨が降れば、今季ウエットを得意としているブリヂストン勢が先行するだろうという予想がある。ARTA BMW M6 GT3やTOYOTA PRIUS apr GT、そしてランキング首位のLEON CVSTOS AMGが大きなリードを築いて最終戦に臨む可能性がある。


 いずれにしろ、GT300は今回も予選から混沌とした展開になりそうだ。


 最終戦に向けてどんどんチャンピオン候補が絞られていく中、この第7戦タイは言うなれば最終予選のような役割になる。週末の天候は不安定な予報で、タイ前国王の追悼期間という特殊な状況のなか、タイのブリーラムでスーパーGT第7戦の戦いが幕を開けようとしている。

木曜には大雨、そして金曜は快晴と極端な天候のタイ、ブリーラム。雲の表情が豊かだ。


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