[龍谷]“2強”に風穴を開けた新興勢力…目指したのは「応援されるチーム」【高校サッカー選手権】

2019年12月30日(月)20時0分 サッカーキング

龍谷の選手たちは「地域に応援されるチーム」を目指し、力をつけてきた [写真]=安藤隆人

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 昨年、佐賀東と佐賀北の“2強”に風穴を開け、初の全国大会出場を手にした新興勢力は、その勢力を膨らませながら、2年連続の選手権出場を手にした。

 チームを率いる太田恵介監督は名門・清水商業(現・清水桜が丘)から福岡大を経て、2002年からアビスパ福岡に加入すると、195cmの大型FWとして活躍。福岡で4年、ザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)で1年、アメリカで1年プレーした後、当時九州リーグだったV・ファーレン長崎で1年プレーし、現役を引退。母校・福岡大でのコーチを経て、2013年に龍谷高に赴任をすると、その年に創部したサッカー部監督に就任。チームを一から強化してきた。

「僕の中で最初は『チームを勝たせればいい』『強くなれば評価される』と思っていました。でもそんな甘いものではなかった。新人戦は勝てても、インターハイ予選、選手権予選を勝つことができなかった。どうしたらいいかを考えたときに、選手たちの自主性を引き出すには、責任と自覚が大事だと感じるようになりました。じゃあ、どうしたらそれを持たせられるか。ヒントは『地域』にあると思いました」

 強いチームになるには地域に応援されるチームになること。自分たちだけではなく、地域を巻き込むことで、応援される存在になる。応援される存在になれば、その分責任は増す。そう考えた太田監督はまず、サッカースクールを学校の人工芝ピッチで行うことにした。

「龍谷サッカー部としてどうやって地域貢献をするか。まずは選手たちがサッカースクールの補佐役となって、地域の子供達にサッカーを教える。その時にどうやったら伝わるか、どうやったらサッカーを楽しんでもらえるか、立ち振る舞いや声かけ1つが変わってくる」

 さらに太田監督は地元の盲学校に「選手たちに学ばせたい」とお願いし、ブラインドサッカーをともにプレーした。あるいは学校周辺にある農家にお願いして農作業を手伝ったり、学校内や周辺を掃除したり、積極的な地域との関わりを通じて、選手たちの人間性を磨いた。

「今では部内に7つの部署を設けました。農業部、トレーナー部、環境美化、指導部、分析部、おもてなし部、広報部。トレーナー部、分析部は部内活動ですが、それ以外は地域での部署。おもてなし部は指導部がスクールのコーチ補佐をしている時に、保護者の人たちにお茶を配ったり、“おもてなし”をします。こうした活動を広報部が自分たちで外部に発信する。部員全員がそれぞれの部署に所属して、チームのためだけでなく、地域のために役割を担う。選手たちの意識は大きく変わってきました」

 キャプテンでCBを務める柴田陸玖はこう語る。

「子どもたちにどうやったらうまく伝わるか、楽しんでくれるかを考えるようになって、それで練習でもみんなが『どうやったらうまくいくか』を考えるようになりました。今までどちらかというとおとなしかった選手が、子どもたちに積極的に話しかけて、楽しそうに教えていたり、意外な一面を見ることが出来て、一気に親近感が湧きました。これまでどこかあった壁がなくなってきて、徐々にコミュニケーションが活発になりました。それに各部署にリーダーがいるので、今までキャプテンや副キャプテンが2人や3人でまとめていたのが、7人も責任感がある取りまとめ役がいることで、よりチームとして伝達事項などがスムーズに行くようになりました。キャプテンとしてはすごく助かっています」

 一体感が増し、地域からも応援されるようになったチームは、上述の通り昨年度に壁を打ち破り、2年連続出場を決めた。

「農家のおじいちゃんたちは孫を見るような目で接してくれるので、選手権出場は喜んでくれています。サッカースクールの子供達から見ても、サッカーを教えてくれたお兄ちゃんたちが県予選の決勝を勝って、全国でプレーすることで『憧れのお兄ちゃん』になる。こうした後押しを受けることで、目に見えて責任感が増している。僕ももちろん責任を感じるからこそ、一丸となって臨みたいと思います」(太田監督)

 昨年度は初出場でベスト16進出という結果を残した。今大会はそれ以上を目指し、心に聞こえる地域の声援を力に変える。

取材・文=安藤隆人

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