56歳、貯金4500万円。遺族年金とパート代で生計を立て、毎月10万円の赤字です

2024年2月11日(日)22時20分 All About

相談者は、4年前にご主人を亡くし、遺族年金とパート代で生計を立てている56歳の女性。家計は赤字続きで、自身の老後も不安だが、お子さんは大学院進学の可能性もあり、年間200万円近くが必要になるとのこと。

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貯蓄ができない状態で、どう老後のためにやりくりすれば……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回の相談者は、4年前にご主人を亡くし、遺族年金とパート代で生計を立てている56歳の女性。家計は赤字続きで、自身の老後も不安だが、お子さんは大学院進学の可能性もあり、年間200万円近くが必要になるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。

相談者

暮らし上手になりたいさん(仮名)
女性/パート・アルバイト/56歳
千葉県/持ち家・マンション

家族構成

長女(大学2年生)

相談内容

4年前に主人を病気で亡くし、現在遺族年金約11万円と私のパート代約6万円、それに主人の妹から学費の足しにともらっている2万5000円が毎月の収入で、後は貯金を取り崩して生活しています。
家計収支データで示した出費以外に、医療費が月約2万円(整体や漢方薬が必要)、ペット費が月約2万円(フード代やトリミングが必要な犬種のため)、自分の国民年金の支払い(2年払いにしています)がかかっています。
家計収支データの通信費の内訳は、スマホ2台分と固定電話、ケーブルTV(地デジ後ケーブルTVで視聴)、Wi-Fi代です。貯蓄は主人の生命保険で、かけてあった保険会社に利息がつくタイプの払込済みの保険扱いで預けてあり、娘の学費等で足りなくなると銀行口座に振り込んでもらっています。
娘の学費はあと2年で終わる予定で、その時点での貯蓄残高は3400万円ぐらいになると思います。
娘は理系で、ときに徹夜になるほど学業が大変で、バイトは少ししかできませんが、国からの給付型奨学金と大学からの給付型奨学金をいただいており、学費以外の教材費や生活費などはそこから出しています。
私のパートは65歳までは続けたいと思っています。65歳以降は遺族年金と自分の老齢年金で月13万円ぐらいもらえる予定です。自分で学費以外の生活費を把握するため家計簿をつけていますが、結局毎月10万円ほど赤字になっています。
もう貯金できる状態にない私のような場合は、どのようにやりくりしていけばよいのかわからなくて、専門家のアドバイスをいただきたいと思いました。よろしくお願いいたします。

家計収支データ

暮らし上手になりたいさんの家計収支データは図表のとおりです。

家計収支データ補足

(1)教育費について(毎月16万6000円の内訳)
・大学費用(今年度):154万3000円
・通学定期:年間8万1000円
・パソコン購入:24万8000円(今回限り)
・昼食代:年間12万円
パソコン以外、同額があと2年間継続。大学院に行く可能性(本人の希望は半々)もあり、そうなれば2年間で350万円ほどかかるとのこと。
(2)奨学金について
・国からの給付型奨学金:月3万円
・大学からの給付型奨学金:年25万円
(3)所有マンションについて
現在築20年。これまで給湯、ユニットバス、キッチンリフォーム。現在、トイレのリフォームを検討中。
(4)加入保険の保障内容(すべて本人が被保険者)
[払込み済みの保険・4本]
1. 5年ごと利差配当付終身保険・A
2000万円払込済み(死亡2540万円、リビングニーズつき、現在解約した場合の支払金額2005万円)
2. 5年ごと利差配当付終身保険・B
990万円払込済み(死亡125万円、リビングニーズつき、現在解約した場合の支払金額993万円)
3. 5年ごと利差配当付終身保険・C
624万円払込済み(死亡1000万円、リビングニーズつき、現在解約した場合の支払金額621万円)※2年前に一部解約して、振込を実施
4. 米国ドル建て介護保障付終身保険
547万円払込済み(死亡および介護状態8万2000米国ドル、リビングニーズつき、現在解約した場合の支払金額4万3000米国ドル)
[保険料を毎月支払っている保険]
5. 終身医療保険=毎月の保険料1万1848円
6. 定期保険=毎月の保険料7441円
※10年たったら介護終身年金特約を解約して死亡保険金も500万円にする予定
(5)生活費と今後の働き方について(相談者コメント)
主人が亡くなってから何かと無気力になり外食が多くなったり、現実逃避のために自分の趣味にお金を使ったりしてずいぶん無駄遣いもしてしまいました。
最近ようやくこれではいけないと思い、自分なりに節約している結果が家計収支データで示した生活費(自分一人なら月15万円以内での生活が目標)です。
娘にはできる限りのことをしてあげるのが主人の遺志だと思いますので、大学卒業までは頑張って払って、その後は私一人は細々と家で趣味(英語、手芸、書道)をやって生きていければと思っております。
今の仕事は65歳ぐらいまでは続けられそうです。特に定年の規定はありませんが、体力的にそれぐらいかと考えています。その後は、現実逃避で勉強した英語(英検準1級取得済み、1級と通訳案内業の勉強中)で、できればお小遣い稼ぎをしたいと甘いことを考えています。

FP平野泰嗣の3つのアドバイス

アドバイス1:目標とする月15万円の生活なら老後の不安は少ない
アドバイス2:死亡保障を確保する必要性は低い
アドバイス3:楽しみと張り合いをもって、資格取得を目指してほしい

アドバイス1:目標とする月15万円の生活なら老後の不安は少ない

現在の家計収支全体を拝見すると、お子さんの教育費用が年間で約200万円、それを除く生活費も月10万円の赤字なので、年間収支はマイナス320万円。その分、手元資金が大きく減っていきますし、実際は保険を解約しないと補填できないわけですから、将来を不安に思ってしまうのも仕方ないでしょう。
そこで、まずはシミュレーションをし、今後の資金の推移を確認してみましょう。

教育費は、大学院進学を前提とし、親戚からの資金援助は大学卒業までとします。
その場合、お子さんが社会人になるとき、61歳にとなりますので、これ以降、目標とする生活費の「月15万円(住宅関連費、保険料、社会保険料を除く、基本生活費)」とした場合の結果ですが、30年後の86歳のとき、約1200万円の貯蓄残高があります。保険商品の利回りは考慮していませんので、実際はもう少し多いかもしれません。
では、基本生活費を月15万円、年間180万円に抑えることは可能でしょうか。
現状の同生活費が年間210万円ですから、一人暮らしになることで通信費、食費の負担軽減、さらには将来的にはペット費用も減少することが考えられます。したがって、さほど節約を意識しなくても目標は達成できると考えます。
また、基本的には手持ち資金を取り崩す生活となりますが、これはご相談者だけでなく、年金生活となる人はみんなそうです。
加えて、計算上、86歳で1000万円を超える資金がまだ残っているのであれば、想定外の支出にも十分対応できます。そう考えれば、資金的に老後の生活を不安視する必要はないということになります。
家計に関しては、通信費が2人分で2万5000円はやや高い気もしますが、総じて無駄な支出はなく、よく抑えられていると思います。
以前はご主人を亡くされたことで、浪費もされたということですが、よく立ち直られたと思います。将来の家計も考慮されているようなので、その点で今後も心配はないでしょう。

アドバイス2:死亡保障を確保する必要性は低い

ただ、保険に関してですが、介護終身年金特約付きの定期保険について、更新時の10年後に特約を解約し、死亡保障も1000万円から500万円に変更する予定とのこと。
しかし、ご相談者の死亡保障は、取り崩すことが前提とはいえ、ご主人の死亡保険金をご自身を被保険者とする一時払いの死亡保険商品とした時点で、十二分に確保されているはずです。
そもそも、死亡保障は小さいお子さんなどの遺族の生活が困らないために確保するもの。お子さんが社会人になった時点で、死亡保障に必然性は低いことになります。
10年以内に要介護2以上になる可能性ももちろんゼロではありませんが、それを踏まえて、介護終身年金特約を解除するのであれば、死亡保障も1000万円から500万円に減額するのではなく、解約としても良いでしょう。
保険についてもうひとつ。医療保険ですが、保障内容に保険料の支払い期間の明記がありませんでしたが、もしも終身払いでしたら、保険料は割高です。60歳もしくは65歳払込終了であれば、妥当でしょうが、そこは保険証券で確認してほしいと思います。

アドバイス3:楽しみと張り合いをもって、資格取得を目指してほしい

最後に今後のご自身の生活について。すでに英検準1級を取得されていて、さらに1級と通訳案内業の資格についても勉強されている。
英語は趣味とのことですが、十分に社会的ニーズのあるスキルだといえます。それを活かして収入を得ることも決して「甘い考え」ではありません。
そう考えれば、より張り合いも出るはず。楽しみながら、ぜひトライしてみてください。

相談者「暮らし上手になりたい」さんから寄せられた感想

このたびは貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。まずは、あまり心配する必要がないと教えていただき、心底ホッといたしました。死亡保険については、10年後に解約しようと思います。
また、資格取得に楽しみと張り合いを持ってと励ましをいただき、お心遣いに涙が出そうでした。この貴重なアドバイスを何度も読み返しながら、今後は張り合いを持って頑張れそうです。本当にありがとうございました。
教えてくれたのは……平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。
取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)

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