MotoGP:ホンダ育成チームのアジア人ライダーふたりが肌で感じた世界選手権

2017年12月2日(土)11時0分 AUTOSPORT web

 2017年、イデミツ・ホンダ・チーム・アジアからMoto2クラスに参戦したカイルール・イダム・パウィと、ホンダ・チーム・アジアからMoto3クラスに参戦したナカリン・アティラプワパ。それぞれMoto2クラス、Moto3クラスのルーキーとして参戦したこの1年は、どのようなものだったのだろうか。


■カイルール・イダム・パウィ(イデミツ・ホンダ・チーム・アジア)


 マレーシア人のパウィは2015年からCEVレプソルインターナショナル選手権Moto3クラスに参戦。2016年にはMoto3クラスで世界選手権デビューを飾ると第2戦アルゼンチンGP、第9戦ドイツGPで優勝を飾り、2017年からMoto2クラスにステップアップした。


 Moto2クラスデビューイヤーとなった今季は第13戦サンマリノGPでは8位入賞を果たし、ランキング27位でシーズンを終えている。Moto2マシンで初めてレースに挑むことになった2017年は、パウィにとって簡単なシーズンではなかったようだ。


「(2017年は)とても厳しいシーズンでした。Moto2のマシンに乗るのは初めてだったので、自分を信じる気持ちを失わずに、毎戦少しずつ成長していくことを目指しました」


「僕はMoto3を16年に1シーズン戦っただけの状態で、Moto2クラスへステップアップしてきました。そもそも十分な経験がなかったので、Moto2に来ても手探りの状態が続きました」


「今年はまったく経験がないところからMoto2をスタートしたので苦労をしましたが、今年一年間の積み重ねを経て、来年はいいリザルトの獲得を目指せると思います」


 パウィにとって2016年は世界選手権参戦初年度、そして2017年はMoto2クラス初参戦。2年続けて『初めて』を体験することになったが、今年の方が厳しいシーズンだったという。


「Moto3に初めて参戦した去年も厳しいシーズンになることは覚悟していて、表彰台を獲得できるとは思っていませんでした。一生懸命頑張ることが目標だったのですが、結果的にアルゼンチンとドイツで2勝を挙げることができました。その一年と比べると、今年は明らかに苦戦の連続になりました」


 ただ、そんな厳しいシーズンのなかで、パウィは多くのことを学んだという。パウィは自身に足りないものをこう分析する。


「データを見れば、ブレーキング、旋回速度、立ち上がりの加速、すべてが足りていないかもしれませんね(笑) でも、今の僕になにより不足しているのは経験だと思います。経験を重ねれば、どんどん速くなると思っています」


 ちなみに、パウィのゼッケン番号は89番。これはパウィの『マイナンバー』にちなんだものなのだとか。


「本当は98番が僕のマイナンバーなんです。1998年生まれなので。FIM CEVレプソルインターナショナル選手権を走っていたときも98番を使用していました。でも、去年Moto3クラスにステップアップしてきたとき、すでに98番はほかのライダーが使用されていました。だから、その番号をひっくり返して89を使用することにしたというわけです」


 2018年シーズンに向けて、「今年よりもいい走りをして、毎戦ポイント圏内でフィニッシュすることが目標です」と意気込むパウィ。この冬は来シーズンに向け、自分を追い込む厳しいトレーニングに励むという。Moto2参戦2年目の2018年に、パウィはどのような飛躍を見せるだろうか。


■ナカリン・アティラプワパ(ホンダ・チーム・アジア)


アティラプワパは2017年シーズンが世界選手権デビューイヤー

 タイ人ライダーのアティラプワパは2014年からアジア・タレントカップに参戦を開始すると、2016年のCEVレプソルインターナショナル選手権Moto3クラスを経てホンダ・チーム・アジアより2017年から世界選手権Moto3クラスに参戦した。第10戦チェコGPでは10位、第15戦日本GPで11位入賞を果たし、また、レインコンディションでの強さを見せてランキング25位でシーズンを終えた。


 アティラプワパは2017年シーズンを「一筋縄ではいかないシーズンだった」と振り返る。


「うまく走れたレースもあれば、厳しいレースもたくさんありました。チームのおかげで、今年はとても多くのことを学べました。なかでも教訓になったのは、悲観的な気持ちでいるとすべてが悪い方に行ってしまう、ということです」


「レースが進んでも全然ポイントを獲得できず、第5戦のル・マンでようやくポイントを獲れて、『自分にもできるんだ』という自信を持つことができました。今から考えれば、最初のころはほかのライダーたちは僕よりもずっと速くて強い選手ばかりだと思い込み、気後れしていたんだと思います」


「でも、シーズンが進んでMoto3のレースに慣れてくると、『僕も彼らと戦えるんだ』という自信を持てるようになりました。だから、自分を信じることはとても大切だと思います」


「ライディングについては、たくさんのことを学びました。速い選手たちを観察し、身体の使い方や動かし方などをかなり勉強にしました。(今年は中団以降でのバトルが多かったので)来年はトップグループで速い選手たちに混ざってバトルをしたいですね」


 また、アジアからヨーロッパへの移動により、時差ボケにも悩まされた。これについては、アティラプワパは独自の解消方法を用いたようだ。


「出国する数日前に、タイにいるときでもヨーロッパ時間で生活するんです。寝る時間と起きる時間を遅くすることで、ヨーロッパに行ったときの時差ボケ解消がかなり楽になりました。食べ物も、今ではヨーロッパの食事に慣れて好きになりましたが、最初のころはわざわざタイから食材を持って行ったりもしていましたよ」


 アジアのライダーはウエットコンディションで速さを発揮することが多いが、アティラプワパも雨のレースでの強さには定評がある。


「おそらく、僕はほかの選手たちと考え方が反対なんだと思います。ドライではまだそんなに速くないのですが、ウエットだとまずまずの走りができます。雨では、楽しく、楽に走れるんです」


「タイやアジア選手権で走っていたころ、ウエットコンディションでのレースを何度も経験しました。タイのレースでは、雨になってもウエットタイヤに交換せず、スリックのままで走るんです。雨が得意な選手はたくさんいて、彼らの走りを観察することで、ウエットで速く走る勉強にもなりました」


 2018年シーズンの目標について「表彰台を獲得したいです。今年は、セッションによってはトップ3の位置を走れたこともありました。だから、来年は上位グループでレースをして、表彰台を獲得したいですね」と語ったアティラプワパ。


 2018年シーズンはチャン・インターナショナル・サーキットでタイGPが開催される。アティラプワパにとって母国でのMotoGPに向けて、まずは序盤からいい流れをつくりたいところだ。


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