60歳、貯金は約2000万円。正社員として勤務するには肉体的にも精神的にも、やや負担を感じ始めています

2024年3月17日(日)22時20分 All About

正社員として働くことに心身の負担を感じ始めているという60歳の女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

写真を拡大

2年前に1100万円の住宅ローンを組み、繰り上げ返済しようと考えています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回のご相談者は、正社員として働くことに心身の負担を感じ始めているという60歳の女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

ふくさん
女性/会社員/60歳
東北地方/持ち家(マンション)

家族構成

一人暮らし、20代の子ども2人は独立

相談内容

夫が死去して以来、遺族年金を受け取りながら、自分の老後資金を貯めるべく仕事を続けています。最近、正社員として勤務するには肉体的にも精神的にも、やや負担を感じ始めているところで、老後資金に大きく不安がないのであれば、パート勤務で少し時間に余裕のある生活がしたいと思います。
予定では63.5歳まで今の仕事をして、その後パート勤務にしようと数年前に考え頑張ってきましたが、最近疲れもあり、やる気もあやしいのです。試算(63.5歳まで今のままの仕事であれば)では、65歳からの私の年金は160万円/年+遺族年金10万円/年となるようです。
2年前に3500万円のマンションを1100万円のローン(当初5年金利0.51%、以降0.76%、固定金利)で組み、22年で返済中です。65〜70歳くらいには繰り上げ返済しようと考えていますが、資金面的にどうなるか不安もあります。
子どもはそれぞれ独立、経済的な支援などお互いにしていません。
今の時代、働けるだけ働いて、少しでも長く収入を得続けるっていうのが老後破綻を回避する有効な方法なのでしょうね。なお、退職しても勤務年数が短いため退職金はありません。病気などなく身体が元気なうちに働かなくては、生活が苦しくなるのはわかっているのですが、もう少し負担を減らしていいものか思案中です。
よろしくお願いします。

家計収支データ

ふくさんの家計収支データは図表のとおりです。

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使い道
固定資産税11万円、家電など大きな買い物や予備費10万円、旅行やレジャー費10万円、子どもと母にプレゼントや小遣い・交際費5万円、貯金24万円。
(2)貯蓄について
ネット銀行口座に給料、年金など振込、残った金額で200万円くらい貯まったら定期預金にする。以前は株購入や国債購入資金にしていた。
(3)住宅ローンについて
・購入価格/3500万円
・ローン借入額/1100万円
・借入金利/当初5年金利0.51%、以降0.76%
・毎月返済額/4万5000円
・返済期間/22年
・ローン残債/990万円
※返済は毎月返済のみ
※ローン返済以外にかかる住居費(修繕積立金・管理費など)は1万5000円
※固定資産税はボーナスから
(4)加入保険について
・医療保険(終身タイプ、払い込み終身、死亡保障なし、手術給付金、入院給付5000円、女性入院特約5000円、先進医療特約2000万円)=毎月の保険料3000円

FP深野康彦の3つのアドバイス

アドバイス1:住宅ローンがあるので、今すぐの退職は避けて、1、2年頑張る
アドバイス2:仕事を辞めたら住宅ローンを完済し、生活コストを下げる
アドバイス3:65歳以降は公的年金の不足分を取り崩すが心配ない

アドバイス1:住宅ローンがあるので、今すぐの退職は避けて、1、2年頑張る

ご主人を亡くされ、つらいお気持ちのなか、ここまでよく頑張ってこられました。お子さんも自立されておられるようなので、これからは自分の時間を大事にし、健康に過ごされてください。
精神的にも肉体的にも仕事に負担を感じておられるのなら、今すぐにでも辞められたほうがいいと思います。しかしながら、住宅ローンの返済が残っていることを考えると、あと少しだけ頑張って、少しでも貯蓄を増やしておいていただきたいのです。
現在、毎月20万円とボーナスから24万円貯蓄できています。あと1年働けば264万円、2年働けば528万円を現在の金融資産に上乗せできます。これは大変心強いことです。1年にするか2年にするかは、そのときの体調次第で決めていいと思いますが、残念ながら今すぐ退職は難しいということにはなります。

アドバイス2:仕事を辞めたら住宅ローンを完済し、生活コストを下げる

現在、住宅ローンの残債が990万円であと22年返済が続きます。65〜70歳で繰り上げ返済して完済する予定とのことですが、仕事を辞められるタイミングで、一括返済することをおすすめします。
1年ごとに50万円ほど残債が減っていると思われます。たとえば、1年後。金融資産は約2230万円になっていますので、残債940万円を繰り上げ返済すると、残りは1290万円です。2年後なら金融資産は約2500万円になっており、残債は890万円。繰り上げ返済すると、残りの金融資産は1610万円です。これが仕事を辞めて、住宅ローンを完済したあとの老後資金となります。
住宅ローンがなくなったあとの毎月の支出は14万円に抑えることができます。年間で168万円。これに固定資産税など年間でかかる支出を加味して、年間の支出は200万円とします。公的年金の受給が始まる65歳までは遺族年金のみとなりますが、年間150万円ありますから、不足分は50万円です。
61歳で仕事を辞めたとしたら、65歳までの4年間の取り崩しは200万円。62歳で退職なら、65歳までの2年で100万円です。いずれにしても、65歳時点で、1100万〜1500万円ほどが残っている計算になります。
さらに、仕事を辞めて1年程度、休養してから月5万円でもパート収入が得られれば、貯蓄からの取り崩しはほとんどなくなります。現時点でも家計で無駄はありませんから、精神的にも負担になる住宅ローンを早めに完済してしまえば、その後の生活は安定したものになるでしょう。

アドバイス3:65歳以降は公的年金の不足分を取り崩すが、心配ない

65歳からは、自身の公的年金の受給が始まるため、遺族年金が減額になりますが、年間で受け取る公的年金は合計170万円です。年間支出が200万円であれば、不足分は30万円ほど。65歳時点で1100万〜1500万円ほど残っていれば、ほぼ一生涯、金銭的に困ることはありません。
それでも、不安が残るようであれば、無理をしない範囲でパートを続けることです。また、最初に、あと1〜2年働くことを前提にしましたが、3年頑張れたら、それだけ老後に残せるお金を増やすことができます。
計算上では心配ありませんので、この先、親御さんやお子さんのため、ご自身の楽しみのためにもお金を使ってほしいと思います。健康第一で、無理なく働き、精神的にゆとりのある生活を送られることを願っています。

相談者「ふく」さんから寄せられた感想

アドバイスをいただきありがとうございます。やっぱりあと1〜2年は仕事を頑張らないと、65歳以降の年金生活の先があやしくなりそうですね……。
自分でもうすうす気づいてはいたのですが、私の希望的観測で現実から目を背けた状態だったんです。先生にはっきり言われて、スッと言葉が胸に落ちました。数年前の自分の予定でも63〜64歳くらいまでは何とか正職員で頑張って老後の資金を貯めるぞーって踏ん張ってきたんですが……ここのところ、気持ちが……。
でも先生のアドバイスに励まされてもう少し頑張れそうな気がします。ゴール(目標)がハッキリしました!
ローンの繰り上げ返済の時期も悩んでいたところですが、退職時に完済して生活コストを下げるのがいいとのことですからそうします! もう数年頑張れば、65歳以降は大きな心配はいらないというお言葉をいただきうれしく思います。目標が定まったのでそれに向けて頑張れそうです!
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)

All About

「正社員」をもっと詳しく

「正社員」のニュース

「正社員」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ