「ア、バアバアバアバ、アババババ、アババババ、」 中原中也記念館の駐車場に呪文のような展示

2018年3月9日(金)20時0分 Jタウンネット

山口市湯田温泉にある中原中也記念館に、呪文のような現代アートの作品が展示され、全国紙でも報じられて話題になっている。


記念館の駐車場の隅に、駐車スペース2台分もある鉄の柵がある。そこには、白いビニールひもを刺繍のように結わえる形で、こんな言葉が大きく掲げられた。


中也の未発表詩「(七銭でバットを買つて)」にある言葉を使う


「ア、バアバアバアバ、アババババ、アババババ、」

これは、記念館で2018年1月24日から4月15日までの日程で始まった企画展「山口盆地考2018.....吹き来る風が.....」に出された現代アート作品の1つだ。展示会には、NPO法人山口現代芸術研究所(YICA)のアーティスト19人が出品している。


とはいえ、車で来た人にとって、一目見ただけでは、何だろうと不思議に思うだろう。鉄柵は、縦約3メートル、横約7メートルもあるだけに、言葉にはかなりのインパクトがある。


実は、この言葉は、中原中也のノートに残されていた未発表の詩「(七銭でバットを買つて)」の一節だ。


暗い山道を歩きながら、中也はふと赤ん坊のときにした言葉「ア、バアバアバアバ、」を繰り返す。そんな中で、坂の下に落とした自転車を引き揚げて去る男を眺めながら、「アババババ、アババババ、」とつぶやくところで、詩は唐突に終わっている。


作品を手がけたのは、宇部フロンティア大学短期大学部の原井輝明准教授(52)だ。オブジェなどを置いて作品空間を体験してもらうインスタレーションだといい、中也の別の詩から取って「五百円でビニール紐を買って」を作品のタイトルにしている。


原井准教授の作品に付けられた解説では、次のようにその意味を解き明かしている。


駐車場に作品があり、来場者は「何だろう」と興味を示す


「中也の恋人だった長谷川泰子が生んだ子に、中也は茂樹と命名している。本作の作者は、詩集と刺繍を掛け合わせる言葉遊びと共に、退廃的イメージが先行する中也の、根源的で人間的な優しさに光を当てている」

つまり、幼い茂樹のことを思う中也の優しさが奇妙な言葉の中に垣間見えるということのようだ。


中也の言葉を使った現代アート作品について、中原中也記念館の原明子学芸員は3月7日、Jタウンネットの取材にこう話した。


「原井先生が網目の柵をご覧になって、『ここに作品を設置したら面白い』と提案されたのがきっかけです。作品は、丸1日かけてお作りになっており、かなり手が込んでいます。来館された方は、駐車場に作品があるのにびっくりして、『何だろう』と不思議がるようですね」

なお、この作品は、屋外に展示されているため、入館料を支払わずに無料で見ることができる。

Jタウンネット

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