ルーキー・オブ・ザ・イヤー候補の3人が予選後に語った“本音”。新王者の野尻は決勝に向け試行錯誤【第7戦JAF鈴鹿GP予選】

2021年10月30日(土)20時29分 AUTOSPORT web

 鈴鹿サーキットで2021シーズンの最終戦を迎えた全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦JAF鈴鹿グランプリ。今回はチームタイトル争いに注目が集まっているが、同時に話題となっているのが、ルーキー・オブ・ザ・イヤーだ。


 第6戦もてぎ終えた時点で、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)が33.5ポイントで対象ドライバーの中ではトップ。続いて大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)が34ポイント、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が22ポイントで続いている。


 このメンバーの中で予選でもっとも上位を獲得したのは宮田だ。朝のフリー走行では2番手タイムを記録すると、Aグループで出走したQ1とQ2でトップタイムをマーク。Q3ではトップから0.4秒差の6番手となったが、トヨタ/TRDエンジン勢では最上位という結果になった。


「第4戦SUGO以降からフリー走行で低迷している印象があって、もてぎが一番不調でした。やっぱりフリー走行から調子良く上位でタイムを残しておかないと予選も厳しくなるということは十分、分かっていました。8月のもてぎ(第5戦)はどんどんタイムを上げて、予選4番手になれましたけど、それを踏まえて臨んだ第6戦もてぎではまったくうまく行かずにQ1で落ちてしまいました」


「今回の鈴鹿は、4月の第2戦では悪くなかったのですけど、Q3までいけるかという不安はありました。その中でAグループのQ1、Q2でトップタイムを出すことができたのは大きかったです」


「昨年も代役でスポット参戦させていただいた時も、Q1やQ2でトップタイムを残せていましたが、今年はそれができていませんでした。この鈴鹿では予選でトップタイムを残せるようにしたいと思っていたので、そういう部分ではチームとともに努力してきたことが実になって良かったです」


 フリー走行から上位にいられたことが、今回の予選結果につながった要因のひとつだと語る宮田。今週はルーキー・オブ・ザ・イヤーの話題で持ちきりだが、本人はそれよりも優勝や表彰台を狙って決勝は戦いたいと断言した。


「ルーキー・オブ・ザ・イヤーのことは良く聞かれますが、正直あまり意識していません。獲得したら経歴として残りますけど、それは決してシリーズチャンピオンではない。僕はチャンピオンを獲るために1年間戦いにきています。すでにチャンピオンが決まってしまいましたが、個人的には全戦でQ3に進出して、決勝も全戦ポイント獲得ということが、自分の中ではターゲットです」


「予選については、前回のもてぎで途絶えてしまいましたけど、決勝では全戦でポイントを獲れています。明日もしっかりポイントを獲りたいですし、今シーズンは表彰台も優勝もないので、この鈴鹿で好結果を残したい思いは強く持っています。そこを目指して決勝レースは頑張りたいです」


 一方、前回の第6戦もてぎで初優勝を飾った大津。今回も予選から注目が集まったが、Q3ではミスもあって思うようにタイムを上げられず、7番手という結果に終わった。


「Q1、Q2、Q3と進んでいって、路面コンディションが良くなってタイムが上がる中で、そこに合わせきれなかったです。(Q3の)セクター2でミスがあって、コンマ2〜3秒はロスしてしまった部分はありましたが、それがなくても、1分37秒0には届かなかったと思います」


「朝からいろいろなものを試して、データも見ながら進めてきましたけど……最後の、もうひと伸びが出ませんでした」


 悔しそうな表情で振り返った大津。今シーズンは安定してQ3に進出できているものの、そこからのタイムを上げていく部分に課題があるという。シーズンを通して試行錯誤はしてきたが、今回も課題が浮き彫りとなった。


「これまでのレースでも、Q3には進むけど、そこからの伸び代がなくて、(Q3で)7番手、8番手で終えることが多かった。僕の中でも、Q3に進んでからトップ争いをするという部分がほしかったのですけど、路面コンディションがどれくらい上がっているのかは未知数なところもあります。でも、そこをしっかり合わせているのがトップにいる選手たちだと思うので……難しい予選でした」


 大津も、今回の結果次第ではルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得する可能性は十分にあるのだが、本人は思いの外、注目が低い様子だった。

第6戦で初優勝を果たした大津弘樹(Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT)



●好調だった新チャンピオン、野尻智紀がまさかの低迷!? 予選での手応えと思惑



「僕、実は(ルーキー・オブ・ザ・イヤーに関しては)まったく調べていないので……正直、ルーキー・オブ・ザ・イヤーは意識せずに、自分のベストを尽くせば、自ずと結果はついてくると思います。そこに執着せずに、まずは決勝で速く走ることに集中していきたいですね」


 ルーキー・オブ・ザ・イヤーの争いの中で、現在トップにつけているのが阪口だ。ただ、今週末は走り出しから上位に食い込める手応えがなかったという。


「朝のフリー走行から厳しかったのでQ3にいけそうな雰囲気はあまりありませんでした。ポジションで言っても、朝とあまり変わらない順位です。今回でいうと、改善を施してきたチームがいくつかあるみたいで、前回のもてぎと比べても勢力図が違った感じで、僕たちはそれに乗り遅れてしまった部分がありました。もちろん、鈴鹿に向けていろいろと変更はして来たものの、結果として現れなかったのは残念でした」


 阪口もそう語るように、チームメイトの坪井翔はQ1で敗退となり、P.MU/CERUMO・INGINGは揃って後方グリッドに沈む結果となり、課題は山積みのようだ。


「やっぱり2台で沈んでしまっているのが、キツいところではあります。コンディションが悪い中で結果は残せていましたけど、ドライコンディションで予選も決勝も進められているレースでは、速さを見せることが今シーズンはほとんどできていません。その点では他のチームと比べて乗り遅れてしまっている部分があるので、練り直す必要はありますけど……今の感じだと表彰台に絡める雰囲気はあまりないです。ただ、ポイントはしっかりと狙いたいです」


 決勝に向けては、宮田や大津と同様に、阪口もルーキー・オブ・ザ・イヤーの意識は高くはない様子。課題となっているペース改善に努めるとした。

今季2度の表彰台を獲得している阪口晴南(JMS P.MU/セルモ・インギング)


「ルーキー・オブ・ザ・イヤーとか、ポイントとかは、後ろからのスタートになるので、あまり意識する必要はないのかなと思っています。とにかく一生懸命走って、ひとつでも順位を上げられるようにしたいです。最終戦なので荒れるかもしれないし、戦略もバッチリと決めて、今僕たちが持っているスピードを発揮して、最上位で終われるようにするしかないです」


 そして、前回の第6戦もてぎで初のドライバーズタイトルを獲得し、“新王者”として最終戦に臨んでいる野尻智紀(TEAM MUGEN)。朝のフリー走行ではトップタイムを記録し、今回も有力なポールポジション候補になるだろうと誰もが予想していた。しかし、当の本人は“一抹の不安”を抱えながらセッションを進めていたという。


「走り出した時は、それなりに良い手応えを感じていたのですけど……言葉で的確に説明するのが難しいですが、このまま路面コンディションが良くなってきた時に、うまく合わせこみができるか? という疑問が残るような仕上がり方というか、クルマの動き方でした」


「そのあたりが、フリー走行でもセッションが進むにつれて浮き彫りになってきて、そこからの詰めが、今回は足りなかったというのが正直なところでした。どちらかというとコマを進めるのが大変だった予選でした」


 そのコメント通り、予選ではツインリンクもてぎでみせたようなライバルを圧倒するような速さは感じられず、Q2Bグループもノックアウト寸前の4番手で通過。Q3ではトップから0.3秒差の5番手で終えることとなった。


 この最終戦では、新しいトライもしてきているという野尻だが、決勝に向けて方向性をもう一度精査し“レースペースを良くする”というところに注力したいと語った。


「今回、僕たちは新しい取り組みもしていて、それが予選に対してなかなか合わせ込むことができなかったところもありました。自分たちが、もともといた位置に立ち返るのかどうか……そのあたりも含めて今日の夜にしっかり検討したいなと思います」


「チームタイトルを考えるとダンディライアンの2台が上にいるので、何とかしたいですけど……彼らが手強いのは重々承知しています。ただ、決勝は何があるのか分からないので、まずはレースペースで、僕たちが誰よりも速く走れるような方向に持っていくしかない。明日は強いレースが見せて、良い争いができればとは思います」


 それぞれ置かれている状況や、成し遂げなければいけないことは、チーム、ドライバーによって異なるが、共通していたのは“良い結果で今季を締めくくりたい”という思いだった。2021年の最終戦、果たして誰が最後に笑うことになるのか。決勝レースの行方から目が離せない。

新チャンピオンの野尻智紀(TEAM MUGEN)

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