【津川哲夫の私的F1メカ鈴鹿特別編】ピットストップのホイールガンは特殊セットで2種類常備。素人は手首を脱臼することも

2018年10月7日(日)12時18分 AUTOSPORT web

 レースは速く走るだけでは決まらない。止まる事も重要なレースの一部だ。こう言うと『止まること』イコール、ブレーキングの話しだと思うかもしれないが、今回はレースの勝敗を分ける重要な要素、ピットストップの最新事情をお伝えしたい。


 レース中の緊迫した場面で、チームメカニックはその作業のすべてを実質3秒以内に完結させるピットストップ。超高速でタイヤ交換作業を行う仕事だ。現在では最速で2秒を切るチームもあるが、スタンディングサブ3セコンド(3秒以内)が基本だ。


 もちろん、こんなハイスピードのタイヤ交換作業を支えるために、メカニックたちは膨大な回数を数えるプラクティス、練習を重ねて毎回、パーフェクトな作業を目指している。スタッフの技術が大事だが、その人間と同じくらいに大事なのが道具、ツールでもある。


 ピットストップ作業を支える末端の道具として、ホイールガンが存在する。

F1日本GPの鈴鹿で使用されるホイールガン。レースの勝敗を左右するだけに、チーム独自のセットアップが施されている


 ホイールガンはご存知、ホイールナットを緩め、締めるインパクトレンチのことだ。F1のホイールナットは通常センターロックと言われるアクスル(車軸)のネジに締め込まれるシングルナット。ナットの脱落を防ぐセーフティーロック付きが主流だ。


 そして全ナット、ホイールの通常回転方向(前進方向)に対して反対回転方向で絞まるネジが刻まれている。クルマの進行方向から右側は左回転で絞まる左ネジ。左は右回転(通常ネジ方向)で絞まる右ネジだ。


 F1マシンのタイヤを締めるガンは超特殊なセットアップが施されている。ガンは2種類で左用と右用、どちらも外す方向には鬼のような強トルクで超高回転で、文字どおり『あっ』と言う間にロックナットを外してしまう。


 しかし、締める方向にはきっちりと設計上で決められたトルクで締めなければならない。したがって左右の回転でトルクも速度も違うのだ。素人がレース用のガンを無経験のままで使えば、その強トルクで手首をひねられ、脱臼、等を起こしたりすることもある。ピットストップ、ホイール交換にはそこら中に危険が隠れているのだ。


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