パスカーレ8戦5勝も霞む、TCR初代王者ウィル・ブラウン歓喜の初勝利/RSC第10戦シドニー3

2021年11月16日(火)13時16分 AUTOSPORT web

 シーズンフィナーレの“祭典”となる『バサースト1000』に向け、シドニー・モータースポーツパークでの連戦が続いているRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップだが、4連戦のラウンド3となる第10戦シドニー・スーパースプリントが11月13〜14日に開催された。


 ここまで2連戦で実施されたナイトレースとは異なり、土日の3ヒートすべてを陽光のもと開催するデイタイム・レースとした週末は、このトラックとの好相性を見せつけるディック・ジョンソン・レーシング(DJR)のアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)が、定位置となったポールポジションからのライト・トゥ・フラッグを含む2勝を挙げ、旧イースタンクリーク連戦で8戦5勝という破竹の勢いを披露した。


 しかし、そのパスカーレが霞むほど印象的な活躍を演じたのが、前戦ラウンド2でRSCキャリア初ポールを獲得した初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)で、23歳のルーキーはこの週末最終ヒートのレース3を制し、キャリア通算38戦目にして歓喜のスーパーカー初優勝を達成。


 2013年にスコット・マクラフランとチャズ・モスタートが記録して以来のルーキーイヤー初勝利を挙げると同時に、エレバス・モータースポーツにとっても昨季のダーウィン以来となる約1年ぶりの優勝を飾ることとなった。


 12月初開催となる今季最終戦の『バサースト1000』は、RSCを筆頭に合計10のカテゴリーを一堂に介した、6日間のフェスティバル戦を予定している。しかしこの週末は、その祭典に向けワイルドカード枠でのエントリーを表明していたグレッグ・マーフィー/リッチー・スタナウェイ組のニュージーランド出身“引退ペア”の『参戦中止』という残念なニュースで幕を明けた。


 その厳しい公衆衛生上の懸念事項を吹き飛ばすかのように、シェルVパワー・レーシングの新エースであるパスカーレは、このラウンド3でも公式練習から主導権を握ると、土曜予選では今季限りでの勇退を決めている“7冠王者”ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)を0.342秒差で退け、シドニー連戦通算5度目のポールを獲得した。


 そのまま現地午後16時45分にスタートが切られた32周レース1では、フロントロウに並んだウインカップが背後のウィル・デイビソン(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)を牽制し「ほとんどクラッシュ寸前だった」とライバルが警告を発するほどウォールにマシンを寄せたことで、首位パスカーレは盤石の体勢でホールショットを奪うことに成功。


 義務ピットで2本交換とした2016年王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)と、燃費戦略で3番手に浮上してきたブラウンを従え、パスカーレがまずはこの週末最初の勝利を手にした。


 明けた日曜午前の予選では、初戦のレース2に向けパスカーレ、デイビソンのシェルVパワー・レーシングが、続くレース3に向けてはSVG、ウインカップのトリプルエイト・レースエンジニアリング勢がそれぞれフロントロウをロックアウトする展開に。

「本当に腹立たしい限り」と、渡航制限により『バサースト1000』参戦がキャンセルされたグレッグ・マーフィー(左)とリッチー・スタナウェイ
レース1のスタートで“7冠王者”ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)に寄せられたウィル・デイビソン(フォード・マスタング/Shell V-Power Racing)は、レース後に猛然と抗議の意を示した
シドニー連戦通算5度目のポールを獲得したアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/Shell V-Power Racing)が、まず初戦を制してみせた
明けた日曜午前の予選では、パスカーレと並び今季限りで”勇退”のウインカップがレース3のポールを獲得する


■「この興奮と感動を説明する言葉が浮かばない」とスーパーカー初勝利のブラウン


 午後14時を前にスタートした日曜最初のヒートは、ポールの優位性を活かしたパスカーレがレッドブル・アンポル・レーシングの2台を抑え切って、土曜からの連勝を飾る結果となった。


 そして迎えた最終ヒートは、前方に並ぶ2台の強豪チームに対し4番グリッドから挑戦したブラウンが、戦略を駆使しての首位浮上劇を披露。アンダーカットを狙いアーリーピットを選択したエレバスの若きエース候補生は、2輪交換として作業時間短縮を図ると、その後にピットへ向かったウインカップ、SVGを逆転することに成功。


 ここから背後の2台はチームメイト同士による“不毛な”ポジション争いを繰り広げ、ペースに勝る3番手SVGは無線を通じて再三のチームオーダー発令を要請したものの、これを頑なに拒否したウインカップと幾度ものコンタクトを繰り返すバトルが展開される。


 この内部紛争にも助けられたブラウンは、わずか0.281秒差で2台を抑え切ることに成功し、チェッカー後には歓喜のドーナツターンを演じて自らのシリーズ初勝利を祝福する結果となった。


「この興奮と感動を説明する言葉が浮かばないよ。あのふたりを抑えてシリーズ初優勝を飾れるだなんて、誰が想像しただろう!」と、満面の笑みを見せた勝者ブラウン。


「スーパーカーのデビューイヤーで初優勝を挙げるなんて……僕らは今季、トップ10フィニッシュできるだけで喜んでいたんだ。レース終盤の状況はクールだったね。あのふたりがバトルし合って、その前を走るのは少しスリリングだったけれど、すごく楽しかった。いつだってレースに勝つのは最高だ。しかも僕はルーキーだし、これは実力以上の結果だ。でも今は心から興奮し、うれしく思っているよ」


 一方、25周目にはチームから「ペースの速いSVGを先行させるように」要請されていたウインカップは、レース後、瞬間的に命令に逆らい勝利を目指して戦うことを選んだ自らの判断を「恐らく間違っていた」と反省の弁を口にした。


「僕らはお互いに激しくレースをしていた。競争力のあるマシンを走らせていると、往々にして起こり得る状況だ。確かにいくつかの議論があると思うが、冷静になった今は『間違った判断だった』と感じるのも事実だ。でも、あの瞬間ではそれが正しいと感じていたのもまた事実なんだ」と心情を吐露した現役フルタイム残り2戦のウインカップ。


 一方、選手権リーダーを行くチームメイトのSVGも、この件に関し「ふたつの点で、僕は悲しくもあり、幸せでもある」と振り返った。


「表彰台はいつだって良いものであり、ウィル・ブラウンがキャリア初勝利を収める瞬間に立ち会えたのはとてもうれしい」と続けたSVG。


「でもジェイミーと僕はあまりにも激しく戦ったように感じている。幾度も不要な接触を経験したし、戦うことを選んでチームのためにワン・ツーのチャンスを棒に振ることになった。僕の方が速かったのは明らかで、優勝か2位になれたチャンスを失ったのは残念だよ」


 最終戦『バサースト1000』を前に、引き続きシドニー・モータースポーツパークでの連戦が続くRSCは、11月19〜21日に最後のスーパーナイト戦が予定されている。

レース2は最前列から出たパスカーレが、週末2度目のライト・トゥ・フラッグを達成している
「僕の方が速かったのは明らかで、優勝か2位になれたチャンスを失ったのは残念」とシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)
レース3でチェッカーを受けた3台は、わずか0.522秒差。ウインカップはレース後、自らの判断を「恐らく間違っていた」と、反省の弁を口にした
「あのふたりがバトルし合って、その前を走るのは少しスリリングだったけれど、すごく楽しかった」と、デビューイヤーで見事勝利を飾ったブラウン

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