優勝できる力を証明したレッドブル・ホンダ、常に話題を振りまいたフェラーリ/2019年F1全チームレビュー
2019年12月29日(日)8時0分 AUTOSPORT web
2019年シーズンのF1は非常に長く続いたように思える。多くの物語や出来事があり、それらを要約するのは困難だ。さらに難しいのは各チームに目を向けて、2019年が彼らにとってどのような年だったか適切に細部にわたって説明することだ。
だが今年は明らかにいくつかの傾向があった。メルセデスはいつものように調子が良かったし、フェラーリは不振だった。レッドブルとマクラーレンの向上は驚きだった。ルノーとハースは期待外れだった……。2019年についてはおさらいすることがたくさんあるし、2020年については期待することがたくさんある!
■ウイリアムズ/ランキング10位(1ポイント)
ロバート・クビサ:ランキング19位(1ポイント)
ジョージ・ラッセル:ランキング20位(0ポイント)
ウイリアムズにとって2019年シーズンは常に難しい年だったが、バルセロナでのプレシーズンテストで数日をふいにしたことで、状況はさらに悪化させた。さらにランス・ストロールがレーシングポイントに移籍し、重要な資金源だったストロール家の支援もなくなったことで、チームは難しい状況に置かれてしまった。
ロバート・クビサが、適切にマシンをドライブするのに必要なステアリングホイールのパーツを受け取ったのは、シーズンもあと3分の1という時期だった。第11戦ドイツGPでクビサが1ポイントを獲得できたのは奇跡だった。2020年にチームは、ニコラス・ラティフィが持ち込む資金を有効に利用して、前進できるようにする必要がある。だがこの挑戦はあまりにも厳しいものかもしれない。私はこの伝説的なチームの将来を懸念している。
■ハース/ランキング9位(28ポイント)
ロマン・グロージャン:18位(8ポイント)
ケビン・マグヌッセン:16位(20ポイント)
マクラーレンが2019年シーズンの素晴らしい驚きだとしたら、ハースはマイナスの驚きだった。開幕戦オーストラリアでの非常に良い予選セッションから、チームは素晴らしいシーズンを迎えると思われた。ケビン・マグヌッセンは6位でフィニッシュしたが、その後に彼がポイントを獲得できたのは3戦だけだった。チームメイトのロマン・グロージャンもポイントを獲得できたのは合計3回で、チームに8ポイントをもたらしただけだ。
外部からハースの苦戦を理解するのは難しいが、チームはピレリタイヤに苦戦しているのだろう。タイヤの扱いは彼らの2020年シーズンにとって鍵となるだろう。マシンには競争力があり、ドライバーたちは速いのだ。だがタイヤの性能を引き出せなければ、好結果がついてくることはない。
■アルファロメオ/ランキング8位(57ポイント)
キミ・ライコネン:12位(43ポイント)
アントニオ・ジョビナッツィ:17位(14ポイント)
私はザウバーからアルファロメオに名称が変更となった際に少し期待をしていた。タイトルスポンサーとして自動車メーカーであるアルファロメオの支援が入り、元F1世界チャンピオンのキミ・ライコネンを迎えたことで、2019年の元ザウバーには絶好のチャンスがあった。実際、ライコネンは最初の4戦はポイント圏内に入り素晴らしいものだった。シーズン前半には合計7戦でトップ10入りしたのだ。
だがその後、チームは道を見失ってしまった。彼らのパフォーマンスは消え、ふたたびポイントを獲得するのは難しいように見えた。シーズン後半でライコネンがポイントを獲得したのはたった2度で、一方のアントニオ・ジョビナッツィのポイント獲得回数は合計4度、そのうちの3度はシーズン終盤だった。私は後半戦に入って彼らが2020年のマシン開発に集中していたと思いたい。そうでなければ、彼らは開発レースで負けていることになるからだ。
■レーシングポイント/ランキング7位(73ポイント)
セルジオ・ペレス:10位(52ポイント)
ランス・ストロール:15位(21ポイント)
レーシングポイントにとって今年は明らかに移行の年だったが、結果は非常にポジティブだった。チームにとってシーズンの初めは困難に見舞われたものの、後半にかけての彼らの進歩は見事だった。セルジオ・ペレスは第13戦ベルギーGPから9戦中8戦でポイントを獲得し、チームが正しい方向へ向かっていることを証明したのだ。
一方のランス・ストロールは、自身の実力よりも少ないポイント数になった。ふたり目のドライバーにあともう少し競争力があれば、今年レーシングポイントはコンストラクターズ選手権を5位で終えることもできたかもしれない。だが現状から見ると、2020年はエキサイティングな年になりそうだ。チームにはリソースがあり、優れたリードドライバーがいるからだ。疑問としては、“レーシングポイント”というチーム名は他の名前に変わるのだろうか?ということだ。
■トロロッソ・ホンダ/ランキング6位(85ポイント)
ダニール・クビアト:13位(37ポイント)
ピエール・ガスリー:7位(95ポイント)
限られたリソースで最大限のものを引き出す完璧な例をトロロッソ・ホンダで見ることができた。トロロッソは着実な仕事をして、ドイツGPでダニール・クビアトを、第20戦ブラジルGPでピエール・ガスリーを表彰台に上げることができたのだ。
実は、1シーズンに2度の表彰台獲得があったのは、チームの歴史のなかでも初めてのことだ。そして、表彰台に入るためには“トップ3チーム”の直下にいなければほぼ不可能という現在の状況を考えると、これは非常に素晴らしい成果だ。とにかく、2020年から“アルファ・タウリ”という新たなチーム名を名乗る彼らにとって、“トロロッソ”という名前に別れを告げる最高のやり方となった。
■ルノー/ランキング5位(91ポイント)
ダニエル・リカルド:9位(54ポイント)
ニコ・ヒュルケンベルグ:14位(37ポイント)
ルノーにとって2019年シーズンは重要な時期だった。チームはF1のトップチームとの差を縮めることを期待していたのだ。しかし、チームは技術的に間違った方向へ進み、ダニエル・リカルドとニコ・ヒュルケンベルグというベテランドライバーを擁していたにもかかわらず、2018年よりもはるか下回る結果で終わってしまった。
ルノーにとっては、カスタマーチームのマクラーレンにも負け、進むべき道も不明確であるという良くない状況だ。F1に残留できるよう取締役会を納得させるためには、2020年に彼らはマクラーレンを打ち負かす必要があるだろう。もしそうできなければ、彼らはF1を去ることになる可能性もある。
■マクラーレン/ランキング4位(145ポイント)
カルロス・サインツJr.:6位(96ポイント)
ランド・ノリス:11位(49ポイント)
間違いなく、マクラーレンは2019年シーズンにおける素晴らしい驚きだった。フェルナンド・アロンソとともに厳しい数年を過ごしたチームは復活を遂げ、カルロス・サインツJr.とランド・ノリスという新たな血を取り入れた。
彼らは真の再生が行われたという最高の兆候を示した。マクラーレンは2020年にルノーとのパートナーシップにおいて新たな移行の年を迎える。2021年にはメルセデスとの提携に戻るからだ。サインツは幸運にもブラジルGPで3位を獲得したが、2020年のマクラーレンはさらなる結果を求めるだろう。
■レッドブル・ホンダ/ランキング3位(417ポイント)
マックス・フェルスタッペン:3位(278ポイント)
アレクサンダー・アルボン:8位(92ポイント)
私がレッドブルとホンダの人々と2018年に話をした時、両者とも2019年のレース優勝は考えられないということで意見が一致していた。彼らの最初の1年が終わってみると、誰もが随分慎重だったのだと言って差し支えないだろう。
マックス・フェルスタッペンは3勝を飾り、自身が将来注目すべき男のひとりであることを世界に示して見せた。レッドブル・ホンダは競争力のある組み合わせであることが証明されたのだ。それでもなお、ピエール・ガスリーやアレクサンダー・アルボンの手にあった2台目のマシンは表彰台を獲得していない。2020年シーズンは新たな挑戦をチームにもたらすだろうが、次の目標はタイトル獲得以外にないだろう。
■フェラーリ/ランキング2位(504ポイント)
セバスチャン・ベッテル:5位(240ポイント)
シャルル・ルクレール:4位(264ポイント)
フェラーリによるいつものエンターテインメントがなかったら、一体どうすればいいのだろう?2019年シーズンはメルセデスが制したが、今年のエンターテインメントの半分を提供したのはフェラーリだった。
世界チャンピオンと優勝争いをしていない時は、彼らはセバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレールに内部でライバル対決をさせたことで話題をさらっていったのだ。そしてフェラーリはルクレールと5年間の契約延長を発表。このままルクレールがエースドライバーとなれば2020年末にベッテルがチームを去る結末になるかもしれない。フェラーリの目標は世界選手権タイトル獲得だが、2020年もドライバーたちをコントロールできない状況になれば、腰を据えてメルセデスに挑戦できないだろう。
■メルセデス/ランキング1位(739ポイント)
ルイス・ハミルトン:1位(413ポイント)
バルテリ・ボッタス:2位(326ポイント)
メルセデスがまたしても世界チャンピオンとなった。これによりメルセデスは、6年連続でドライバーズおよびコンストラクターズの両選手権でタイトルを獲得したことになる。ルイス・ハミルトンはまたもほぼ完璧であり、バルテリ・ボッタスは前年よりも見事な走りで、チームの覇権を確固たるものにするのに貢献した。
もちろん今では“ラッキー・セブン”が彼らの視野に入っているだろうが、どこかの時点で彼らの一連の成功が終わる時がくるだろう。2020年は現在のレギュレーション最後の年となる。もしメルセデスが2021年の変化の方へより集中するのなら、ライバルチームにチャンスを与えることになるかもしれない。他に大きな問題はダイムラーが“チーム・ブラックリー”への出資を継続するかどうかだ。今後のメルセデスはまだ達成されていないことのうち、何を成し遂げればいいのだろう?