変幻自在の攻守でザルツブルクを破壊。ミランはCLで台風の目となり得る【試合分析】

2022年11月4日(金)21時0分 FOOTBALL TRIBE

テオ・エルナンデス(左)ステファノ・ピオリ監督(中)オリビエ・ジルー(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ最終節が11月3日(日本時間)に行われ、グループEのミランとレッドブル・ザルツブルクが対戦。


前半14分に、ミランのFWオリビエ・ジルーがサンドロ・トナーリのコーナーキックにヘディングで合わせ、先制ゴールをゲット。後半1分にも、右サイドハーフのアンテ・レビッチのクロスにジルーがヘディングで反応し、ペナルティエリアに侵入したラデ・クルニッチにパス。このボールを受けた29歳のボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFがヘディングシュートをゴールに突き刺し、ミランがリードを2点に広げた。


その後もミランが相手ゴールを脅かし、同12分には左サイドハーフのラファエル・レオンが右サイドへの長距離ドリブルでチャンスメイク。レオンのクロスのこぼれ球をジルーが押し込むと、アディショナルタイムには右サイドを駆け上がった途中出場のFWジュニオール・メシアスがカウンターを結実させ、勝負あり。同クラブが4-0でザルツブルクを下している。


最終節での大勝により、9シーズンぶりにチャンピオンズリーグの決勝ラウンドに駒を進めたミラン。ハイプレスからの速攻が得意なザルツブルクを、いかにねじ伏せたのか。この点について分析する。




ミランvsザルツブルクのスターティングメンバー

ミランの形状変化が奏功


[4-2-2-2]の布陣でハイプレスを仕掛けてきたザルツブルクに、ミランは最終ラインの形状変化で対抗。


左サイドバックのテオ・エルナンデスを高い位置に上げ、フィカヨ・トモリ、シモン・ケアー、ピエール・カルルで変則3バックを形成。相手の2トップ、チュクビケ・アダムとノア・オカフォールとの“3対2”の数的優位を確保したうえで、自陣後方から攻撃を組み立てた。


相手の2トップの両脇に立つ、カルルやトモリがボールを前方へ運ぼうとしていたほか、ミランの変則3バックにザルツブルクが2トップとマウリッツ・ケアゴールの計3人でハイプレスを仕掛けた際には、主にカルルやGKチプリアン・タタルシャヌが前線にロングボールを供給。後方からの浮き球のコントロールが得意なレビッチ、クルニッチ、レオン、ジルーの躍動によってミランの速攻が機能し、ザルツブルクのハイプレスは幾度となくいなされた。


前半2分30秒すぎには、タタルシャヌのロングパスがレオンやレビッチに渡り、左サイドを駆け上がったエルナンデスがポスト直撃のシュートを放っている。ミランの狙いが如実に表れた場面だった。


ミランは変則3バックで対抗

守備で好プレーを見せたエルナンデス


2得点のジルー、後方からのロングパスを何度もチャンスに結びつけたレビッチ、レオン、クルニッチの活躍も然ることながら、エルナンデスの攻守両面における貢献も見過ごせない。


この試合でもキャプテンマークを腕に巻いた25歳のフランス人DFは、ザルツブルクが自陣後方からパスを回そうとするやいなや、左のハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)に位置取り。相手の2ボランチの一角ニコラス・サイバルトを捕捉し続けた。


ミラン DFテオ・エルナンデス 写真:Getty Images

象徴的だったのが、ザルツブルクが自陣後方から攻撃を組み立てようとした前半7分すぎの場面。ここでもエルナンデスがサイバルトを、クルニッチがリュカ・グルナ・ドゥアトを捕まえたことで、センターバックのストラヒニャ・パブロビッチにロングボールを蹴らせることに成功。このボールをトモリが回収し、直後にミランが攻撃を仕掛けている。エルナンデスの好プレーが実を結んだシーンのひとつと言えるだろう。


ミランの先制点に繋がったコーナーキックは、エルナンデスがクルニッチとのパス交換で左サイドを突破し、ペナルティエリアに侵入したレオンにパスを送ったことでもたらされたもの。敵陣と自陣を行き来して何度も攻撃に絡み、守備のタスクも忠実にこなすフランス人DFは、今やミランに不可欠な存在となっている。




ミラン FWオリビエ・ジルー 写真:Getty Images

今季のミランは侮れない


多彩かつ変幻自在な攻守でザルツブルクを圧倒し、グループEを2位で突破してみせたミラン。(勝ち点:10)


同グループ首位通過のチェルシー(勝ち点:13)には連敗を喫したものの、本拠地サン・シーロでの第4節ではブラヒム・ディアス、ジルー、レオンの3トップが相手の3バックを、トナーリとクルニッチの2インサイドハーフが敵の2ボランチをマンツーマン守備で捕まえたうえで、[4-1-2-3]の布陣によるハイプレスを敢行。前半にトモリが退場処分を受けるまでは、一昨シーズンのチャンピオンズリーグ覇者と互角の勝負を演じ、決定機も作れていた。


ミラン ステファノ・ピオリ監督 写真提供: Gettyimages

2019年10月に赴任したステファノ・ピオリ監督のもとで、ミランは相手の出方に応じて自分たちの攻守を柔軟に変えられるチームへと成長。今シーズンもカウンターの破壊力が抜群で、セリエAではインテルやユベントスを沈めている。


2013/14シーズンより続いていた国内リーグでの不振から脱した“ロッソネロ(赤と黒)”が、今シーズンのチャンピオンズリーグで台風の目となるかもしれない。

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