サッカーの見方が広がるかも…? 『勝ち点期待値』から見るプレミアリーグの順位

2019年10月23日(水)18時17分 サッカーキング

(左上から時計回りに)リヴァプール、マンチェスター・C、マンチェスター・U、レスター [写真]=Getty Images

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 近年のサッカー界では、あらゆるデータの活用が進んでいる。その一つが、『ゴール期待値(Expected Goals/ExpG)』だ。これは「そのシュートが得点につながる確率がどれだけあったか」を示すもので、シュートを打った距離や角度、またシュートの種類(キックかヘディングか)など複数の要素を考慮して、「0〜1.0」の値で示される。つまり「1.0」に近いほど得点の確率が高いシュート、ゴールになって然るべきシュートだったというわけだ。

 そして90分間で記録したシュートすべての期待値を合算すれば、そのチームが1試合で奪えたはずの得点——『得点期待値』が導き出される。もちろん対戦相手の『得点期待値』も分かるため、どちらのチームがより勝利に相応しいゲームをしたかが数字で可視化されるというわけだ。

 これらの考え方を基にして算出されるのが、『勝ち点期待値』である。普段の試合中継でも、「勝てた試合でしたね」や「価値あるドローですね」などのコメントを聞いたことがある方は多いだろう。これらの多くは実況者や解説者が試合内容を感覚的に分析したものに過ぎないが、『勝ち点期待値』は運などの不確定要素を一切排除し、そのチームが本来得るべき勝ち点を統計的に算出したものである。たとえば、「今日の試合内容であれば、(統計的には)2.76ポイント分の価値がある試合だった」というように数字で示してくれる。

 統計サイト『understat.com』は、今シーズンのプレミアリーグの『勝ち点期待値』を随時更新。以下は、第9節終了時(10月22日時点)の最新データをもとに作成したプレミアリーグの順位表だ。

1位 マンチェスター・C(実際の順位:2位)
勝ち点期待値:21.33
実際の勝ち点:19

2位 リヴァプール(実際の順位:1位)
勝ち点期待値:18.22
実際の勝ち点:25

3位 チェルシー(実際の順位:4位)
勝ち点期待値:18.03
実際の勝ち点:17

4位 マンチェスター・U(実際の順位:14位)
勝ち点期待値:17.12
実際の勝ち点:10

5位 エヴァートン(実際の順位:15位)
勝ち点期待値:14.37
実際の勝ち点:10

6位 サウサンプトン(実際の順位:17位)
勝ち点期待値:13.11
実際の勝ち点:8

7位 バーンリー(実際の順位:8位)
勝ち点期待値:12.46
実際の勝ち点:12

8位 トッテナム(実際の順位:7位)
勝ち点期待値:12.23
実際の勝ち点:12

9位 ワトフォード(実際の順位:20位)
勝ち点期待値:12.16
実際の勝ち点:4

10位 アーセナル (実際の順位:5位)
勝ち点期待値:12.14
実際の勝ち点:15

11位 ブライトン(実際の順位:16位)
勝ち点期待値:12.11
実際の勝ち点:9

12位 アストン・ヴィラ(実際の順位:12位)
勝ち点期待値:11.75
実際の勝ち点:11

13位 レスター(実際の順位:3位)
勝ち点期待値:11.38
実際の勝ち点:17

14位 ウルヴァーハンプトン(実際の順位:13位)
勝ち点期待値:11.08
実際の勝ち点:11

15位 シェフィールド・U(実際の順位:9位)
勝ち点期待値:10.77
実際の勝ち点:12

16位 クリスタル・パレス(実際の順位:6位)
勝ち点期待値:9.94
実際の勝ち点:14

17位 ボーンマス(実際の順位:10位)
勝ち点期待値:9.79
実際の勝ち点:12

18位 ウェストハム(実際の順位:11位)
勝ち点期待値:7.89
実際の勝ち点:12

19位 ノリッジ(実際の順位:19位)
勝ち点期待値:7.37
実際の勝ち点:7

20位 ニューカッスル(実際の順位:18位)
勝ち点期待値:5.79
実際の勝ち点:8

 プレミアリーグ第9節終了時点で『勝ち点期待値』が最も高かったのは、マンチェスター・Cだった。「21.33」は実際に獲得した勝ち点(19)を2ポイント以上も上回っており、リヴァプール(18.22)よりも高い。ピッチ上で見せるパフォーマンスを統計的に分析すれば、首位に立っているのはリヴァプールではなく、マンチェスター・Cだったというわけだ。

 しかし実際の首位チームは、開幕9試合負けなし(8勝1分け)のリヴァプールである。彼らは『勝ち点期待値(18.22)』を大きく上回る25ポイントを獲得。つまり、圧倒的な勝負強さがあり、運も味方につけていると解釈することができるだろう。

 リヴァプールと同じように、『勝ち点期待値』を大きく上回る成績を残しているのがレスターだ。彼らの『勝ち点期待値』は「11.38」と上から数えて13番目。しかし実際の順位は、リヴァプール、マンチェスター・Cに次ぐ3位となっている。レスターは第9節終了時点の『得点期待値』が「8.93」。しかし、実際は16ゴールを叩き出している。つまり、得点に結びつく確率がそれほど高くないシュートもゴールに結びつけている——スーパーゴールが多いと言える。これが大きなギャップを生み出した要因だろう。

 一方、ピッチ上のパフォーマンスを結果に結びつけることができていないチームが、マンチェスター・Uだ。彼らの『勝ち点期待値』は「17.12」と、上記3チームに次ぐ4番目を記録している。しかし、現実は14位と低迷。勝つべき試合をモノにできず、取りこぼしが多いチームであることが読み取れる。実際、マンチェスター・Uはリードしている状況から落とした勝ち点が「8」と、アストン・ヴィラと並ぶリーグワースト。20日のリヴァプール戦でも、36分に先制しながら85分に追いつかれてドローに終わった。試合運びに大きな課題を抱えているのは明白だ。

 そのほか、唯一の未勝利で最下位に沈むワトフォード、また“ボトム10”に沈んでいるエヴァートンやサウサンプトンといったところが、試合内容に見合う結果を得られていないことがわかった。

 このように、『ゴール期待値』や『勝ち点期待値』は、一般的な順位表だけではわかりづらい各チームの特徴や問題を明らかにしてくれる。もちろん今回の比較によって、「試合結果は必ずしもデータどおりにはならない」というスポーツの真の面白さを改めて実感することになるのだが、新たな分析方法が注目を集めれば、サッカーに対する見方もまた広がるかもしれない。

(記事/Footmedia)

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