トヨタ7号車が世界タイトル奪取! LMP2はラスト10分まで僅差のバトル【WECバーレーン決勝】

2020年11月15日(日)4時45分 AUTOSPORT web

 11月14日土曜日、14カ月以上にわたって争われてきたWEC世界耐久選手権の2019/20シーズン最終戦となる第8戦バーレーン8時間レース決勝が、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催された。


 いくつかのクラスタイトルはすでに前戦で決定済みだが、LMP1にエントリーするトヨタGAZOO Racing2台のドライバーが争うLMPドライバー選手権を始めとしたその他の選手権タイトルの決定は、この最終戦バーレーンに持ち越されていた。


 現地時間13時56分、このレースを最後に現職を離れるFIA WECのCEOジェラール・ヌブーと、同ヘッド・オブ・コミニュニケーションのフィオナ・ミラーがグリーンフラッグを振り下ろし、フォーメーションラップが開始された。天候は晴れ、気温27度/路温34度というコンディションだ。


 ポールポジションの7号車TS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)はコンウェイ、8号車TS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー)はブエミがステアリングを握り、レースをスタート。

WECバーレーン8時間レース:スタートシーン


 このレースでは、2019/20シーズンのLMP1クラスに導入されているサクセス・ハンデキャップシステムにより、7号車は8号車に対して1周あたり0.54秒のアドバンテージを持つよう、2車の性能が調整されている


 コンウェイは1周を終えてブエミに1.3秒の差をつけ、その後もサクセス・ハンデキャップにほぼ準じる形でリードを広げていった。最初のルーティンストップでは8号車だけがリヤタイヤを交換したことにより、2台の差はさらに拡大していく。


 その後、2時間経過時点で2台の差は50秒、レースの中間地点となる4時間経過時点では、1分20秒ほどにまで広がった。日没を迎えてナイトレースとなるなか、このまま推移すればフィニッシュまでに8号車がラップダウンされるのは確実かと思われた。


 だがレースが後半戦に突入した直後、後述するLMGTEクラスにおける接触の影響によりセーフティカー(SC)が導入される。


 これによってトヨタ7号車の持つマージンは10秒以下にまで減少。7号車は改めて、8号車とのギャップを構築していくことを強いられた。


 今回はLMP1勢がほかにエントリーしていないため、トヨタにとってはライバル不在の戦いとなっていたが、2台は目立ったトラブルなく順調に走行し、両車の差は再び1分ほどに拡大していく。


 2021年は新規定『ル・マン・ハイパーカー』に移行することにより、このレース限りで“退役”となるTS050ハイブリッド。その最終スティントは可夢偉と一貴、ふたりの日本人ドライバーに託された。


 危なげなく走り切った可夢偉がトップチェッカー。1分4秒後には8号車の一貴もチェッカーを受け、2位となった。これによりLMPのドライバーズ選手権では7号車の3人が207ポイント、8号車の3人が202ポイントとなり、コンウェイ/可夢偉/ロペスが世界選手権タイトルを手にしている。


■JOTA対ジャッキー・チェンの激しい争いとなったLMP2


 すでにタイトルを決めているユナイテッド・オートスポーツ22号車オレカ07・ギブソン(フィル・ハンソン/フィリペ・アルバカーキ/ポール・ディ・レスタ。ドライバーズ・トロフィーはハンソンとアルバカーキが獲得)がPPを獲得したLMP2クラスは、最後の最後まで目が離せない戦いとなった。


 序盤はPPのユナイテッド・オートスポーツがリードするが、2時間目に突入して最初のピット作業を終えるとジャッキー・チェン・DCレーシングの37号車オレカ07・ギブソン(ホー・ピン・タン/ガブリエル・オーブリ/ウィル・スティーブンス)がクラス首位に躍り出ていた。


 このあと、37号車はオペレーションをともにする兄弟チームのJOTA38号車オレカ07・ギブソン(ロベルト・ゴンザレス/アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ/アンソニー・デイビッドソン)とフィニッシュまでドッグ・ファイトを演じることになる。


 ともにグッドイヤータイヤを履く2台は、レース残り2時間を切っても1秒以内という接近戦を演じる。残り1時間半、タンがターン10でデイビッドソンを見事にオーバーテイクし、じりじりとリードを広げていった。


 しかし残り1時間を前に38号車がダ・コスタに、37号車がオーブリにドライバーチェンジすると、今度はダ・コスタがオーブリを追い詰めていく。そして残り30分、最後のピットを終えたダ・コスタはオーブリの鼻先でコースに戻り、逆転に成功する。


 最終戦勝利を目指す熾烈なバトルは、ときに1コーナーでブレーキをロックさせながら、このあとも続いた。決着したのは残り10分を切ってから。GTEのマシンが絡んだT10進入でオーブリがダ・コスタのインへ飛び込み、わずかに接触しながらもターン12までの争いで前に出たオーブリが、クラストップを奪い返した。


 オーブリはそのままチェッカーまで37号車を導き、クラス優勝/総合3位に。38号車が2位、クラス3位にはレーシングチーム・ネーデルランド29号車オレカ07・ギブソン(フリッツ・バン・イアード/ギド・バン・デル・ガルデ/ニック・デ・フリース)が入った。

LMP2クラスを制したジャッキー・チェン・DCレーシングの37号車オレカ07


■僅差のタイトル争いとなったLMGTEアマクラス


 3メーカー、6台の争いとなるLMGTEプロクラスでは、序盤からPPのポルシェGTチーム92号車ポルシェ911 RSR(マイケル・クリステンセン/ケビン・エストーレ)がレースをリードする。


 ハーフウェイを迎えたところで、2番手につけていたAFコルセ51号車のフェラーリ488GTE Evo(ジェームス・カラド/ダニエル・セラ)のセラが、ターン4でLMGTEアマクラスのチーム・プロジェクト1・56号車ポルシェ911 RSR(エディジオ・ペルフェッティ/ラリー・テン・ボーデ/ヨルグ・ベルグマイスター)と接触。


 アウトラップだったセラは左リヤにダメージを負い、タイヤがパンク。ピットへと戻る過程でコース上にデブリが散乱してしまい、この除去とコース清掃のためSCが導入された。51号車フェラーリはガレージでの修復を強いられ、カラドにわずかに残されていた逆転タイトルの可能性が消滅してしまう。


 92号車ポルシェは僚友の91号車ポルシェ911 RSR(ジャンマリア・ブルーニ/リチャード・リエツ)を従え、トップでフィニッシュ。クラス3位はAFコルセ71号車フェラーリ488GTE Evo(ダビデ・リゴン/ミゲル・モリーナ)のものとなった。


 GTドライバー選手権は、バーレーン前までにクラス首位に立っていたアストンマーティン・レーシング95号車アストンマーティン・バンンテージAMRのマルコ・ソーレンセン/ニッキー・ティーム)がクラス5位に入り、タイトルを決めている。

GTEプロクラスで優勝を飾ったポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR


 10台のマシンがエントリーするLMGTEアマクラスでは、オープニングラップで選手権リーダーのTFスポーツ90号車アストンマーティン・バンテージAMR(サリ・ヨルック/チャールズ・イーストウッド/ジョナサン・アダム)がトップに立ち、タイトル争いのライバルであるAFコルセ83号車フェラーリ488 GTE Evo(フランソワ・ペロード/エマニュエル・コラール/ニクラス・ニールセン)に対して優位な立場となる。


 開始30分、90号車をドライブするヨルックのインに、アストンマーティン・レーシング98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ポール・ダラ・ラナ/ペドロ・ラミー/ロス・ガン)のダラ・ラナが飛び込むも、接触を喫しスピン。ダラ・ラナはポジションを下げ、ヨルックも首位の座を明け渡してしまう。


 しかし最初のピットを終えると、ガンに交代した98号車がクラストップへ。このあとSC導入まで98号車の優位は続いていったが、SC導入よって上位勢の差がほぼなくなることに。。このなかでガルフ・レーシングの86号車ポルシェ911 RSR(マイケル・ウェインライト/アレッシオ・ピカリエッロ/ベンジャミン・バーカー)がトップに立つが、各車は僅差で混沌としたまま終盤戦に突入していく。


 タイトル争いで優位に立っていた90号車アストンマーティンだったが、最後の1時間に入ってピットでブレーキ交換を行なったことにより、一時はクラス最後尾へと後退。このとき8点差からの逆転タイトルを狙う83号車フェラーリはクラス2番手を走行していた。


 残り40分を切って83号車フェラーリが最後のピットを済ませると、クラス3番手に。一方の90号車アストンマーティンはクラス8番手で、このままの順位だと1ポイント差で83号車がタイトル獲得という緊張感のある展開となった。


 83号車のニールセンは86号車ポルシェをオーバーテイクしクラス2位を取り返し、安全圏内へ。一方の90号車アストンマーティンはポジションを落とし、83号車フェラーリの逆転タイトルが決まった。


 クラス優勝は最後の1時間に入ってから86号車ポルシェをオーバーテイクした56号車ポルシェ。2位に83号車フェラーリ、3位にはデンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェが入っている。


 ケイ・コッツォリーノの乗り込むLMGTEアマクラスのレッドリバー・スポーツ62号車フェラーリ488GTE Evo(ボナミー・グリムス/コッツォリーノ/コリン・ノーブル)は、序盤に56号車ポルシェに接触されスピンを喫するなど、苦しいレースとなった。クラス最下位となる総合23位でチェッカーを受けている。

LMGTEアマクラスで優勝したチーム・プロジェクト1の56号車ポルシェ911 RSR

LMGTEアマクラスのタイトルを獲得したAFコルセ83号車フェラーリ488 GTE Evo

AUTOSPORT web

「タイトル」をもっと詳しく

「タイトル」のニュース

「タイトル」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ