P&Gが無料の一般向けビジネススクールを5月開校へ! 「戦略的コミュニケーション」学べる場

2024年2月27日(火)11時30分 マイナビニュース

P&Gジャパンは、無償の一般向けビジネススクール「P&Gビジネススクール」を5月に開校する。提供される「シン・コミュケーション力習得プログラム」とはどのようなものなのか、2月7日に行われた発表会の内容から確認してみたい。
○"P&Gマフィア"を生み出した人材育成プログラム
2023年に50周年を迎えたP&Gジャパン。同社が事業成長を続けてきた背景には、グローバルに活躍できる人材育成のプログラムと、社員一人ひとりが能力を発揮させるための戦略的コミュニケーションがある。こうして経験を積んだP&G出身者は多くの業界で活躍しており、"P&Gマフィア"と呼ばれることもあるくらいだ。
このP&G流の人材育成や自己成長を促進する戦略的思考、コミュニケーション手法を学べる場として、5月より一般向けビジネススクール「P&Gビジネススクール」が開校することになった。
第1期参加者の募集は2月7日から3月15日までとなっており、18歳以上であれば学生でも応募可能だ。会場は「P&Gジャパン東京オフィス」で、参加費は無料。なお、第2期は引き続き対面(場所:東京/会場未定)、第3期はオンラインで実施予定となっている。
P&Gジャパンの社長を務めるヴィリアム・トルスカ氏は、「この50年間、P&Gジャパンのもっとも重要な資産は人材であり、そのおかげで要求の厳しい日本のお客様に革新的な製品をお届けすることができました。P&Gは将来のリーダーを育てるのに最適な企業のひとつと評価されており、リーダーを育てるアカデミーとしても長年高い評価を得ています」と語り、P&Gの人材育成におけるユニークなポイントを3つ紹介する。
1つ目は「リーダー育成システム」。同社は内部昇進制度に力を入れており、未来のグローバルリーダーを育成するために人材育成システムを相互連携させている。2つ目は「『成長志向』の企業文化」。能力を最大限に発揮するためには学び続けることが重要であり、これは変化のスピードが速い現代において特に求められる。3つ目は「充実したトレーニング」。P&Gは研修がなによりも優先される文化を持っており、数百に上るオンライン・オフラインの研修コースが用意されている。
○P&Gで人材育成に活用される「戦略的コミュニケーション」とは
続いてP&G 人事統括本部 シニアディレクターの市川薫氏が登壇し、「シン・コミュニケーション力習得プログラム」について説明する。
P&Gでは人材を最重要の資産と捉え、単なる人事戦略を超えた経営戦略の重要な一環と位置づけている。そのうえで人材育成に活用されているのが「戦略的コミュニケーション」であり、これが今回「シン・コミュニケーション」として提供される。
ポイントは大きく3つ。1つ目は「常に目的を明確にしていること」、2つ目は「どのように伝えるか(HOW)だけでなく、伝える相手(WHO)を深く理解した上で、伝えるべきメッセージ(WHAT)を構築すること」、3つ目は「人材の育成と組織の成長を促進するために、個々の能力を最大限に引き出すこと」。
これらの目的を達成するため、P&Gビジネススクールでは2つのコースが用意される。
1.管理職向けコース (定員:30名)
前編:コーチング 2024年5月10日(金) 午後
後編:フィードバック 2024年7月3日(水) 午後
管理者コースでは、部下が目指す目標到達するための能力を最大限に引き出す伴走力として「コーチング」力を、上下の関係に限らず相手の行動変容を促し成果に繋げるための「フィードバック」手法を学ぶ。
2.すべての方向けコース (定員:30名)
前編:成長思考 2024年5月9日(木) 午後
後編:リーダーシップ思考 2024年7月17日(水) 午後
すべての方向けコースでは、P&G社員全員が基本能力として期待されている「成長思考」と、自分自身に対する「リーダーシップ思考」を持つことでコミュニケーション(発言と行動)が変化し、自己成長を促進する方法を学ぶ。
最後に市川氏は、「全てのトレーニングは自社開発であり、講師は社員が務めるため、実践的な内容が多くなります。最終的に、学んだことを活かして自分の行動をどのように変えるかという行動計画を準備するという内容になっております。また出席者ではなく参加者ですので、多くの発言が求められます。講師(ファシリテーター)は参加者の発言を調整し、気付きを導き出すという役割を務めます」と、具体的な内容について述べた。
○グーグル奥山真司氏が語るP&Gの強み
発表会はトークセッションに移り、ゲストスピーカーとしてグーグル日本法人の代表を務める奥山真司氏が登壇した。奥山氏は1989年にP&Gジャパンに入社、2012年から2016年まで代表取締役社長を務めており、同社のP&Gでスキルを身につけた代表的な人物と言えるだろう。
トルスカ氏の「P&Gの強みとは何だと思いますか?」という質問に対し、奥山氏は答えをふたつ挙げる。ひとつはエンドユーザーフォーカス、もうひとつは人材育成システムだ。
「消費者に寄り添うということを徹底していたと思います。インサイトを抽出する、アイデアを見つける、そして最終的にイノベーションを創造する。マーケターの仕事は市場を作ることに意味があります。P&Gはイノベーションを通して新しい市場を創造し続ける、そこがすごいなと思うわけです」(奥山氏)
「そして、それを支えているのが人材なんですよね。人材の育成が体系化されていて、能力を養っていき、誰もがリーダーになる。カリスマ的なリーダーシップを要求しない。どの切り口で見てもリーダーシップを発揮できるような育成システムがある。このふたつが本当にすばらしいと思います」(奥山氏)
P&Gで25年ほど勤めた奥山氏は、P&Gで学んだことを一言で「リーダーシップ」と語る。リーダーシップは、絶えることのないイノベーションの創造に欠かせないスキルだという。
「僕はリーダーシップは、『考・響・伝』だと思っています。"考える"は探索的で戦略的な思考能力。"響く"は対話ベースのコミュニケーション能力、"伝える"は自分だけではなく他者を成功させる能力を持つこと。この3つをすばらしく学ばせてもらったなと」(奥山氏)
奥山氏は探索的な志向の例として、洗濯洗剤「アリエール」が"除菌"というマーケットを創った経験について話す。これは、日本人の持つ清潔志向を背景としたもので、「清潔、神社、見えない汚れ、除菌」と点が繋がったことで生まれたソリューションだという。
さらにコミュニケーションについて問われると、「ディベートとダイアログって全然違う概念で、ディベートからは新しいソリューションは生まれません。ダイアログは、新しいヒントを見つけるためのコミュニケーション手段と思っています」と話す。
「コミュニケーションというと、ソリューションから始まるとみんな誤解してるんですけど、一番のコミュニケーションとは良い質問ができるかということなんですよ。問いがショボければ戦略もアイデアもショボい。ですからP&Gでは、コミュニケーションは問いから始まると徹底的に教わります」(奥山氏)
P&Gでは情報交換的なコミュニケーションは重視されず、次に繋げる、何かを決めることが求められるそうだ。その一例として奥山氏が挙げたのが「ワンページメモ」だ。メモを1ページにシンプルで明快で簡潔に子どもが聞いても分かるようにまとめる、これが徹底されているという。
これを受けてトルスカ氏は「すばらしい例を出していただきました。私は初めてワンページメモを書いたとき、ワンページに考えを集中させることがいかに難しかったか、今でも覚えています。これはP&Gの非常にユニークなもので、日本では恐らく逆の方向に向かうでしょう。だからこそグローバルで成功したい人にとって役立つと思います」と自身の経験を述べる。
最後に奥山氏は、「こういった知識は、これまでP&Gの中に閉じ込められていたわけですよ。これが50周年で外に出ていくことは素晴らしいことで、みなさんが概念を理解し、型を習得し、そういう方がどんどん登用されて、日本がより元気になっていく構造になる。P&Gビジネススクールがそのきっかけになってくれれば良いなと思っています」と話した。
発表会はこれで終了となったが、第2部としてダイジェスト版の模擬研修も行われ、こちらにも多くの希望者が参加。P&Gビジネススクールへのビジネスパーソンの期待の高さが伺えた。
社会が変化を続ける中で、50年にわたり多くのビジネスリーダーを輩出してきたP&Gのプログラム。戦略的コミュニケーション力を身につけたい人は参加を検討してみると良いだろう。

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