1年のワーキングホリデーでは語学は身につかない。「学生」か「就労」か。20種類以上の長期滞在ビザがあるフランスで、人気YouTuber・大畑典子が選んだビザは
2025年3月16日(日)12時30分 婦人公論.jp
大学院修了式(写真提供:『私が決める、私の幸せ』より)
29歳で単身フランスへ渡り、YouTubeでフランス・ナントから日々の暮らし、家族の在り方について発信する人気のYouTuber・大畑典子さん。「何を食べるかよりも誰と時間を過ごすか」「家事を頑張りすぎない」など、フランス人のシンプルな生き方は、せわしない日々を送る日本人の心に刺さるものばかりです。そんな大畑さんが綴る最新エッセイ『私が決める、私の幸せ』より、フランス流シンプルな生活と軽やかに生きるヒントをお届けします。
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頭を悩ませたビザ問題
フランスに行くことを決めた私が最初に考えなければならなかったのが、「どうやってフランスに行くか」でした。
外国に住むには何かしらかの「ビザ」が必要です。私はまず「どのビザを取るか」というところから検討を始めました。
フランスに長期滞在するためのビザはなんと20種類以上ありますが、当時の私が頭を悩ませたのは、学生ビザにするか就労ビザにするかでした。
幸い、建築士としての経験もあり、英語でのコミュニケーションも問題なくできたので、初めはキャリアを優先してフランスにあるインターナショナルな建築設計事務所に片っ端から応募して就労ビザを取得する、ということも考えました。
しかし生活の質を重んじるフランスと言えど、やはり建築士の仕事はハードです。
そんな仕事環境の中では、フランスの文化を学んだり、言語を勉強したりする時間は取れそうにないことが容易に想像できました。
結局、日本での仕事環境と同じように自宅と職場の往復をして、週末は疲れ切ってしまい家に篭り、平日の仕事のために体を整える、という日々がなんとなく想像できました。
せっかくフランスに住んでいるのにフランス語が話せないまま、現地の文化を知らないままでは渡仏した意味が半減してしまいます。
遠回りの人生になるかもしれないけれど…
第一、もともとフランスに行くことを決めた本来の目的は「フランスにしばらく住んで現地の暮らしぶりを知る」ということ。
日本と変わらない環境で仕事に忙殺される日々では意味がないのではないか……。
そんな懸念に加え、日本の一級建築士の資格はフランスでは通用しないため、フランスで正式な建築士として働くにはフランスの大学院を卒業する必要があったのです。
「それならば」と、これからの2〜3年は、大人の夏休みのつもりで仕事から一1度離れ、学びの期間に充ててみようと考え、「留学」という形の渡仏が浮かんだのです。
フランスの大学院に入れば必然的にフランス語も学ばなくてはいけないし、フランス人とのつながりもできる。
人生遠回りになるかもしれないし、フランスの大学院での生活は決して楽ではないかもしれないけれど、長い人生を考えるとそれが私の最善の道に思えました。
こうして、2016年、私はナント建築大学大学院へ応募し、無事合格することができたのです。
ワーキングホリデーという選択肢は?
当時、私は29歳でしたので、海外に住みたいという理由ならワーキングホリデービザでの渡仏も年齢的に可能でしたが、選択肢には入れませんでした。
なぜなら、ワーキングホリデービザは滞在が1年に限られ、そして就労も建築設計のような専門的な仕事に就くことは禁止されているからです。
「休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」と外務省のホームページにあるように、ワーキングホリデービザはあくまでも若者が見聞を広げるための長期の旅行、休暇のための制度なのです。
1年を旅行としての期間と割り切って住むにはいいかもしれないですが、やはり語学力だったり、現地の文化だったり、何かを得るには1年という期間は短いように私には思えたのです。
フランスに来て1ヶ月目(写真提供:『私が決める、私の幸せ』より)
中途半端な結果にならないために
実際にこの感覚は間違っていなくて、私は渡仏してやっと1年経って、なんとなくスタート地点に立てたような気持ちでした。
たまにワーキングホリデーの一番の目的を語学学習に置いている方がいますが、個人の意見としては、1年では中途半端な結果になってしまうことが多いと思います。
ワーキングホリデービザはその名の通り、ホリデー気分で1年過ごすなら、それはそれで有意義な1年になるのではないでしょうか。
ちなみに2025年2月現在の私は「フランス国籍の子どもを持つ親のためのビザ」という市民ビザのうちのひとつでフランスに滞在しています。
第一子が生まれた翌年の2020年に学生ビザからこちらの市民ビザに切り替えました。私とパートナーは結婚をしていないので、婚姻ビザの申請ができません。
しかし、私たちはPACS(パックス)というフランスの制度で夫婦としてきちんと法的に守られており、私はフランス国籍の子どもの母親としてフランスに滞在する権利があるのです。
※本稿は『私が決める、私の幸せ』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
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