『Watches And Wonders Geneva 2024』を振り返り、2024年の新作を確認する①

2025年1月17日(金)10時0分 JBpress

JBpress autographでは2025年を迎え、積極的に時計関連の記事を制作していこうと考えている。1月中にはエグゼクティブに向け、よりわかりやすいものを掲載する予定だ。そこでその前に、24年4月に行われた時計界最大の発表会『Watches And Wonders Geneva』の後に編集部内で話した未発表の座談会をここに掲載し、24年前半の新作をいま一度振り返ってみたいと思う。残念ながら編集部から参加できなかったので、現地で取材をしたライターの数藤 健氏にトピックをうかがいつつ、2024年のウォッチシーンを概観してみた。

数藤 まずは編集部からのリクエストが強かったチューダーのトピックからお伝えします。やはりチューダーは今回のWatches And Wonders Geneva2024においても、広く注目を集めていました。

鈴木 去年はブラックベイの小振りサイズがリリースされ、スポーティなのにどこか品も感じさせるたたずまいで、個人的に気に入っていました。今季の新作はどんな感じですか?

数藤 今回の注目モデルといえば、まずはこのブラックベイの58 GMT。ケースサイズは39㎜であり、日本人の手首にもマッチする大きさです。そもそも「58」とはブランド初となる200m防水仕様のダイバーズをリリースした1958年からのネーミング。そのモデルに第二時間帯の時刻表示機能をプラスしたのが本作です。まさに真打ち登場!

福留 ジェット旅客機時代の黎明期を振り返りつつ、世界を飛び回る現代の挑戦者に贈る機能的なモデルというわけですね。

鈴木 たしか去年のブラックベイは50万円台で、このGMTモデルが60万円台。とすると少し値上がったと言えますか?

数藤 いや、200m防水にしてGMT機能が加わったのだから、むしろお買い得と言えるでしょう。

福留 数ある機械式時計の機能のなかで、GMTは非常に実用的ですからね。

鈴木 なるほど。じゃあ去年、先んじて買っちゃった人は、ちょっとクヤしい感じ?

数藤 そう感じる人もいるでしょう。しかし毎シーズン新モデルがリリースされるのは、もはや宿命(笑)

福留 だからこそ、日頃から自分に必要な時計はどんなタイプか考えておく必要があるってこと。

数藤 そういう意味で、このゴールドモデルを待ってた人もいるんじゃないですか。ブラックベイ58 18Kは、チューダー史上初となる金無垢モデル。リッチな迫力は今までのラインナップにないもの。

鈴木 グリーンとゴールドの取り合わせも素敵ですね。

福留 フルゴールドですが、チューダーってところがミソかも。あんまりイヤミに見えない感じがします。まあでも実際に買うとなると、僕の場合はブロンズ止まりかなぁ(笑)

鈴木 言っても400万円越えだからね。普通じゃやはり手が出ません(笑)

数藤 今回のチューダーにはもうひとつトピックがあって、モノクロカラーのブラックベイも話題となっています。

福留 漆黒のダイヤルに加え、ロジウム仕上げのマーカーと針が実に端正。

数藤 内蔵されるキャリバーMT5602-Uは、スイス連邦軽量・認定局(METAS)のお墨付き機械。当然のこと精度及び信頼性も抜群です。

鈴木 これこそオン・オフいけるマルチ時計。60万円台ならアリって感じですね。とは言え本当にお店で買えるのかな。

福留 チューダーは去年、自社工場を作っていますから生産性は上がっているはず。期待して良いと思います。

数藤 鈴木さんはパネライも気になるって言ってましたよね。

鈴木 去年、ラジオミールが良かったんです。非常にシンプルでムダがなく好印象。

数藤 ただ、Watches And Wonders Geneva2024の展示では、ルナロッサシリーズがメインでした。

福留 アメリカズカップのスポンサーであるパネライが打ち出すヨットなコレクションですね。プラダらしい赤色使いなどが洒落ていますよね。

鈴木 文化の違いかもしれませんが、ヨット絡みのモデルはどういうワケか日本での人気が限定的ですよね。

数藤 そうですね。会場ではタグ・ホイヤーでもヨットシーンに絡めたクロノグラフを前面に打ち出し注目を集めていました。しかし日本では、やはりカレラの方が話題になっています。

福留 ルナロッサシリーズは色使いにひとつのポイントがありますが、カラフルという側面ではウブロが際立っていたと聞いています。

数藤 たしかに。セラミックを使ったビッグバンウニコは、その鮮やかさで群を抜いた存在でした。

鈴木 特にあのオレンジモデルは印象的。今までの高級ドレスウォッチの文脈とはまた異なる、粋な遊び心を感じます。グリーンモデルを含めアメコミ的な色使いというか、本格時計の可能性を広げる意欲作だと個人的に思いました。

福留 そうですね。特にオレンジはグリーンとは異なり射出形成ではなくセラミックの削り出し。その理由はあのトーンのオレンジは射出式では出せないからとか。オレンジへの執念がハンパない(笑)

数藤 ウブロはハイテク系素材へのこだわりが強いメゾン。今季はサファイヤケースに新たな清涼感あるカラーを加え、往年の人気モデルを進化させつつ復刻したアイス・バンではケースはブラックセラミックでありつつ、ベゼルにタングステンを採用したモデルです。ユニークなのはこのアイス・バンをオンライン販売のみの限定モデルとしたこと。

鈴木 おー、300万円以上の本格時計を通販限定で展開する。もうそういう時代なんですね。

福留 ポチっとすれば、玄関まで300万の時計を届けてくれる(笑)

数藤 そういう買い方に違和感のない層にアジャストしているということですね。

鈴木 なんていうか、高級時計を購入する層も広がっているということでしょう。パテック フィリップだったらきっとそんなことしないですからね。

数藤 各社、新たなエッジをあの手この手でアピールしています。ゼニスもそのひとつ。デファイ スカイラインはラグスポの新定番として世界的に定着しそうな勢いでした。

福留 今季は待望のクロノグラフが登場し話題となっているみたい。エル・プリメロの最新世代ムーブメントを搭載しているんですよね。

鈴木 そうそう。10振動はイイとしておいて、1/10秒計測のクロノグラフは実際にその動きを見てみたい!

福留 センターのクロノ針が高速で動くみたいですよ。たしか10秒で1周。

数藤 デファイシリーズで言えば、エクストリームダイバーも見逃せません。

福留 これは10振動のエル・プリメロ機械を搭載した600m防水ダイバーズですね。

鈴木 ブルーにオレンジサークルがどこか懐かしさを感じさせます。

数藤 エクストリームダイバーはまったくの新作です。そしてデファイ リバイバルA3648が、完全な復刻モデルです。1969年に実際に八角ケースかつ4時位置リューズのモデルをゼニスはリリースしていたんです。

福留 もちろん機能的には現代風にアップデートされており、パワーリザーブ50時間かつ防水性は60気圧でしたっけ。

鈴木 オレンジカラーの使い方がポイントですね。ブラックとの合わせでまさにジャイアンツカラー。アメリカ人狙いだったりするのかな(笑)

福留 ただサイズは37㎜という小振りサイズ。日本人受けしそうなサイズ感です。とにかく今季はデファイの年だということですよね。非常に分かりやすいプレゼンテーションです。

数藤 たしか去年はパイロット推しでしたね。毎シーズンコレクションを絞って見せるスタイルなのでしょう。

鈴木 タグ・ホイヤーはどうでした?

数藤 今季の目玉はずばりパンダ・カレラと言えるでしょう。伝説の「Ref.7753SN」から着想を得たクロノグラフですね。

福留 「Ref.7753SN」とはホイヤーが1960年代にリリースしたバルジュー機械搭載のモデルね。カレラ第2世代のときに、シルバー文字盤にブラックインダイヤルのいわゆる「パンダ顔」モデルが打ち出され、マニアに注目されました。

鈴木 ただ、オリジナル「Ref.7753SN」は2レジスターだけど、この新型は3レジスターなのよね。

数藤 ソコは現代的な解釈ということでしょう。グラスボックスと呼ばれる風防も新たな造形となっています。

福留 たしかに視認性は良さそう。滑らかな一体感にも完成度を感じます。

鈴木 内蔵されるムーブメントは約80時間のパワーリザーブを保持し、防水性は100m。しっかり使えるスペックですね。ただ80万円越えの価格はなかなかのモノ。アクアレーサーはクロノメーター機なのに40万円台でした。まあ、クロノグラフとダイバーズは別ものですけど。

福留 Watches And Wonders Geneva2024ではアクアレーサーの展示って、どんな感じでした?

数藤 そう言えば私もカレラやカレラ スキッパーばかり見てました(笑)。スキッパーは先述のパンダと同じクロノグラフで、スペックもほぼ似ています。しかしこちらはリッチなゴールドケース。値段もアオーバー300万円でヨット乗りのための贅沢な1本となっています。

福留 ヨットかー。いかにも欧米人好みかもしれない。

鈴木 僕はアクアレーサーでイイかな(笑)

福留 とにかくチョイスがいちいち手堅い(笑)

※価格は24年4月当時のもの

筆者:長谷川 剛

JBpress

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