ピレリのチーフエンジニアにインタビュー(1):「意外かもしれないが、週末の木曜も特に忙しいんだ」

2017年11月23日(木)9時0分 AUTOSPORT web

 スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。今回、ピレリのチーフエンジニアを務めるマヌエル・ムニョスにインタビューする機会が訪れたのでタイヤのこと、現場でどんな仕事をしているのかなど気になることを尋ねてみた。 


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ーーピレリのチーフエンジニアというのは、良い役職ですね。
マヌエル・ムニョス(以下、ムニョス):私が大学生のころに聞かされていたら、たしかに良い仕事だと思うだろうね。現実的には、技術面とコース上で起きることのすり合わせをしていくのが私の仕事だ。ピレリが私を信頼して、今のポジションを与えてくれたことを嬉しく思っている。


ーーピレリのような大企業にこうした役割を与えられ、信用されるということには、大きな責任が伴いますね。
ムニョス:ピレリが高く評価してくれているので、私は幸運だ。彼らと仕事を始めたころには、エンジニアとしてフェラーリ、ロータスへ行き、マクラーレンへも行った。マクラーレンでは勝つことはできなかったが、チームの考え方が大きく異なっていた。しかし彼らはいつも私を信頼してくれたし、いろいろなチャンスを与えられ、とても居心地が良かった。そうした仕事がピレリでも認められているということは、とても良いことだと思う。


ーー仕事をする上で、以前とはどのように役割が違うのですか?
ムニョス:最も違うのは、年の始めにどのような役割を与えられるかだ。以前に仕事をしていたチームのひとつではトラックエンジニアを務めていたが、基本的にピレリは各チームにエンジニアをひとり配置する。そのエンジニアの仕事は、タイヤをそれぞれのチームのシャシーに最適化することだ。


 より局地的で、チームと密接に関わることになるが、今の私の仕事はもっと幅広い。今の私は、チームがタイヤを上手く扱えているかどうかを、技術面と同様に全体的に見ている。


 これは本当にやりがいのあるもので、以前の仕事とは大きく異なるものなので、良かったと思っているんだ。自分がこんなポジションに就くなんて想像したこともなかったし、仕事の内容は素晴らしいものだから、今の役割はエキサイティングだ。以前は技術的な部分だけに焦点を置いていたが、今はスタッフ同士の付き合い方も違う。


ーーレースの週末はどのように過ごしていますか?
ムニョス:特に木曜日には多くのミーティングがあり、チームにあるたくさんの部門と話をする。エンジニア、フィッター、物流チームなどだね。木曜日はリラックスして過ごせると思うかもしれないが、そうではないんだ。そして金曜日からの週末は、各チームがどのようにタイヤを使っているかを監督する。


 チームのタイヤの使い方について深い知識があるわけではないが、幅広い視点で観察するんだ。何が起きているのか、すべてのタイヤがピレリの指定するパラメータの範囲で使われているかどうかを確実に把握する。そして、すべてのエンジニアがチームとうまく協力して仕事にあたれるようサポートしている。


ーーこれまでのF1でのキャリアのなかで、最も思い出深かった出来事は?


ムニョス:ふたつある。ひとつは10年前の話で、2007年のインテルラゴスでの出来事だ。それは私にとって初めてのF1で、それ以前はドイツのDTMで仕事をしていた。初めてパドックに入ったときに、ルノーのエンジニアがレッドブルのスタッフと話しているのを見て衝撃を受けた。


 ドイツ人には少々変わったところがあって、私もその考え方に影響を受けていたんだ。DTMでは他のチームスタッフと交流することがあまりない。アウディはアウディ、メルセデスはメルセデスで、互いに話をすることはなかったね。F1のパドックで見た光景に、目の覚める思いがしたよ。


 もうひとつの想い出は、2012年にバレンシアで行われたヨーロッパGPだ。フェルナンド(・アロンソ)にとってはホームレースでもあり、当時の私は彼と一緒に仕事をしていた。11位からスタートして優勝したのだけれど、その勝利に私も一役買っていたということが、とても特別な想い出なんだ。


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